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春の祭典・春エロス2008に参加しています。
よってこの作品には性的描写が含まれていますので、苦手な方はご了承ください。
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光のどけき春の日に
 舞い散る花びらが混浴するそこには男が浸り、吐き出された息は蒸気に混ざり立ち上る。
 目を閉じると水音だけが響く世界。包み込むぬくもりと浮遊感に身を任せ、男は肩越しの風景に目をやった。

 奈良県吉野山。駅からケーブルに乗り継ぎ、降り立ったその場所は中千本に位置する旅館で、この時期は客室からも露天風呂からも咲き乱れる桜山を見下ろすことができる。
 映るのは一目千本の絶景。このシチュエーションで飲む日本酒はまた格別に美味い。
 男は(さかずき)の中身を舞い込んだ桜花と一緒に飲み干した。

「久方の光のどけき春の日に しづこころなく花の散るらむ」

 男の隣で湯舟に浸る女は雰囲気に酔いながら百人一首を一句詠んだ。女は黒髪をまとめ上げ、普段は目にすることのないうなじのホクロを男に見せていた。時折それを隠すように揺れるおくれ毛に水滴が伝い肩に垂れていた。

「どういう意味?」

 女の姿に目を向けた男は眉を寄せた。お湯の中で巻かれたままのバスタオルが気に食わない。

「こんなに天気が良くて……のどかで穏やかな日にも花はどうして急いで散っていくんだろう、そういう歌よ」

 女は眼下に広がるシロヤマザクラのように真っ白な肌をうっすらと薄桃色に染めていた。

「まあそれが生けるものの定めだろう」
「そこに想いを寄せるから美しいの。ねえ、このロケーションにぴったりだと思わない?」
「感受性豊かだな、平安人は」

 女は体を桜から男に向き変えた。

「そうね。でも良く考えるとこれは今も変わらないことなの。人は儚く美しい物が好きだわ。花火に紅葉に雪……今だってこうやって桜を愛でてる」

 女は湯船に浮かぶお盆から持ち上げた杯に両手を添え、私にもちょうだい、と男に差し出した。

「温泉にタオル浸けちゃいけないって知ってるか?」
「どうしていけないの?」

 女はなみなみと注がれた日本酒を口に運び一気に杯を空けた。

「タオルの雑菌がお湯に入るから。常識だろ」
「でも、私がこれ外したら目のやり場に困るんじゃない?」

 女はいたずらに笑って見せた。男もつられて笑いながら、じゃあ、と女の手を引いた。
 向かい合っていた女は男に背を向ける形で腕の中にすっぽりと納まり、手にしていた杯は水没してカチッと床に着地した音を響かせた。

「これなら別に困らない」

 耳元でそう言いながら男は胸元で止められたバスタオルをゆっくりと剥がしていく。女は特に抗うことなくお湯に素肌を晒した。
 女はゆるりと伸ばした足を組み、男の立てられた右膝に手をかけながら前回ここに来た時の事を思い出していた。
 まだ少女だった秋の日、萌えるような紅葉に心を奪われた。春になれば同じ温泉から見たことも無いような桜の風景が広がると聞き、ずっと行ってみたいと思っていた。出来れば愛する人と、と。

 思いに(ふけ)っていると男の手が胸元まで上がって来ていることに気づき、女は小さく声を漏らした。男は唇で首筋をなぞり舌で耳を舐め、指と指の間で胸の先を刺激しながらその膨らみを楽しんでいる。
 刺激に敏感な女は手を硬く握り男に少しずつ重みを預けていった。

「こんなことしたら結局お湯が汚れちゃう」

 呟く女の一言に男の唇はニヤリと口角を上げる。

「何か汚す要因があるのか?」

 男はそれを確かめるべく片手を下半身へ滑らせた。女はその動きに急いで男の手を追うが間に合わない。ようやく追いついた瞬間、刺激が全身に走りその体は弓なりにしなった。

 そこは既に潤んでいて男は満足気に微笑んだ。確かめるように入口を数回なぞって指を滑り込ませると女は一段と高い声で鳴いた。

「これかお湯を汚しているのは」

 引き抜かれた男の指は女の目の前にかざされ、拡げられた二本の指には蜘蛛の糸のような粘りのある液体が渡っている。何も答えようとしない女は耳だけを異様に紅く染め、男はそれを甘く噛みながら指を湯舟に潜らせた。

 再度入口は開かれ、中から液体をすくうと男は茂みを掻き分けて指の腹で敏感な部分をなで回す。女の組んでいた足は解けて指先に力を加えながら身を小さくして喘いだ。

 もう充分だろう――男はそう思い女の向きを変えさせて腰を持ち上げた。女は自ら男に体を近づけて唇を重ね、虚ろな瞳を閉じた。

「二人でもっと汚そうか」

 男の言葉に女は柔らかく微笑んで甘い吐息を吐きながらゆっくりと腰を沈めた。

 波打つ水面(みなも)では倒れた徳利(とっくり)を乗せたお盆が転覆しないように揺れ、その周りには儚く散ったばかりの白い花びらが埋め尽くすように次々と舞い込んでいた。
* 今回の一句 *
≪久方の光のどけき春の日に しづこころなく花の散るらむ≫

意味:日の光がのどかにさしている春の日に、落ち着いた心も無く、桜の花はどうしてはらはらと急いで散っているのであろうか。

作中でも意味を乗せていますが、あとがきでも少し触れたいと思っています。
後々の話では毎回作品内で意味の説明が出来ないと思うので。

一応R−15指定の作品です。
引かれない程度にがんばります!
◇春エロス2008◇


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