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泣けるユーモア短編集 作者:水本爽涼
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-43- 心地(ここち)よく

 誰しも心地ここちよく生活することを望んでいる。なにもつらい思いをしてまで人生を送りたくはないはずである。だが、世の風は無情にもそうした人々の心を逆撫さかなでするかのように冷たく吹く。
「ああっ! 風呂上りの一杯は、実に美味うまいっ!!」
 と、左団扇ひだりうちわで・・左団扇ではない大邸宅の空調くうちょうに身をゆだね、豪勢ごうせいな高級食材をつまみながらグラスを傾ける誰かさんとはけ離れた話ではある。
 経団連に名を連ねる、とある有力企業の二人の会長の会話である。
「なかなかの豪邸ですなっ! 捏根つくねさんっ!」
「ははは…お笑い下さい。いやなに、たかだか数億程度のやす普請ぶしんでございますよ、ははは…」
 捏根は、もう一人の会長、芋煮いもにに悪びれながら、実のところ心底しんていで、どうだっ! 立派な邸宅だろうがっ! …と、少し鼻高々に笑い流した。
「いや、ご謙遜けんそんを…」
 と芋煮は返したが、実のところ心底では、ふんっ! その程度かっ! 私の邸宅など十数億だっ! …と、いさんでいた。
 二人の会話は美酒びしゅと豪勢な料理を囲んだ会食の中を進んでいったが、お互いの心底は見栄を張りあい、心地よく・・とはいかない時の流れであった。
 捏根の大豪邸から少し離れた空き地公園に身を寄せる二人のホームレスの会話である。
「なかなかブ厚いダンボールですなっ! 大根おおねさん」
 下濾志おろしは心底から、これは心地よく住めるなっ! …と思いながら大根に言った。
「いや、おかげさまで…。この前、いいのがごみで捨ててありましてねっ! ぅぅぅ…」
 と大根は涙ながらに返し、心底から、有難いことです…と思った。
 二人の会話は拾ったカップの残り酒とレストランの捨て場で見つけた残飯を囲んだ会食の中を進んでいった。お互いの心底は見栄を張らない、心地よく・・といった時の流れであった。
 心地よく・・とは、ぅぅぅ…と泣けるような感謝から生まれるようだ。

                   完
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