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泣けるユーモア短編集 作者:水本爽涼
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-1- 感涙(かんるい)に咽(むせ)ぶ

 感涙かんるいむせぶ・・ということがある。悲しいことではなく、喜びの余り思わずかんきわまり、知らず知らずのうちにほお幾筋いくすじもの涙が伝う・・といった、そんな状況だ。無意識にぅぅぅ…と、思わず涙が頬を伝う訳である。当然、傍目はためにはその人物の心理状態が分からないから、おやっ? と他人が思える事態も多々(たた)、発生する。
 初土俵から苦節20年、35才にして初めて十両への昇進を決めた漬石つけいし部屋の大根おおね改め、大根山だいこやまは、番付表を手にして師匠の漬石親方の前で感涙に咽んでいた。
「ぅぅぅ…」
「よく、やった! ぅぅぅ…関取! がんばった、がんばった!」
 漬石親方も、感涙に咽び、頬から涙を流す大根山の肩をやさしくたたき、思わず涙した。その状況を他の部屋付き力士達も見ながら、思わずぅぅぅ…となった。そうなると、感涙は感涙を呼び、ぅぅぅ…のひびきは微細びさい振幅音しんぷくおんの集合体と化して部屋の建物を振動させていった。漬石部屋の前の路地ろじを歩く二人連れの老人は、思わず立ち止まった。
「じ、地震ですなっ!!」
「そ、そのようです…」
「それにしても妙ですぞっ。低い声が聞こえやしませんか?」
「ああ、そういやっ! …声がする地震なぞ、私も長いこと人生やっとりますが、初めてです…」
「いや、それは私もです…」
 苦節20年、泣ける関取の誕生は、感涙に咽ぶ地震を引き起こしたのだった。

                       完
 
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