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泣けるユーモア短編集 作者:水本爽涼
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-25- 気楽(きらく)

 誰でも気楽きらくに生きたいと考える。だが、世間のしがらみが、そうはさせじっ! と待ち構えている。この柵は、手を変えしなを変え、いろいろな方法で忍び寄ってくる。あたかも魔の手のように・・である。それでも人はそのアゲインストな風[向かい風]に立ち向かい、果敢かかんに挑戦して生き続ける。この七転び八起きの姿が神仏かみほとけをして、ジィ~~ンとさせるのだろう。見てられないっ! という場合には直接、出現され、救いの手をお差しのべになられる・・という場合だってあるのかも知れない。
 山吹はのない人生に疲れ果てていた。みのひとつだに、きぞ悲しき・・である。
「あ~あ…」
 山吹の口かれるのは溜め息ばかりだった。
 そんなある日のことである。一人の老人が家を垣根越しに見遣みやる姿が、ふと山吹の目にまった。だが、その老人は普段ふだん、余り見かけたことがない老人で、近所の知り合いでもなかったから、山吹にはいぶかしく思えた。それでも、遠くから散歩で通りかかった老人・・という可能性もあり、山吹はそのまま見過ごすことにした。一端、家の中へ入り、数十分してふたたび庭へ出てみると、先ほどの老人が同じ位置に立ったまま、まだ山吹の家を見ているではないか。そのとき初めて山吹は、こりゃ、尋常じんじょうではないぞ…と、思うに至った。
「あの…何か私の家にご用でも?」
「… ああ、私ですかな? 通りすがりの者でわい。あなた、お可愛そうに、気楽に生きられぬお方じゃな…」
 山吹はその言葉を聞き、初対面の者に、なんと失礼なっ! と一瞬、怒れたが、次の瞬間、その通りだな…と思った。
「気楽に生きる秘訣ひけつをお教いたしましょうわい」
「ええ、是非ぜひ!」
 老人にたずねられた山吹は、すぐ返した。
「こう、しよう! しなければっ! などと、思わぬことじゃ。行く雲、流れる水のように生きる・・ということじゃわい。はっはっはっ…、では、失礼…」
 その老人の姿は、言葉とともに跡形あかたともなく消え去った。山吹は、ぅぅぅ…と泣ける夢のような現実に、思わず涙した。
 気楽には生きられない人の世だが、ぅぅぅ…と泣ける現実があって欲しいものである。

                   完
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