ボックスボムPDFで表示縦書き表示RDF


ボックスボム
作:七英雄


ルール。

 この箱は爆弾である。
 開けると爆発し、必ず死に至るであろう。
 この箱を受け取ると24時間以内に別の誰かに渡さないといけない。
 24時間過ぎると爆発し死ぬことになる。
 誰かに渡した後であれば、再度受け取ることは可能。
 普通の者にとって、この箱は元凶にすぎない。
 ・・・が。
 希望はある。
 10000人目に受け取った者には一生暮らせる莫大な金が約束される。
 10000人を過ぎると20000人目に繰り越される。
 人数のカウントは出てこない。
 感覚と直感で察知せよ。
 ゲーム開始は2004年1月1日からである。
 健闘を祈る。
 希望をその手に。


受け取った者。

「・・・・・。」
 徳永満は発すべき言葉が思い浮かばなかった。
 このルールを読み実際手にした黒の四角い箱を見て最初に思ったことは。
「そんなことあるか」だった。
 同じ中学の保井一馬から手渡されたことを思い出す。
 どこか申し訳なく、安堵にもとれる表情であった。
 一馬も半信半疑なのだろう。
 開けたのか。
 それともドッキリなのか。
 いや。
 あの顔は開けてない。
 開けるという欲望に悩まされながら。
 爆発という恐怖に勝つことが出来ないまま。
 満の所へとまわってきたのだ。
 そして今まさに。
 満が一馬と同じ状況に陥っている。


信じない者。

 満は開けることを試みようと箱に手を伸ばしたが、それ以上が進まない。
 もしかして自分が丁度10000人目ではなかろうか。
 いやいやそんなウマイ話なんてあるものか。
 でもひょっとして・・。
 満のジレンマはそろそろ限界になろうとしていた。
 そんな時・2歳上の兄の光が帰ってきた。
 満は兄に事情を説明して箱を渡した。
「カチリ」と静かに音が鳴る。
 これがカウントされた音なのだろう。
 全く信じていない兄は笑いながら箱を開けた。
 突如兄の身体が膨れ上がり弾ける様に爆発した。
 信じられない。
 兄は爆発して消えたのだ。


混乱する者。

 実際兄だけが爆発したのだ。
 その証拠に満の身体も周りも何の被害もない。
 跡形もなく兄・光はこの世から消えたのだ。
 行方不明者とはこういうことをいうのだろうか。
 もし誰もその場にいなくて、さっきの様なことが起これば後に残るのは黒い箱だけ・・。
 そう、今この場にあるこの箱だけ残るのだ。
 爆発はしたが箱に何も影響がない。
 どういうカラクリなのだ。
 これはまさに殺人兵器。
 暗殺にでも使えそうな未来の武器だ。
 それがなぜこんな場所に出回っているのだ。
 満は恐る恐る箱を手に取った。
「カチリ」と静かに音が鳴った。


信じる者。
 
 さてどうしたものか・。
 満は箱を目の前に数時間考え込む。
 今実の兄が死んだというのに・・だ。
 満の中で兄は「消えただけ」という思いで死んだという事実に到達していない。
 それ程あっけなく、それ程あっという間の出来事だったのだ。
 後から事の重大さが身に染みるだろう。
 満はルールのことをもう一度頭の中で復唱する。
 開けると爆発する・・事実だ。
 となると。
 この他のことも事実なのだ。
 莫大な金が約束される・・・。
 だがこれには問題がある。
 10000人目に開けた者に限るのだ。
 その現在の人数は知るよしもない。


諦める者。
 
 諦めよう。
 満の選択はそこに達した。
 どうせ人数もわかりはしないのに危険を冒してまで意地を張るのも変だ。
 しかも目の前で兄を亡くしているのだ。
 両親にどう説明しよう。
 きっと信じてくれない。
 満は兄のことは黙っていることにした。
 兄は家出したのだ。
 そして二度と帰ってくることはないのだ。
 箱は誰か適当な人に渡せばいい。
 満は街中で適当に選んだ男性に手渡した。
 肩の荷が下りたと踵を返したその時。
「ああ・これか・・」
 手渡した男は何食わぬ顔で言った。


知っている者。

「知ってるんですか?」
 思わず満は男に詰め寄った。
「あ・ああ・前にこれ持ってたよ。」
 男は満のあまりの勢いに驚きながら言った。
「でも本当かどうかわからないし、結局今自分が何人目なのか全然見えないしね。」
 本当なんです!
 僕の兄が死んだんです!
 満はそう叫びたかった言葉を呑み込んだ。
「結局知り合いに渡したけどね。半年前かなぁ。まさかまたここで見ることになるなんてね。」
 男は続けた。
「噂によると、爆発する瞬間に現在何人目か見えるってね。」
「ええ?」
 満は裏返った声を発した。


企む者。

「でも、まあ、それって、爆発する人にしか見えないからね。意味ないよね。」
 男は箱を満に再び渡してその場を去っていった。
「カチリ」とまた音が鳴る。
 瞬間。
 悪魔の囁きが満の脳を突き抜ける。
 失敗するかもしれない。
 だが試してみる価値はある。
 満は携帯電話を取り出し、すばやくプッシュした。
 間髪入れずに相手が出た。
「一馬か」
 電話の相手は保井一馬だった。
「あの例の箱な、嘘だよ。俺開けたけどなんともなかったぞ。・・うん。とにかく俺んちに来いよ」
 満はニヤリと笑う。


邪魔する者。

 家に帰った満は素早くビデオを用意してセッティング始めた。
 なんのために?もちろん、爆発の瞬間を撮影するためだ。
 一馬をダシにして箱を開けさせる。
 被害が及ぶのは一馬だけだ。
 その場面を撮影しておけば、もしかしたら噂通りに現在のカウントが映るかもしれない。
 兄の死に様を見たからこそ出来ることだ。
 満はバレないような位置にセッティングした。
 完了と同時に呼び鈴が鳴る。
 来た。
 満は玄関へ向かった。
「よお」
 扉を開けた時、目の前にいたのは同じクラスの赤沢洋だった。
 後ろには一馬が笑いながらいる。
「ちょうどばったり会ってね」
 満の作戦はいきなりピンチを迎えた。


知っていた者。

 目撃者がいないということが、今回の核となる部分なのだ。
 それが犠牲となる一馬に対して余計な部外者である赤沢洋の登場により事態は違う方向へ進むのではないか。
 満は不安になった。
 いや。
 違う。
 もっと別の何かだ。
 別の何かに不安を抱いている。
 一馬は知っているのではないだろうか。
 この箱が本物だということを。
 そして代わりを連れてきたのではないだろうか。
 洋という生贄を。
 一馬は全てを知ってる。
 満は直感で思った。
 洋を使って秘密を探り出そうとしている。
 一馬の瞳がそう伝えていた。


探る者。

 部屋に入った満はビデオの場所をさりげなく確認した。
 場所に問題はないはずだ。
 洋がトイレへと席を立った。
「おい」
 一馬は口を開いた。
「お前も・・やってくれるよな」
 冷ややかに言い放った。
「なんのことだ?」
 満はとぼけた。
「ふん・まあいいさ。代わりを連れてきたしな。」
「なんでだ?」
 満は聞いた。
 どうして何もかも知ってるんだ?
 全部言わなくても一馬には伝わっている。
「まあ・ちょっと・・な。」
 恐らく一馬も満と同じことになったのだろう。
 箱の秘密を知っている。
 だが。
 この噂のことまでは知るまい。


先を越す者。

 洋がトイレから帰ってきた。
 既に一馬から話を聞いているのか洋は早く箱を見せろと急かしてきた。
 都合が良い。
 満は箱を出して見せた。
 撮影は始まっている。
「開けたけどなんともなかったぞ。」
 満は言った。
 一馬も「そうなんか〜」下手くそな演技だ。
 疑いもせずに洋は箱を開けた。
 予想通り。
 洋の身体は兄と同じように爆発した。
 あっという間の出来事だ。
 洋は痛みも感じる暇もなかったろう。
 一馬は驚いていない。
 やはり知っていたのだ。
 満は素早くビデオを確認した。
 その場で再生が観ることが出来る。
「あっ!今ので9999人だ!あと一人で10000人だ!」
 満は叫んだ。
 同時に一馬が箱を取った。


騙す者。

「一馬ぁ!」
 満は一馬に飛び掛かった。
「もう遅い!俺が10000人目だ!大金持ちだ!」
 一馬は箱を開けた。
 希望だ!
 希望が手に入る!
 一馬は莫大なお金の使い道を考えた。
 しかし。
 一馬の目に映ったのは。
 満の不適な笑みだった。
 一馬の身体が爆発していく。
 満の罠だったのだ。
 ビデオなど確認していなかった。
 撮影はまだ続行中だ。
「おっお前!」
 一馬は怒りの目を向けたまま爆発し、消えていった。
 邪魔者は本当にいなくなった。
 満は改めてビデオを確認した。
 映っていた。
 確かに爆発の瞬間。
 現在のカウント数が。


消えていく者。

「見える!見えるぞ!9・・・9・・・9・・・。」
 9が3つ並んでいる。
 今度は冗談でもなんでもない。
 最後の1ケタ・・。
「・・・あっ」
 なんということだ。
 最後の1ケタが爆発の瞬間でボケているのだ。
 はっきりと見えない。
 9にも見えるが・・8にも見える。
 いや・・やはり9か?
 満は肝心な最後の最後で窮地に立たされた。
 どうなんだ?
 どっちなんだ?
 汗が滴り落ちる。
 目に決意が表れた。
 満は「カチリ」と音を確認してから思い切って箱を開けた。
 満の瞳に入ってきたのは。
「9999」という数字だった。
 満は後悔したがもう意識は遠のいていった。


知るはずはない者。

 後に残ったのは黒い箱だけだった。
 数時間後。
「満いるのか?」
 父親が部屋を覗いたが誰もいない。
 ポツンと佇んでいる箱を手に取った。
「カチリ」と静かに音が鳴る。
「母さん、満いないぞ。光もいない。」
 父親は箱を手に持ったまま母親に話しかけた。
「あら、そう。買い物にでも行ったんじゃないの?」
「鍵も掛けずにか。」
「靴はあるのにねぇ。あら?別の靴もあるわ。」
 そう言いながら母親は首をかしげている父親の傍へ寄った。
 そのまま無意識に、父親の持っていた箱を取った。
「カチリ」と静かに音が鳴った。


「ボックスボム」 完。




あとがき
いつも読んでくれてありがとうございます。
なんとか掲載できました。
今回は半日で書き上げた作品です。
元々が短い文章量なので当然といえば当然ですけど。
最終回の最後のシーンが書きたくて出来上がったようなものです。
僕は基本的に映画でもそうですけど。
終わり方・エンディング重視なんです。
なので終わり方を先に考えて・決めてから話を作っていきます。
その終わり方の思い入れが弱かったら途中で挫折してしまうんです。
頑張ります。














ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




◆BACK
小説家になろう