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泣けるユーモア短編集 作者:水本爽涼
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-14- 辛(つら)い

 つらいと、ぅぅぅ…と思わず泣ける。辛いという漢字はからいとも読む。確かに、辛い唐辛子とうがらしとか山葵わさびを口にすれば、これは間違いなく泣ける。要は、[辛]という漢字はつらくもからくも泣けるのである。そういえば干支えとにも辛子かのとねとかがある。言っておくが、から辛子からしとは読まない。
 とある小学校・六年の家庭科実習の時間である。ようやく料理が完成し、家庭科教師の河豚川ふぐかわと6年B組の生徒達の試食会をねた昼食が始まっていた。
「先生、なぜ泣いてるんですかっ?」
 いぶかしげに、一人の男子生徒が横に座る河豚川にたずねた。
「… 泣いてないわよ。目にゴミが入っただけ…」
「あっ、そうなんですか…?」
 生徒は、それ以上、突っ込まず、出来上がった料理とパンをかじり始めた。河豚川も体裁ていさいを整え、生徒達と食事を再開した。だが、時折りほおを伝う涙は止まらず、ハンカチが食事道具のスプーン、フォークと同じように両手を行き来した。生徒には誤魔化して言ったものの、実のところ河豚川は泣けていた。それは子供時代の辛いのではなく、つらい記憶が脳裏のうりぎったのだった。その記憶と同じ料理が、この日の実習で作られたのだった。この料理を食べたいと言ってった幼い弟の記憶だった。
「ぅぅぅ…」
 河豚川は我慢しきれず、ついに嗚咽おえつした。
「おかしいなぁ~? 先生、からかったですか?」
「いいえ、美味おいしいわ。…つらかったの、先生」
「えっ?」
 生徒は意味が分からず、ふたたび訝しげな顔をした。泣けるからといって、つらいのはからいという訳ではないのだ。

                   完
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