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泣けるユーモア短編集 作者:水本爽涼
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-5- 適度

 物事ものごとには、すべて適度・・ということがある。━ 過ぎたるは及ばざるがごとし ━ という格言が示すとおりだ。やり過ぎたり欲張ったりした挙句あげく、ぅぅぅ…と泣く破目はめおちいるのは悲しい限りだが、当人がそうしよう…と思ってした結果なのだからいたし方ない。
 とある大衆食堂の店内である。
「本当によく食べますね。大丈夫ですかっ? その天丼てんどんで三杯目ですよ」
 ご近所仲間の細見ほそみ太原ふとばらのアグレッシブな食べっぷりにあきれながら小声で言った。自身が食が細い・・ということもあった。
「ははは…いつものぺースならどんぶり、5杯は食ってるっ。今日はまだ3杯だっ!」
「いや、私はあなたのいつもは知りません。そうなんですか?」
「ああ。そら、もう! この店じゃないがね…」
 太原に当然とばかりに言われた細見は、思わず相撲の力士じゃないんだっ! …と言おうとしたが、個人の自由だな…と考え直し、思うにとどめた。
「あと、他人丼と親子丼ねっ!」
「えっ!! あっ、はいっ!!」
 追加のオーダーをされた女店員は思わず驚くと、そのまま奥へ消えた。しばらくすると店奥の厨房ちゅうぼうからヒソヒソ話が聞こえ始めた。細見にはその話の内容が、『大丈夫ですか? あのお客さん』『ああ…よく食う客だなっ』とかなんとか言ってる様子が手に取るように浮かんだ。が、ご近所仲間だから仕方がない。もう、食うなっ! とも言えないのだ。細見はすでに食べ終わっているから手持ち無沙汰ぶさたで、めた茶をすするくらいのことしか出来ない。その細身が、どうしたものか…と思った矢先だった。急に太原が腹を押さえ、うめき出したのである。
「ゥゥゥ…、く、苦しい~~っ!! い、痛い~~っ!!」
 細見は、どっちなんだっ、はっきりしろっ! と腹立たしく思えたが、ここは、介抱するしかない…と仕方なく心配する素振りをした。
「だ、大丈夫ですかっ?!」
「医者、医者!! 医者を呼んでくれぇ~~!」
 細見は、ほら見たことかっ! 適度というもんがあるんだっ! と北叟笑ほくそえみそうになり、思わず顔をそむけた。1時間後、緊急来患病院へ運び込まれ、事なきを得た太原の姿がベッドにあった。
「食べ過ぎみたいです。食べなければ、すぐよくなるそうですから安心して下さい。それにしても、ものには程度がありますよ…」
 細見は、やっと注意が出来たからか、少しうれしかった。が、次の瞬間である。
「またかっ! …」
「えっ?」
 細見は太原の言葉が理解できず、思わずき返した。実のところ太原は食い過ぎで医者から絶食を言い渡され、一週間、何も食べていなかったのだ。ようやく、医者の許可が出た日だった・・という訳である。
 物事には適度が大切で、ゥゥゥ…と苦しんだり、ぅぅぅ…と泣けることがあるから、用心が必要! というお話だ。

                  完
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