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泣けるユーモア短編集 作者:水本爽涼
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-13- 演歌調

 やはり泣ける・・といえば演歌だ。思わず、ぅぅぅ…とむせび泣けそうな歌から、軽い、ああ、そうなんだ…程度の悲しい歌まで様々(さまざま)である。しかし、がいして言えることは、聴けばシンミリ気分にさせる・・ということだろう。
 ここは、とある町役場である。続々と出勤してくる職員で朝の活気に満ちあふれていた。
「おい、見ろっ! 虎皮とらかわさんだっ!」
「だな…」
 エントランスへ入ってきた虎皮は、すぐ二人の若手職員に目をつけられた。虎皮は役場では演歌調の男としてタレント的に超有名だった。彼が存在するところ、かならず、ょょ…、あるいは、ぅぅぅ…と泣けるようなことが起こるのだから、不思議といえば不思議ということもあった。それは何も悪いことに限ったことではなく、妙なことで涙する出来事が多発していたのである。ところが、しばらくすると、なぜ自分が泣いていたのか? と、本人が首をかしげることばかりで、不気味ぶきみといえば不気味だったのだが、実害は何もなかったから、誰もが興味を持っていたのである。注目の焦点しょうてんはその日に何が起こるかで、昼の食事代や閉庁後の飲み代をかける職員も出て、管理職達は手を焼いていた。
「おいっ、虎皮だっ! 今日は何をしでかしてくれるやら…。演歌調は困るからなっ! 知らぬふり、知らぬふり…」
「はい!」
 同じ課の課長、狐池こいけと課長補佐の狸川たぬかわは虎皮が課へ入ってくるや、ヒソヒソ話をして、厄介者やっかいものが来たとばかりに、知らぬふりをよそおった。その途端とたん、今まで何ともなかった花がけられた花瓶がフロアへ落ち、ガチャリ! と割れたのである。前の日、課長の狐池が態々(わざわざ)買って持ってきた、お気に入りの花瓶だった。
「ぁぁぁ…」
「今日も演歌調ですね、課長!」
 デスクへ腰を下ろした虎皮はニコリ! と笑って言った。
「ぅぅぅ…お前が言うなっ!」
 狐池は思わず怒れて泣いた。
 演歌調は、やはり泣けるのである。

                   完
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