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泣けるユーモア短編集 作者:水本爽涼
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-31- 食べる

 食べる・・というプロセスが成立するには、幾つかの条件が必要となる。その必要条件が、すべて満たされないと、[食べる]という行為は成立しない訳だ。まず、第一の必要条件として、[健康]という条件がげられる。当然、心身ともに、である。第二の必要条件として、[食物を得る手段]という条件がある。これには貧富の差は関係なく、要は、食物を入手し得るか? という条件が問題となる。食物が手に入らなければ、いくら金があっても食べることは出来ない。さらに第三の必要条件として、[摂取時間]が要件となる。これは、食物を調理したり、調理した食物を食べる余裕時間があるか? ということに他ならない。食物はあるが、いそがしくて食べる時間がない・・では話にならない訳だ。他にも細々(こまごま)とした条件があるが、まあ大まかにいって、この三条件が必要不可欠な条件と言えるだろう。
 昼近い、とある市役所の商工観光課である。
「いい陽気になってきましたね、課長…」
 窓サッシに広がる春めいた青空を見遣みやり、課長補佐の煮蕗にぶきが課長の生節なまぶしに語りかけた。
「ああ…。どれどれ、久しぶりに昼飯は外で食うかっ! 君もどうだっ?」
 デスクの書類から目を離し、生節も窓サッシを見遣る。
「はいっ! 食堂ばかりでしたからね」
 当然、そうくるだろう…を見越したような元気さで、煮蕗は返した。
「食べることが出来る。なんて有り難いことだっ! そうは思わんかっ? 煮蕗」
「はぁ?! …そうですね」
「食べたくても食べられん人々が、どういう訳か撃ち合っている…」
「今朝のアフリカ内戦のニュースですか?」
「ああ…。撃ち合ってないで、食物を耕作していれば、ユニセフの世話は必要なくなるんだが…」
「栄養失調の子供達ですね…」
「そう! この国では捨ててるしな。困ったもんだっ!」
「食べることの有り難さを忘れてしまったんですね、きっと…」
「そういうことだな。健康で食物があり、しかも食べられる・・有り難いことだっ!」
「感謝、感謝! …さあ、出ますかっ!」
「ああ…。しまった! 財布を忘れたっ! 君、今日は頼むっ! ははは…またおごるからさっ!」
「エエ~~ッ!!」
 うっちゃられた煮蕗は、ぅぅぅ…と泣けるようにテンションを落とし、ガックリと肩を落とした。
 食べる・・というプロセスが成立するまでには、さまざまな要素が介在かいざいする訳である。

                   完
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