挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。
<R15> 15歳未満の方は移動してください。

森の中で

作者:arun
リハビリに書きました。
作品中、若干人種差別的な表現がありますので不快な方はブラウザバックを。
私、相田瑞穂は齢22歳にて異世界トリップ。

小説や漫画みたいなことがまさか自分にも起こるとは思わなかった。
丁度日曜、日課のウォーキングの最中の事だった。
森の中に忽然と放り出された後、人里もしくは水源を求めて彷徨っている内にイノシシみたいな生き物にエンカウント。必死で逃げ回って尻餅までついてしまい絶体絶命だったんだけど、火事場の馬鹿力というか。やめてー、殺さないでーっと無我夢中でイノシシに向けた掌から炎が出て助かった。
そこから魔法のある世界だと理解し、いろいろあった結果、私は魔法に関してはチートであることに気付く。
元々気功とか瞑想とか習慣だったし、自分の中にある魔力?みたいなものは何となく分かった。それが体中に巡っている事も。つうか、流れからして魔力めいたものはまんま気だと思う。
気功の要領で、イメージを明確にして掌からそれを放出すると、現象化する。
一旦コツを掴んでしまうと後はその応用だった。

魔法の助けを借りながらなんとか人里に行きつくことが出来たまでは良かったんだけど、そこでまた問題があった。
この世界は白人系人種ばかりで、自分のようなアジア人種はいない。
人里では石を投げつけられ、武器を持った大人に罵られ追い回された。
言葉が分からなかったので翻訳魔法を使うと、出ていけ!災いを呼ぶ小人、黄色い肌の悪い妖精、黒髪の悪魔の子、ゴブリンと人のあいの子……etcというような言葉のオンパレード。
つまり、私は人間とは見做されず、差別や偏見、迫害にさらされることになったのだ。

これまで生きてきてそんな悪意と殺意を向けられた事もなかった私は泣きながら這う這うの体で逃げ出した。
それからは夜を待って人里から洋服などの必要な物や食べ物を盗み野宿する旅の日々が続いた。
盗賊に襲われた事もある。魔法が無かったら捕まえられて見世物小屋に売り飛ばされるところだった。

そんなある日、剣や弓や杖を持った冒険者らしき人達に追い掛け回された。
食べ物をくすねた集落の人間が依頼でもしたのかも知れない。
何組か返り討ちにしたけど、もう心も体もボロボロで限界が近かった。
弓で足を射抜かれ、私は冒険者達に捕らえられた。

私を捕まえた冒険者は4人組。

リーダーはイグナーツといういけ好かない男だった。金髪碧眼、外見は上の中だが中身がDQN。人をさんざん「おい、ゴブリン女、お前の名前は何だ!」と剣の鞘で小突いたり髪を引っ張ったり獣のような扱いをしてくる。
二人目はイザベルという名の赤毛の女で弓を持っていた。こいつが私の足を射抜いた奴だ。勝気で気位が高く、私の事を汚物を見るような目で見てくる。外見だけは美人なのに中身が最悪だ。
三人目も女、名はイリスと呼ばれていた。銀髪の長い髪を緩く編んでツンと澄ました魔法使い。赤毛のような悪意を感じないものの、私の事を実験動物のように思っているんだろうなと感じた。
四人目は茶色の髪に青い瞳のベルトゥルという名の眼鏡の男。顔面偏差値が高いこのパーティの中で中の下ぐらいの容姿で浮いていた。

イグナーツは、私を捕まえ冒険者ギルドに連れていくが、逃走されたら困るので怪我は治すなと下男に命じるようにベルトゥルに命じた。
魔力封じの鎖を付けられた私は痛みを堪えながら冒険者達についていくことになった。
旅の間中、イグナーツやイザベルは私を蔑み、虐めてきた。
私はじっと耐えて口を利かない事に決めたが、反抗的な目が気に食わなかったのだろう。
時に痛みや理不尽さに耐えかねて涙を流せばその時だけ虐めは止んだから。

ある夜。

望郷の念に横になったまま静かに涙を流していると、寝ずの番になったベルトゥルが傍に寄ってきた。
涙を見られたくないと体をよじったが、化膿しかけた傷がうずいて呻く。

「……傷に薬を塗るだけだ、あいつらにバレないよう大人しくしていてくれ。」

囁かれた言葉に私は止まった。申し訳程度に巻かれた布包帯が解かれる。

「うわ、酷いな。」

彼は私の口元に布を持ってきて噛むように言い、その通りにする。
薬を塗られるのは激痛が走ったが、何とか塗り終えられるまで我慢できた。
噛んでいた布を引っ張られたので、そのまま私はベルトゥルという男を振り返りじっと見つめた。

「……泣いていたのか。」

こちらを気遣い、憐れんでくれているのが分かる。
私を捕まえた一味ではあるが、人の情に触れて私は涙がまた溢れて止まらなくなった。

ベルトゥルは私の涙をぬぐいながら、周りを見わたす。
私もつられて見ると、他の3人はいなくなっていた。
と、肩を掴まれた。

「まだ戻らないからチャンスだ――今、僕が枷を外したら魔法で逃げられるか?」

私は考えながらゆっくり頷く。
枷さえなければ逃げるだけなら転移魔法を使えば一瞬だ。

「でも、そうなったらあなたはどうなるの?」

彼は茫然とした顔になった。

「――あ、ああ僕は大丈夫だから。話せたんだね、君。」

言いながら枷の鍵を外してくれる。
仲間ではなかったのかと聞くと、権力や身分を傘に半ば脅されて不本意ながら無理やり連れてこられたとのことだった。

「これでも貴族の端くれでね。色々あるんだよ。」

「ありがとうございます。私の名前、相田瑞穂です。」

「アイーダか、良い名前だね。僕の事を信用してくれたんだな。さ、時間がないから早く逃げるんだ。」

促されるも、逡巡する。
イグナーツの態度からしてベルトゥルは立場が弱い筈だ。
私を逃がしたとなればきっと只では済まない。
だったら、と彼を引っ掴んで一気に転移魔法を使った。

それから。

私はベルトゥルと共に旅をした。
彼は博学な上、薬のエキスパートでとっても優しい人だった。
彼のおかげで買い物も出来るようになったし色んな人にも会えた。
外見によらず理解してくれる人、優しくしてくれる人もいた。
反則的な魔法で強大な魔物を退け、王様に認められた事もあった。
けれども人の悪意というのはどこも同じで、やっぱり自分は異物だった。

だから今はこうして森の奥に居を構えて静かに生活を送っている。

時折ベルトゥルが訪ねてきてくれて、色んな話をしてくれる。彼は自分の研究が完成間近だとか。
その発表を待って、私たちは結婚するつもりだ。

そうそう、あのイグナーツだけれども。
想像通り高位貴族のアホ坊でベルトゥルを学園時代から虐めてきた屑だった。
私たちが逃げた時、お楽しみ中だったとか。おええ。
ベルトゥルと一緒に再会した時万全の体調だったし全力で容赦なく公衆の面前で叩きのめしてあげた。
ベルトゥルによると当時イザベルとイリスを愛人にしていたが、彼女らはあっさり他の男と結婚したらしい。捨てられてやんのバーカ。
でも最近、イグナーツはなぜか頻繁に訪ねてくる。
お互い大嫌いである意味両想いなんだから二度と来なければいいのに。

何か嫌な予感がしながらも、私は午後やって来るであろう愛しい人のためにクッキーを焼くのであった。

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ