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泣けるユーモア短編集 作者:水本爽涼
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-4- 泣きの涙

 泣きの涙・・という言葉がある。この場合の涙はくやしかったりつらい涙で、なみだ[発音から出来上がった形声文字の涙や、状態や状況から出来上がった会意文字のなみだ、さらにその泪を超越ちょうえつし、同じ会意文字ながらも、より奥深い感情を含んだ文字]であり、ぅぅぅ…と思わず流す涕なのである。
錦着にしきぎさん、しかったですね…」
「ははは…。いま一歩いっぽのところだったんですが…残念です…」
 アナウンサー帯田おびたのインタビューに答える錦着は、微笑ほほえみながらそう返した。だが、その言葉とは裏腹に、錦着のほおには一筋ひとすじの涕が流れていた。テニスプレーヤー錦着の心中しんちゅうは、地球[アース]オープン制覇せいはの夢がたせなかったった無念さに打ちふるえていたのである。この無念な涕は尋常じんじょうに頬を伝う涙ではなかった。泣きの涙・・というやつで、2-2セットでむかえた最終セット、それもデュ~ス[同点]の末の敗退だったのだ。さらにさらに、その敗退の原因が相手の球を打ち返そうとした一瞬前、立て続けに二度、鼻先にとまった一匹のアブ・・というのだからうなずける話ではある。
「最後に、会場の応援にこられた皆さんに一言ひとこと…」
「ぅぅぅ…これからも…ぅぅぅ…」
 錦着の言葉は言葉にならなかった。そのときまた、アブが錦着の鼻にとまった。
「ぅぅぅ…」
 錦着は鼻にとまったアブを片手で振り払いながら号泣ごうきゅうし出した。それを見たアナウンサーの帯田も、釣られて号泣し始めた。
 これが泣ける、泣きの涙・・なのである。 

                  完
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