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泣けるユーモア短編集 作者:水本爽涼
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-12- 空(そら)

 そらが、ははは…と笑うと快晴になると聞く。逆に、ぅぅぅ…と泣けるようなことになれば雨が降り出すということらしい。もちろん場合によっては雪、霙、霧、霰などと、いろいろな変化となるそうだが、真偽しんぎのほどはさだかではない。定かではないが、どうも間違っているとも思えないようなことが起こるらしい。
 とある市役所の風景である。
「羽衣さんに頼めば、いかがですか、課長」
「羽衣か…。あれはいつも空を舞っているように優雅ゆうがだからなあ…。君、ダメかい?」
「いや、僕は…」
 三保みほに振られた松原まつばらとしては、いい迷惑である。それでなくとも、予算書の完成が急かされていた時期だけに、そんな余裕はなかった。
「ははは…空を見なさいっ! 快晴の青空じゃないかっ!」
 それと、どういう関係がっ? とこうとした松原だったが、思うにとどめた。そんな松原の気持が天に伝わったのか、それまで雲一つなかった空に暗雲あんうんが浮かび、ただよい始めた。
「妙だなぁ~? 今日は一日晴れると天気予報が言ってたんだが…」
 三保はいぶかしげに窓ガラスに広がる空をながめ、言うでなくつぶやいた。
「どうかされましたか?」
「いや、なに…空がな」
「空? 空、ですか?」
「いや、もういい、ははは…」
 三保が笑った途端とたん呼応こおうするかのように、空の暗雲がスゥ~っと消え去った。
「おおっ! 空が…」
 三保は、ふたたびひとりりごちた。
「どうかされましたか?」
「いや、なに…空がな」
「空? 空が、ですか?」
 松原は窓ガラスに浮かぶ空を怪訝けげんな表情で見上げた。そのとき、天女てんにょのように可愛い乙宮おとみやがお茶をれて運んできた。
「いや、もういい、ははは…」
 三保は思わず前言ぜんげんを打ち消し、口をつぐんだ。
「課長、私、結婚することになりました…」
「ええっ!」「えっ!」
 乙宮が発した突然の言葉に、二人は異口同音に驚いた。その途端、ふたたび空に暗雲が立ち込め、ぅぅぅ…と泣けるような小雨が降り出した。

                   完
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