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卒業。
作:三亜野 雪子


子供でも、

大人でもないこの日々。





澄んだ空気の中で私の息だけが白くなる。

寒い、寒いこの季節。

私は今日、もう何回かしか着ない制服に身を包んでいた。

自転車に乗れば、吹き付ける風が私の身体を凍えさせる。

電車に乗れば、通勤の人や学生が携帯や本を読んで時間を浪費する。

歩けば、通り過ぎる車や人が邪魔に思う。

無情に過ぎていくこの時間。

そう思うようになったのはいつからだろう?


「久しぶりぃ」

「二週間会ってなかったもんねぇ!学校ないと本当話すこと溜まっちゃってさぁ」

「あはは、わかるぅ」


友達との会話。

先生の顔。

見慣れたこの空間。

毎日続くと思ったこの時間。

だけど、それがもうすぐ終わる。

勉強なんて好きじゃない。

やっぱり友達と遊んで、はしゃいで、笑っているのが一番楽しい。

だけど…。

学校なんて好きじゃない。

そう思ってたのに。


「後この制服も一回しか着れなくなるんだね」


しんみりと友達が言った。

三年間、ずっと着てきた制服。

着過ぎてくしゃくしゃになったスカート。

着崩してよれよれになったブレザー。

だけど、皆それをそれぞれクリーニングに出して、見栄えをマシにしている。

明日、私達はこの学校を卒業する。





いつからだろう。

淋しいと思うようになったのは。





高校生ってあっという間だ。

誰かが言ったのを覚えてる。

一年生が終わったその時、そんなこと微塵も思わなかった。

勉強も大変で、部活も辛くて、本当に一日が長く感じた。

だけど、二年に上がればその気持ちに変化が訪れる。

新しい教科。

学校行事。

部活の試合。

修学旅行。

友達と一生懸命やるそれらは全てが楽しくて、全てがあっという間だった。

『青春』って何だろう?

高校生活はもう、味わえない。

そう思うとその言葉を深く考えてしまう。

何もかもそれは卒業が近いから…。




「じゃぁ、ばいばぁい」


皆と別れて一人で帰る道。

電車の中で過ぎ去る風景を見つめる。

家に帰って自分の部屋に入るとシンとした空間。



その場所で、

沸き起こる感情。



三年生になってからは本当に毎日が楽しくて。

でもその代わりに受験や進路のことを考えなきゃいけなかった。

忙しくて、だけど皆と遊びたくて、暇のない日々を過ごしてた。

夏休みは本当に頑張って皆と思い出を作った。

体育祭、記念祭といつもなら適当にやる行事も、熱くなる。

しきりにカメラで写真を撮る。

笑った顔。

ふざけた顔。

照れた顔。

驚いた顔。

たくさん…。



「卒業証書、授与」



私達は大人でも子供でもないこの時間の中、勉強と誘惑の中で葛藤しながら生きてきた。

それはほとんどの人達が通る道。

だけど、その時間も今日で終わり。

それは誰にも必ず訪れる終わりの時間。

制服を着れる最後の日。

自分の足で壇上に上がる。

三年間通い続けたこの学校。

その証明をしてくれるただの紙切れ。

だけど、私達にとってはとても価値のある紙。

それを受け取って、今卒業する。



名残惜しくアルバムや文集を皆で見て、言葉を書いて。

時間が過ぎていることを頑張って誤魔化しながらも、一日を過ごす。

でも、いつかは気付かなきゃいけない。

先に進むために。

いつかは思い出さなきゃいけない。

卒業したことを。

名残惜しくもばいばいといって、私達は別れる。

一人、一人、建物の陰で消えていく。





淋しい。

哀しい。

もう、会いたくて堪らない。

ねぇ、今度はいつ会える?

ねぇ、今度はいつ話せる?

もう、学校という会う機会は失って、

もう、学校という居場所は無くなって、

もう…。

私達は学校で知り合った。

私達は学校で仲良くなった。

私達は学校で遊ぶ約束をした。

私達は学校でいっぱい話をした。

その『学校』の居場所を失った。

生徒ではなくなった。





卒業なんてしたくなかった。





勉強も、

友達も、

先生も、

部活も、

全部ね、

好きだったの。



ねぇ、また高校生に戻りたい。

それはわがままかな?



涙が、零れる。

卒業式は本当にあっけなくて、

泣く暇は無かった。

終わったと、

もう会えないってしんみり考えると、

溢れ出すそれ。



ねぇ、淋しいよ。

馬鹿な発言が聞けないのも、

天然な行動が見れないのも、

テストの話が出来ないのも、

テレビの話が出来ないのも、

皆に、会えないのも。

淋しいよ。



だけど、昔に戻れないから想い出は価値があるんだよね?

だから、大丈夫。

わかってるから。

言葉にしては言わないよ。

その代わり、文字にして伝えるね。





ありがとう。

この三年間私にかけがえの無い想い出をくれて。

私に勉強を教えてくれて。

私に人生(みち)を教えてくれて。

私と時を過ごしてくれて。



大好きだよ。

皆、

みんな、

大好きだよ。

友達も

先生も

学校も

全部。



だから、忘れないで。

この三年間を。

私のことを。


それぞれ違う道に進むけど。

またいつか会えることを信じて私は頑張るから。





今、泣いた分だけ頑張るから。





2008.3.1

私達は卒業した。



大人でも子供でもない限られた時間を。

青春時代を。



青い春。

まだ幼い、小さな始まり。

ほろ苦い、思い出。

淡い、儚い花びらは、

静かに散って、



力強い青い葉を生やす。



さぁ、歩こう。





この三年間を支えにして。

新たな道へ。






私の気持ちを中心にして書いてみました。
共感してくれた方は是非お声をかけてください。













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