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泣けるユーモア短編集 作者:水本爽涼
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-17- 雪(ゆき)

 ゆきも適度に降るなら、いい風情ふぜいとなり、おもむきかもすのだが、降り過ぎれば、いかがなものか…などと国会答弁のようなことを言わねばならなくなるから困る。さらに、時間に追われているときなど、[雪かき]という余計な手間てまをかけさせられ、思わず、ぅぅぅ…と泣けることにもなるから考えものだ。まあ雪不足に悩まされ、降れば降るほど有り難いスキー場などは別なのだが…。
 夕暮れが迫る、退庁直前の町役場の一コマである。
「またかっ!」
「なにがです?」
「降り出したじゃないかっ! 雪がっ!!」
 課長の捨場しゃばがサッシ窓を指さし、課長補佐の屑川くずかわ愚痴ぐちった。
「私に言われても…」
 屑川としては言葉を自分にポイ捨てられた気分がし、面白くないから思わず返した。すると、どういう訳か、捨場は突然、ぅぅぅ…と泣き出した。泣けるようなことを言った訳でもなく、泣ける状況でもないから、屑川は思わずいぶかしげに捨場の顔をうかがった。
「これから大事な人に会うんだよっ」
「えっ?」
 それが泣けること? と、益々(ますます)、屑川は分からなくなった。
「三十数年ぶりのね、私の初恋の人。ぅぅぅ…」
「ああ、そうなんですか…」
 屑川とすれば、それが雪とどういう関係が? くらいの気分である。
「外だよ、外! 駅の外! 待合い場所がっ!」
「はあ!」
「寒い上に、雪だよっ! 彼女は態々(わざわざ)、田舎いなかから出てきてくれたんだよっ!」
「はあ!」
「寒いじゃないかっ! 冷えるし、れるじゃないかっ!」
「ええ、まあ、そうなんでしょうね…」
「君というやつはっ! 不人情だなっ! ぅぅぅ…」
 屑川は理解できず、もう一度、捨場の顔をそれとなく窺った。
 雪は、ぅぅぅ…と泣ける状況を作る場合もあるのだ。

                   完
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