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泣けるユーモア短編集 作者:水本爽涼
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-42- 寂(さび)れ街

 街が大きくなり、次第に都会化するにつれ、当然、にぎやかな地域とそうでない(さび)れた地域が生じる。こうなることを誰も止めることは出来ない。1年とかの短い期間では、そうした変わりようは分からないが、10年、20年といった長い間隔[スパン]になれば、そのさま変わりは如実にょじつに現れる。あれだけ人々があふれていた街通りが、人っ子ひとり通っていないのをの当たりにすれば、思わずぅぅぅ…と泣ける人も出てこようというものである。
「やあ! お珍しいっ! 河馬口かばぐちさんじゃありませんかっ!」
「おおっ! これはこれはっ! 犀野さいのさんじゃありませんかっ! お買いものですか?」
「ええまあ…散歩がてら」
「それにしても、この辺りも寂れましたな」
「はい! ぅぅぅ…」
「何もお泣きにならずとも…」
 急に目頭めがしらを押さえた犀野に驚き、河馬口はあわてた。
「これが泣かずにいられますかっ! せっかく楽しみにしていたべーカリーが、来てみたら、このざまですっ!」
 犀野は片手のゆびで閉ざされた毛馬べーカリーをした。店のシャッターに貼られた一枚の紙が犀野の涙の訳を語っていた。
━ 長らくご愛顧いただきました当店ではありますが、諸般の事情により月末を持ちまして50年の歴史に幕を下ろすこととなりました。つきましては、長きに渡り当店のパンをお買い求めいただきましたお客様に対しまして、心より暑く御礼を申し上げる次第でございます。万感迫る思いでございます。遠くからではございますが、お客様各位の幸多からんことをお祈り申し上げ、閉店の言葉に変えさせていただきます。長きに渡るご愛顧、心より御礼を申し上げます 店主 従業員一同 ━
 この毛馬べーカリーの貼り紙を見た河馬口も、泣ける顔を思わずハンカチでおおった。
 寂れ街は泣けるのである。

                   完
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