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泣けるユーモア短編集 作者:水本爽涼
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-30- 馬鹿につける薬

 馬鹿につける薬はない・・と、よく言われる。ところが、上手うまい具合に、いい薬があるのだ。その薬とは、馬鹿である。馬鹿と馬鹿がタッグを組めば、マイナス[-]×マイナス[-]でプラス[+]になるという具合だ。正確に言えば、そうなることがある・・程度の精度なのだが、それでも一応、馬鹿につける薬はある・・ということになる。馬鹿にとってはまことに喜ばしい限りの話ではある。
 垣根越しにご近所のご隠居二人が語り合っている。少ししなを作り、お互いを意識して自分を少しよく見せようとしているから話し合っている・・というのではなく、語り合っている訳だ。
「今朝はよく冷えましたな…」
 新調したばかりの着物のえりを両手で寄せながら、コレゾ! とばかりに見せびらかし、ご隠居が向かいのご隠居に語る。実のところ、この着物は息子の嫁が安物を買ってきて、「お義父とうさま、お高い着物が頃合いのお値段で手に入りましたの…」とかなんとか言い含めてプレゼントした品なのである。それをに受けたご隠居は、明らかに馬鹿だった。
「ははは…さよ、てすなっ!」
 向かいのご隠居は『ったくっ! 安物やすものですぞっ!』とは瞬時に分かったが、そうとも言えず、愛想あいそ笑いをして応じた。そして、腕の腕時計を、コレゾ! とばかりに見せびらかし、向かいのご隠居がご隠居に語る。実のところ、この時計は娘婿むすめむこが安物を友人にもらい、「お義父さん、これ少し値が張りましたが…」とかなんとかいい顔をしてプレゼントした安物なのである。それをに受けたご隠居は、明らかに馬鹿だった。
「おっ! もうこんな時間ですかっ!」
「ははは…さよ、ですなっ!」
ご隠居は『ったくっ! 安物やすものですぞっ!』とは瞬時に分かったが、そうとも言えず、愛想あいそ笑いをして応じた。
「ではっ…」「ではっ…」
 二人の馬鹿なご隠居は笑顔で左右に別れ、家の中へと姿を消した。
 馬鹿につける薬は馬鹿で、ぅぅぅ…と泣けるほど安くつく・・という馬鹿なお話である。

                   完
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