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クリーンマン2
作:七英雄


 私は世界でも5本の指に入る名特ダネ記者・・と自分勝手に思っている、地方のしがない記者、宮下裕子!
 毎日毎日一発狙いの特ダネを探している。その特ダネを元にいつかは大手へ・・という考えは常に持っているが、いきなりはそうそう狙えない。
 一発のネタなんて、そんな高確率で出てくるわけないのだ。
 這い上がるしかない。
 地道にコツコツやっていくしか希望はない。
 現在私がいるこの地区で話題になったといえば、誰もが「緑怪人」と答える。なんでも全身緑色の変質者だというのだ。
 最近来たばかりなので噂しか聞かない。
 「緑怪人」と聞くだけで背筋が凍るほどの不気味な響き。
 私は心に誓う。
 この悪魔の「緑怪人」の正体を暴くことを!

 暴くとか言いながら、普通に調べたらいきなり住んでいる所が判明した。
 変質者と言われているけど普通に暮らしをしているのか。
 「緑怪人」と呼ばれているこの男。
 まだ名前を出すわけにはいかない。
 仮にAとする。
 私が見る限り何事もない生活を送っている。
 彼のどこが「緑怪人」なのだろうか。
 全くどこにでもいる男じゃないか。
 変な疑いもかけようがない。
 そうこうしている間にAが外出した。
 尾行しなければ。
 私はAの後を追った。
 その距離、約1m。
 近いと思うけどまあいいわ。

 Aの後をついていく。
 落ち着きがなくキョロキョロしている。
 どこかに空き巣でも入る気なのか。
 見方によってはパトロールをしているようにも見える。
 ふとAの足が止まった。
 じっと前を見ている。
 目の前のおじさんが食べかけのパンを地面に投げ捨てた。
 「あっ」私が思った時。
 Aの身体が光り輝きみるみるうちに緑色に染まっていく。
 なんてことっ!やはりこの男が!
 「緑怪人」っ!
 変身したAは決めのポーズをした後、大きな声で一言。
「クリーンマン!参上!」

「クリーンマン?」
 私は思わず呟いた。
 全身緑色で胸に平仮名で「くりん」と書いてある。
 これが「クリーン」の意味かしら?彼の登場の仕方といい、その態度といい、正義の味方のつもりなのかしら。
 でも悲しいわ。
「緑怪人」と言われても否定はできないわね。
 だって・気色悪いんですもの。
「物を捨てるなんて汚い行為だ!」
 彼は叫んだ。
 た・正しいじゃないの・・。
「うっせえ!」おじさんも負けるかと叫んだ。
 クリーンマンはおじさんに向かってパンチを繰り出した。
「うわっ」と倒れたおじさん。
 それを見ていた住人が警察を呼んだ。
 彼は慌しく逃げた。
 う〜ん。微妙・・・。

 とにかく悪い人ではないそうね。
 結局物を捨てた人に注意がしたかったわけだし・・。
 要するに運が悪いんだわ。
 それにしても最も興味の惹くことは。
 なぜ緑色になるのかってことね。
 物事には必ず理由がある。
 彼が変身するにも絶対に理由があるはずだわ。
 私はアポなし突撃取材を開始した。
 私はしつこいで有名なのだ。
 どんなに断られても逃がさないわよ。
 ・・・・。
 自分のことなんて話したくないでしょうし。
 まして変身する真相だなんて・・企業秘密のようなものだわ。
 でも・・・どんなに・・難しくても必ず答えてもらうわよ!
「よくわからない」って答えがいとも簡単に返ってきた。
 こっ・・・この男!

 自分でそういうことは突き止めようとはしないの?
 再度突撃した時に私は言った。
「なるほど、そういう考えがあったか」彼は言った。
 なんなのよっ!こいつ!
 怒り心頭の私はつい手にもっていたメモ用紙を投げつけた。
 突如彼の身体が輝く。
 なに?なんなの?
 あっという間に彼の身体は緑色に包まれた。
 変身した。
 でもどうして?
 後から知ったことだけど、「物を投げ捨てる」という行為が彼の中で「汚い」ということとリンクしたみたいです。
 ってゆ〜か、全部彼のさじ加減で変身するの?

 そうではなく、勝手に変身するそうです。
 そんな変身が一体何の役に立つというのか。
 私はこの男の秘密を本格的に探ることにした。
 どうして変身するのか。
 とても興味があるわ。
 まず何をすればいいかしら。
 そうね。彼の実家に行ってみよう。
 簡単にわかるだろう。
 彼の両親に会って話をすればなにか謎が解けるかもしれない。・・・・・。

 こんなに簡単にわかるなんて。
 てゆ〜か、実家って3つ先の家じゃない。
 一人暮らしの意味あるの?
 母親がいたので話を聞いてみることにする。
 かなりの年配のお母さんだ。
 そういえば彼は何歳のなのかしら。
 資料を捲る。
 ・・・30。結構いい歳じゃない。緑だ、クリーンだって何言ってんのかしら。仕事しなさいよ。
 お母さんはニコニコしながら私を迎え入れた。
「まあまあこんなに綺麗なお嫁さんを見つけてくるなんてねえ・・」
 ・・・・・はあ?あっあのちょっと。なに暴走してんのよっ!
「あの子をよろしくお願いしますねえ」
 お母さんは泣き始めた。ちょっと・・。
 そこへなんとお父さんが帰ってきた。

「どうした?母さん」
 かなり年配のおっさんが頭を掻きながら言った。
 この人が・・お父さん。とても・・優しそう・・子供にも甘そうな人だわ。
「ああお父さん、あの子がね、あの子がね、とうとうお嫁さんを見つけて・・うう・・」
 いや・・だから・・。
「なっなっなにぃ〜!!」
 お父さんは今にも卒倒しそうな勢いで叫んだ。
 Aって・・どれだけ今まで出会いがなかったのだ?!・・ってお母さんは既に卒倒している。
「こうしてはおれん!」
 お父さんは電話をかける。
「おう!お前か!お前も人が悪いぞ!嫁さん連れてくるなんて」
 どうやら電話の相手はAらしい。
「まあいいから帰ってきなさい。え?変身中?じゃあ仕方ないか。」
 ちょっとおおお〜!私は嫌だが突っ込んだ。

 おかしいわ。どういうことなの?緑色になることが当たり前の会話。親は知ってるんだわ・・。
 秘密がわかるかもしれない。電話を切ったお父さんに声を掛けようとした時。
「おい・・。」
 危険な声が聞こえた。手に刃物を持っている。目がイカレてる男。
 強盗だわ!なんてついてないの。名特ダネ記者になることがそんなに罪なの?!
「金を出せ」
 男は刃物を突きつけてきた。
 お父さんは冷静にそれを見ている。もしかして恐くて動けないの?
「おい!聞こえねえのか!」
 私に刃物を向ける。
 お父さんの顔に怒りが滲んだ。
「か弱い女性に危害を加える・・汚い奴だ」
 そう呟くとお父さんの身体が光り輝いた。

 うふふ。うふ・うふ。もうどうでもいい。もうどうでも。私は投げやりに。して笑うしかなかった。
 お父さんも。彼と同様に全身緑色になっていった。
「クリーンマン!ファーザー!変身完了!」
 リアクションとるのも面倒になってきた。
「なっなんだぁ!」
 強盗はパニックに陥った。
 まあ当然でしょうね。いきなりおっさんが緑色に変身するのだから。
「ひっひい!すみませんでした」
 男は逃げた。
 私は咳払いを一つして。
「あんたら何者なのよぉぉぉ〜!」
 思いっきり叫んだ。

「まあ世界は広いからね。いきなり緑や黄色や赤になる人も探せばいると思うしね」
 お茶を飲みながらお父さんは言った。
 なに?このほのぼの雰囲気。
 いやいやいやいや。いないでしょ!そんな人は。
「いやいやいやいやいるんだよ。息子が言ってたけど。グリーンマンっていう同じような人がさ。」
 つまりこういうこと?突発的に緑色になるのは・・遺伝だと。あんな性格だから、別に理由なんて調べてないからお父さんもわからない。
 お母さんは普通の人だそうです。
 結婚して初めて自分の夫が緑色になるのを知ったそうで。
 それもおかしいけど。かなりおかしいけど。
「まっいいか」で済ませたという。
 このお母さんもなかなかだわ。
 私は呆れた。

 なんか馬鹿らしくなってきた。
 変身の理由なんてどうでもいい。
 だって彼らは自分達の今の状況になにも危機感がない。
 むしろ誇りさえ感じる。他人がどう思おうとも。馬鹿にされようとも。それがどうしたと言える自信があるのだ。
「そろそろ帰ります」
 私は礼を言って家から出た。引き止められたがなんとか断った。
 結婚式場のパンフレットを持ってこようとしたお父さんは非常に悲しそうな顔してた。
 って私はまだ彼のお嫁さん候補という勘違いされたままだ。
 仕方ない。また今度誤解をといておこう。
 帰り際、目の前にAと擦れ違った。不思議そうに私を見ていた。



 親父が訳のわからないこと言ってた。
 嫁さん?よくわからない。
 今日は疲れた。警察を撒くのも一苦労だ。どうしても怪人と間違えられる。なんとかならないか。
 あっ。さっきの女記者だ。なんでこんなところに?俺は不思議そうに彼女を見た。彼女は目も合わせずに通り過ぎた。
 なんなんだ?まさか彼女が親父の言ってた嫁さんなのだろうか。俺は家に入っていった。家の中が「汚い」ので俺はすぐに緑色になった。



 私が書いたAの特集記事が雑誌に載った。
 その内容については、上からは猛反対だったそうだ。
 締め切りギリギリだったのと急遽穴の空いた記事の代わりが見つからなかったので仕方なしに掲載することになった。
 普通ならボツ原稿ということだ。運が良かった。
 Aは先日も警察に追いかけられたみたい。間違いなく誤解なのだろうけど。「緑怪人」の名は止まる事を知らない。
 ある意味観光地になりつつある。
 評価のされない私の記事。いつか評価される時がくるわ。
 昔・クリーンマンの時代が来ていたように。
 私は「正義の戦士クリーンマン」と書かれた自分の記事を読みながら確信した。


「クリーンマン2」 完



あとがき
いつも読んでくれてありがとうございます。
いかがでしたか?
今回の話はクリーンマン続編で、彼の秘密と別の視点から書いた作品です。
さすが、その場その場で文章を考えているだけあって、なんとまあ訳のわからない話で終わりました。
秘密とか言いながら、ますます混乱させてしまった感じがします。
こんなに何も考えずに書ける話があるというのは、結構楽しいです。
なんでもアリですからね。
次回は何も考えてません。
皆さんよろしくお願いしますね。














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