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 「ご馳走様でした」
 出された食事を頂きひとここち。
 手を合わせて感謝の意を込める。
 「んっどうもさん」
そしてそれに答えてくれるマスター。
軽い、ちょっとした何時ものやり取り。
「ふふっありがとうございました。美味しかったです」
「へへっそりゃあんだけ腹空かせてたならなんだって上手いさ」
「もう…そういうコトじゃなくて、そうじゃなくてもですっ」
「あぁわりぃわりぃ、分かってるって。後で家内にも伝えといてやるよ」
そして続く軽口の応酬。
「おっおうわりぃ…んじゃシスちょっと待っとけや」
そこに奥からの声がかかり厨房へと。
誰かの注文の品でも出来た様子、やはりこの時間帯以降はマスターも忙しそうですね。
「っと私の方も用意しとかないと」
奥に引っ込んでいくマスターを見送ってから私の方の用事も思いだす。
とりあえずまずは今回依頼を受けてた三点を…。
荷物の中からそれらを取り出してカウンターに並べる。
特に浮遊石に関しては先程彼を運ぶ際に使っているので、ココで改めて不具合が生じてないか再度チェック。
「ん?なんだいやに念入りだな」
そこに料理を持って戻ってきたマスター。
「ん〜…まぁそういう訳じゃないけど、ただちょっとココに来る前に一度使わなきゃならない場面があってね〜………んっ大丈夫みたい」
一通りのチェックも終えて、再び目線を上げると、マスターの方も料理を運び終えてきたのでしょう、再び私の目の前に。
「んで、ちょっと遅れちゃいましたけどコレが今回の依頼分ね」
「遅れたって…期限は今日までなんだし気にするまでもねぇだろ。まっなににせよ了解だ。ホレコッチは依頼料、ちゃんと有るか確認頼むわ」
「了解です」
入れ替わりで渡された袋の中身を早速チェック。
中身は少なくない量の金貨。
実際のトコロこんな所で広げるのは普通なら憚られるほどに多いと思われる程の。
まぁ依頼品の中に浮遊石があるので相場と言えば相場なのでしょうけど…。
魔鉱導学。
ソレが今マスターによって検品されている品々に施されている技術。
特定の物質に、それぞれ定められた様々な力を注ぐ事によって発現する現象を用い、組み合わせる事によって、望む結果を導き出す技。
その技術を元に様々な導具を開発、生産する職業に就く者達を魔鉱技師と言い。
私自身のまたその中の1人として数えられています。
その歴史は古く、旧文明時代の魔導師達の手によって生み出されたと言う説や旧文明崩落の原因となった魔法に変わる新技術として考え出されたと言う説など、数ある説のどれもが100年、200年程度どころか1000年以上の歴史をも示している部分が有ったりする訳でして。
故にこそその用途は生活に欠かせないものから全く関わりを感じさせないものまで多岐に亘り、またそれらの価値も叱りである。
モノによっては銀貨一枚でお釣りがくる様なモノもあれば、金貨100枚をもってしても手の届かないものまであると私も聞いています。
今回の代金は合計金貨72枚。
加えて言いますと浮遊石はその内の三分の二を占める高額商品。
一定領域範囲内の重力の干渉を不可とし、対象物質の重量を一時的にでも0に出来るこの石の効果は、その使用用途の幅広さから値段の割りに結構数の出る人気商品だったりするのですよ。
「うん間違いなく」
「こっちも問題なしだ」
お互い受け取った物の確認を終えて、更に続けてお仕事のお話。
「で、何か見つかった?」
主語も何も取り払った簡潔すぎる質問だけど十分通じる一言。
ソレが何を指しているかは以前話してて、そして…
「いいや、全くな。まぁ最近は目新しい噂もあまりねぇし…すまんな」
…一年以上が経った今までもまだ手掛かりの一つも見つけられていない物。
「そっか…」
そして私の答えもまたいつも通りの。
 「しっかし今更言っても仕方ねーかもしれねーがホントにん名紋在るのか?お前が言うほどに物騒なモン、それ自体は確認されてなくとも似たような噂なり伝承なりは出てきそうなんだけどな」
マスターの言うとおり、確かにココまで捜してコレならその存在そのものを疑問視しても無理ないことなのでしょう。
けどコレばかりは…
「ううん、ソレが在る事だけは確実。昔確かにここに在った物だから、それにアレはそう簡単に壊れたりなんてするものでもないから」
諦めるわけにはいきません。
「……随分と知ってる様な口振りだな」
「…っ」
 私の言葉でマスターの言葉に真剣な重みが。
「それに変に具体的だ。シス…まさかお前その目で見た事すらあるんじゃ…」
「あ…えっなっ何言ってるんですかマスターってば。そっそそそ、そんなわけなななっないじゃないですかっ」
「…はぁ、やっぱりか。シス下手な誤魔化しは要らん。お前まだ何を話してない下手に隠すんなら俺はもうこの件から手引かせて貰うからな」
決意を込められたと感じられる言葉。
それはマスターの本気を察せられるほどには強い意思表示。
「えっあ……あの…すみません」
マスターの迫力に若干引きつつ、ズズイっと近づいて来るマスターの顔を両手で押し止める。
「わっぷ…んで何処だ何処で見かけた。何時?状況は?何でもいい話せよ」
顔面に張り付いている私の手なんてものともしないで次々に飛び出してくる言葉の数々。
どうにも既に私が実物を見た事が在ると言うのは既に決定事項になってるご様子。
「あっ……あのえっと…その……」
慌てふためく私と、そんな私のわずかな仕草一つでも見逃さんとばかりに睨んでくるマスター。
傍から見たらきっともの凄く誤解を招きそうな気もするけど誰も気付いてくれてない様子か、静止の声一つ上がりません。
何時もであればそんな誤解無い方が良いのですが、今、今回ばかりは痛烈に求めたいです、私。
「さぁ言え、正直に全部話しちまえ。んじゃなきゃ見つかるもんも見つかんねーぞ」
しかし耳に飛び込んでくるはマスターの言葉のみで、周囲の皆さんからの助力は一言もありはせず。
「あの………えっと…マスター…落ち着いて、ちょっと顔近い」
マスターを宥めようと個人奮闘な私。
そしてその言葉だけは認めてくれましたのか、ようやくその顔が目の前の位置から距離を置いてくれました。
 「何でんな重要情報隠してたかってトコは……まぁアンタにも色々あるんだろうがな、だがまぁせめてココでだけは話せや。本気でソレを見つけたいならな」
ホッとしたのも束の間、続けられたマスターの低い声。
状況が何一つ変わってないことに気付かされて冷や汗が流れます。
「あ…あの……その、えっと……」
「少なくともココはそういう場だ。それはお前だって判ってる事だろ、シス」
「………」
熱さの抑えられた…ただ真剣な声。
言葉の内容は…
…確かに……その通り。
でも…それでも…
「どうした、諦めるのか?」
「っそんな事出来ないですっ」
「なら分かるだろ。確かにお前さんは訳有りだろう。んな事ココに来だした頃から知ってるさ。そしてそれにたいして深くは詮索しないのが俺たちの最低限のマナーだ。だからこれ以上は聞かないでいてやる。だがな、見つけたいなら、探り出したいのなら情報を渡せ。でなきゃ一生このままだ………判るよな」
言葉を最後に後は優しく頭を撫でられ。
マスターの言葉、その仕草、それらは厳しく強引に見えても確かに優しさでした。
故に困ってしまいます。
マスターの言葉が確かに本当ですから。
しかもこうして聞き出したりする行為は本来ならしない事。
話す話さないの選択は常に依頼主の判断で行われ、受け手は催促しないのが常例における礼儀とされるのですから。
にも拘らず、そのことを誰よりも理解してるマスターからの催促。
その言葉に込められた想いが気付けてしまうから余計困ってしまう。
どうしても話せないこと。
それは確かに存在するのですから。
…あの人もこんな思いを感じてたのでしょうか?…
浮かぶ一人の姿に苦笑が漏れる。
あの時のあの人はどうしたのか…
かつての時に思いを巡らし……
「……マスター…あの…私自身目にした事はないのです」
事実を話す決意をする。
全てではなく、ベール一枚越しに歪曲させたものを…。
 相手にベールの存在を気付かせるようにしながら。

一章 第四話  【依頼品】
 「ご馳走様でした」
 出された食事を頂きひとここち。
 手を合わせて感謝の意を込める。
 「んっどうもさん」
そしてそれに答えてくれるマスター。
軽い、ちょっとした何時ものやり取り。
「ふふっありがとうございました。美味しかったです」
「へへっそりゃあんだけ腹空かせてたならなんだって上手いさ」
「もう…そういうコトじゃなくて、そうじゃなくてもですっ」
「あぁわりぃわりぃ、分かってるって。後で家内にも伝えといてやるよ」
そして続く軽口の応酬。
「おっおうわりぃ…んじゃシスちょっと待っとけや」
そこに奥からの声がかかり厨房へと。
誰かの注文の品でも出来た様子、やはりこの時間帯以降はマスターも忙しそうですね。
「っと私の方も用意しとかないと」
奥に引っ込んでいくマスターを見送ってから私の方の用事も思いだす。
とりあえずまずは今回依頼を受けてた三点を…。
荷物の中からそれらを取り出してカウンターに並べる。
特に浮遊石に関しては先程彼を運ぶ際に使っているので、ココで改めて不具合が生じてないか再度チェック。
「ん?なんだいやに念入りだな」
そこに料理を持って戻ってきたマスター。
「ん〜…まぁそういう訳じゃないけど、ただちょっとココに来る前に一度使わなきゃならない場面があってね〜………んっ大丈夫みたい」
一通りのチェックも終えて、再び目線を上げると、マスターの方も料理を運び終えてきたのでしょう、再び私の目の前に。
「んで、ちょっと遅れちゃいましたけどコレが今回の依頼分ね」
「遅れたって…期限は今日までなんだし気にするまでもねぇだろ。まっなににせよ了解だ。ホレコッチは依頼料、ちゃんと有るか確認頼むわ」
「了解です」
入れ替わりで渡された袋の中身を早速チェック。
中身は少なくない量の金貨。
実際のトコロこんな所で広げるのは普通なら憚られるほどに多いと思われる程の。
まぁ依頼品の中に浮遊石があるので相場と言えば相場なのでしょうけど…。
魔鉱導学。
ソレが今マスターによって検品されている品々に施されている技術。
特定の物質に、それぞれ定められた様々な力を注ぐ事によって発現する現象を用い、組み合わせる事によって、望む結果を導き出す技。
その技術を元に様々な導具を開発、生産する職業に就く者達を魔鉱技師と言い。
私自身のまたその中の1人として数えられています。
その歴史は古く、旧文明時代の魔導師達の手によって生み出されたと言う説や旧文明崩落の原因となった魔法に変わる新技術として考え出されたと言う説など、数ある説のどれもが100年、200年程度どころか1000年以上の歴史をも示している部分が有ったりする訳でして。
故にこそその用途は生活に欠かせないものから全く関わりを感じさせないものまで多岐に亘り、またそれらの価値も叱りである。
モノによっては銀貨一枚でお釣りがくる様なモノもあれば、金貨100枚をもってしても手の届かないものまであると私も聞いています。
今回の代金は合計金貨72枚。
加えて言いますと浮遊石はその内の三分の二を占める高額商品。
一定領域範囲内の重力の干渉を不可とし、対象物質の重量を一時的にでも0に出来るこの石の効果は、その使用用途の幅広さから値段の割りに結構数の出る人気商品だったりするのですよ。
「うん間違いなく」
「こっちも問題なしだ」
お互い受け取った物の確認を終えて、更に続けてお仕事のお話。
「で、何か見つかった?」
主語も何も取り払った簡潔すぎる質問だけど十分通じる一言。
ソレが何を指しているかは以前話してて、そして…
「いいや、全くな。まぁ最近は目新しい噂もあまりねぇし…すまんな」
…一年以上が経った今までもまだ手掛かりの一つも見つけられていない物。
「そっか…」
そして私の答えもまたいつも通りの。
 「しっかし今更言っても仕方ねーかもしれねーがホントにん名紋在るのか?お前が言うほどに物騒なモン、それ自体は確認されてなくとも似たような噂なり伝承なりは出てきそうなんだけどな」
マスターの言うとおり、確かにココまで捜してコレならその存在そのものを疑問視しても無理ないことなのでしょう。
けどコレばかりは…
「ううん、ソレが在る事だけは確実。昔確かにここに在った物だから、それにアレはそう簡単に壊れたりなんてするものでもないから」
諦めるわけにはいきません。
「……随分と知ってる様な口振りだな」
「…っ」
 私の言葉でマスターの言葉に真剣な重みが。
「それに変に具体的だ。シス…まさかお前その目で見た事すらあるんじゃ…」
「あ…えっなっ何言ってるんですかマスターってば。そっそそそ、そんなわけなななっないじゃないですかっ」
「…はぁ、やっぱりか。シス下手な誤魔化しは要らん。お前まだ何を話してない下手に隠すんなら俺はもうこの件から手引かせて貰うからな」
決意を込められたと感じられる言葉。
それはマスターの本気を察せられるほどには強い意思表示。
「えっあ……あの…すみません」
マスターの迫力に若干引きつつ、ズズイっと近づいて来るマスターの顔を両手で押し止める。
「わっぷ…んで何処だ何処で見かけた。何時?状況は?何でもいい話せよ」
顔面に張り付いている私の手なんてものともしないで次々に飛び出してくる言葉の数々。
どうにも既に私が実物を見た事が在ると言うのは既に決定事項になってるご様子。
「あっ……あのえっと…その……」
慌てふためく私と、そんな私のわずかな仕草一つでも見逃さんとばかりに睨んでくるマスター。
傍から見たらきっともの凄く誤解を招きそうな気もするけど誰も気付いてくれてない様子か、静止の声一つ上がりません。
何時もであればそんな誤解無い方が良いのですが、今、今回ばかりは痛烈に求めたいです、私。
「さぁ言え、正直に全部話しちまえ。んじゃなきゃ見つかるもんも見つかんねーぞ」
しかし耳に飛び込んでくるはマスターの言葉のみで、周囲の皆さんからの助力は一言もありはせず。
「あの………えっと…マスター…落ち着いて、ちょっと顔近い」
マスターを宥めようと個人奮闘な私。
そしてその言葉だけは認めてくれましたのか、ようやくその顔が目の前の位置から距離を置いてくれました。
 「何でんな重要情報隠してたかってトコは……まぁアンタにも色々あるんだろうがな、だがまぁせめてココでだけは話せや。本気でソレを見つけたいならな」
ホッとしたのも束の間、続けられたマスターの低い声。
状況が何一つ変わってないことに気付かされて冷や汗が流れます。
「あ…あの……その、えっと……」
「少なくともココはそういう場だ。それはお前だって判ってる事だろ、シス」
「………」
熱さの抑えられた…ただ真剣な声。
言葉の内容は…
…確かに……その通り。
でも…それでも…
「どうした、諦めるのか?」
「っそんな事出来ないですっ」
「なら分かるだろ。確かにお前さんは訳有りだろう。んな事ココに来だした頃から知ってるさ。そしてそれにたいして深くは詮索しないのが俺たちの最低限のマナーだ。だからこれ以上は聞かないでいてやる。だがな、見つけたいなら、探り出したいのなら情報を渡せ。でなきゃ一生このままだ………判るよな」
言葉を最後に後は優しく頭を撫でられ。
マスターの言葉、その仕草、それらは厳しく強引に見えても確かに優しさでした。
故に困ってしまいます。
マスターの言葉が確かに本当ですから。
しかもこうして聞き出したりする行為は本来ならしない事。
話す話さないの選択は常に依頼主の判断で行われ、受け手は催促しないのが常例における礼儀とされるのですから。
にも拘らず、そのことを誰よりも理解してるマスターからの催促。
その言葉に込められた想いが気付けてしまうから余計困ってしまう。
どうしても話せないこと。
それは確かに存在するのですから。
…あの人もこんな思いを感じてたのでしょうか?…
浮かぶ一人の姿に苦笑が漏れる。
あの時のあの人はどうしたのか…
かつての時に思いを巡らし……
「……マスター…あの…私自身目にした事はないのです」
事実を話す決意をする。
全てではなく、ベール一枚越しに歪曲させたものを…。
 相手にベールの存在を気付かせるようにしながら。

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