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泣けるユーモア短編集 作者:水本爽涼
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-28- 苛(いじ)め

 人は不満が鬱積うっせきすると、それを晴らそうといじめをしたくなる。苛めることをみずからの不満のはけぐちにして、解消しようとするのだ。なにもこれは、人対人に限ったことではない。人対社会、人対自然、人対物・・と、さまざまに分化する。木が切り倒され自然の姿が消えていく、ポイ捨てゴミがいたるところに氾濫はんらんする、生徒の苛めが横行する、ハラスメントが職場で頻繁ひんぱんに起こる・・など、具体例を示せば枚挙まいきょいとまがない。
 平サラリーマンの芥岡ごみおか河原かわらは仕事を終えた帰り道、久しぶりの屋台で一杯やっていた。
「んっ? 前の森、少し景観が変わりましたね、親父さん」
 芥岡が夕焼けた外景を指さし、屋台の親父にそれとなく言った。
「ええまあ…。伐採ばっさいですよ。落葉が・・とか枝が・・とか、前のビルから苦情が入ったそうです。立派な大木たいぼくだったんですがね。私なんか、落葉をもらって帰って、家の庭木に敷いてたんですよ。残念です…」
「そうですか…」
 芥岡はうなずいて皿のコンニャクにはしをつけた。
「人が自然を苛める権利があるのかねぇ~」
 河原が不満たらしくグビり! とコップ酒を飲みながら言った。
「そうだな…。自然の管理を任されているだけだからな、人は…」
「だいいち、自分達が生まれる前からある命だろ?」
「まあ、そう言うな。今はそんなご時勢だ…」
 芥岡が河原を慰めた。
「おっしゃるとおりです。いい国なんですがねぇ~」
「悪くなってきてますか?」
「まあね…。人なら問題になりますが、これは実害のない苛めですよ。…これ、サーピスですっ!」
 親父が二人の皿に、よく味がみた厚揚げを長箸ながばしつまんで乗せた。
「あっ! どうも…」「どうも…」
 二人は軽く頭を下げた。
「ぅぅぅ…苛めは、やってられねぇ~や。私も一杯、いただきますっ!」
 親父はコップに一升瓶の酒を注ぐと、泣ける目を押さえ、一気に半分ほど飲み干した。
 苛めは上りのスパイラル[螺旋らせん]状に不満を増長させる。

                   完
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