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世界樹の御子たちへ
作:GARU



一章 第九話  【情報屋】


 嘆く事数瞬。
何とか気を奮い立たせて、再び魔導ギルドへと足を走らせた。
 あの彼を取り逃がしたのは痛いですけど、スグサマ行動できなかったあの痛打は多少なり冷静に思考を流せるくらいに頭を冷ましてくれていた。
 こんな街中を我武者羅に捜し回る愚に気付く位には。
そして確実に見つけ出す為の手段に思い至らせるくらいには。
「マスターいらっしゃいますっ」
店内に入るなりマスターを呼ぶ。
店中の注目が一気に集まって恥ずか…いいえっ今はそんな事気にしてられません。
一瞬動悸が跳ね上がったのや、逃げ出したくなった衝動については今はまとめてスルーの方向性で。
ひとまず余計なことは一切合切全部無視しつつカウンターへと身を乗り出す。
「おっおいおいシス一体どうしたんだってんだ、んなに慌ててよ。つーか今さっき帰ったばっかで…なんか忘れ物か?」
突然の事ではあってもいつもどおりのマスター。
 「いいえそうじゃなくてですねっ」
普段は当たり前なその態度が少しいらいらしてきます。
判ってます、これが単なる八つ当たりだなんて事は。
ええ判ってますよ。
でも…それでも少しは…
「まぁなんにせよ少し落ち着けって。ちょっと待ってろよ今なんか飲み物持ってきてやるから」
少しは察して欲しいと思うのは、たぶんもうどうしようもない感情。
「待って下さい。飲み物はいらないです。そんなのよりも依頼お願いしたいんです」
悠長なマスターの振る舞いにイライラする。
今この場にいる自分に不安がある。
本当にこの選択が正しかったのか。
他に何か取る道があったのではないか。
こんな所で…
ソレよりも自身で追った方が…
気が逸る。
今すぐにでも飛び出したくなる気持ちを必死で抑える。
何故ココまで気が急くのかは判らない。
でも…ココで飛び出したらココまでの時間が無駄になるのは判りますから。
だから…少しでも早くココで為す事を。
「なんかあったのかって……まぁ訊くまでも無いか。判った、で何をすればいい」
ココまで来てようやく本題に入れます。
ようやくです。
でもまずは一つ深く深呼吸。
心を少しでも落ち着いた気にさせてから。
自分が興奮してる事ぐらい、苛立ってる事ぐらい、頭では判ってるつもりですから。
「……人を捜して欲しいんです」
 成すべき事の最善を。
「……」
私はいつもそうしてきたのですから。

 魔導ギルド。
確かにココはそう呼ばれる場所ですが、ただ単にそういった商品を取り扱っているお店と言うわけではありません。
取り扱っていますは主に魔導関係全般。
商品の取り扱いから、依頼の仲介。
更には素材、遺跡などの情報の提供や探索のサポートまで。
仲介屋。
ただ店と言うよりそう呼ぶ方が意味としてはシックリくると思います。
魔導関連の商品の売買。
 素材に関しての情報。
危険地帯へ赴く際の冒険者との橋渡し。
それら全てを取り仕切るのがココなのです。
故に情報屋としての側面も当然。
ただ1人闇雲に走るよりも専門の者に。
よく言う、餅は餅屋にと言うヤツです。

「身長は大体マスターより頭一つ分ぐらい下。頭髪は黒でしたね。白い…身体にピッタリとした感じの変わった服装、多分北の方の独自の衣装かとは思うのですが、はじめて見る感じの…今まで見た事のない衣装なので本当に多分でしかありませんけど」
あの時見た彼の姿を瞼の裏に浮かべ、その特徴を事細かに述べていく。
「でだ、結局の所ソイツは一体なにやらかしやがったんだ?」
「すみませんそれは…ただ本人酷く混乱…錯乱してますから騒ぎになってますかも」
言葉にして思い辿り着けた、予測できた可能性の一つ。
 正直嬉しくない可能性。
「…大事…にはなって欲しくない相手というコトか?」
疑問系ながら確認の意が強いマスターの言葉。
そこには普段の陽気さは無くて、真剣みを帯びた大人の男性としての強さみたいなものを感じる。
「……はい、できることならば衛兵や騎士よりも早く見つけたいです」
「恋人……って訳でもなさそうだな。厄介事か?」
「…はい」
普段の私でしたら、多分前半の言葉だけで取り乱していたでしょうが今日はそんな気持ちにもなれません。
マスターも多分判ってる。
だからこその軽口の装い。
マスターなりの確認なのかも。
「とりあえずお前さんにとって被害者か加害者かどちらかだけでも言ってくれや。でなきゃ扱いに悩む」
話せない…ただ言葉のニュアンスだけで受け入れ応えてくれるマスターには、毎度毎度本当に正直頭が上がりません。
「ただし今この時だけはだからな」
まぁ付け加えられた一言に納得いかない感がバリバリ感じられましたが。
事後説明は……まぁそれは後で考えましょう。
とにかく今は少しでも早くです。
「ひとまず今はどちらかも判別付かないんです。私自身突然な事で事態がさっぱりですから」
ソレは正直な感想。
「まぁ状況だけ見れば多分相手方が加害者…です。けど……」
「ソレが本当か、わっかんねーってか。ったくホント面倒事だな」
「…すみません」
「まぁイイや、取り合えず聞き回ってはやる。ただし焦るなよ、いくら情報も取り扱ってるっつったって微妙に畑違いなんだからな」
「はいすみません、いつもいつも無理ばかり言ってしまって」
本当に頭が上がりません。
「いいさいいさ、我が国一の魔鉱技師様の頼みとあっちゃー贔屓にして貰えてる仲介屋としちゃ聞かない訳にもいかねーだろって」
「本当にすみません。では私も一度外を回ってみますので。ではまた後で伺いますから」
何でも無いコトの様に言ってくれますマスターに最大限の感謝を。
そして私は時を惜しむままに外へと駆け出していきます。
確かにマスターの言う通り今回のコレはマスターの取り扱っている情報とは畑違いでしょうから。
だから私自身。
それに居ても立ってもいられないのにはかわりありませんしね。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「あっおい……って行っちまったか。ったく焦るなって言ったにもかかわらず…ったく聞いちゃいねぇたら。しかし何者なんだかな〜その誰かさんとやらは。言葉遣いを気にする余裕も忘れさせる相手…ホント訳ありの恋人とかじゃねーか」
もしもそうなら泣くヤツが大勢出そうだがなー。
頭の中を無理矢理陽気に戻して軽く笑ってやる。
この国で…否、世界中で唯一ただ1人、浮遊石と言う伝説を現実にしちまった天才魔鉱技師の姿を。
まっ正直本人が何処まで自覚してるかわからねぇが特別中の特別。
技師としては若過ぎる容姿。
技師本人ではなく単なるお手伝いの見習いであるとした情報操作。
 それでも狙う輩は確実に在る。
これでもし技師本人と知られたら考えただけで恐ろしい。
「ったく、世間を知らねぇお嬢様はお守りのしがいがあるってモノよ」
当人は世間に慣れてきたと思ってる様だが俺から見たらまだまだ。
だからこそ楽しいんだが。
「まったく楽をさせてくれねーなぁシス」
俺の情報にかすりもしねぇ本気の本気で正体不明な1人の女性。
まぁアレで17歳ってのある意味スゲーけどな。
ぱっと見、14、5の少女と言った方がいい様な容姿。
本来の仕草は立派に淑女だが、普段は俺らに合わせる様に砕けた態度を取るからさらに違和感がない。
「それじゃまっ期待には応えてやんねーとだけど…」
そんな娘の様な少女をあそこまで慌てさせた相手。
「下手なことしてやがったらただじゃぁすまさねぇからな」
これが娘を心配する親の気持ちなのか、などと思いつつも店に来ていた数人の情報屋に声をかける。
全員が全員快く首を縦に振ってくれた。
さてさてどんな馬の骨なんだろうなぁ。








そして…









情報は意外と早くに届いた。
シスの言い様から判断して、真っ先に衛兵連中に当たりをつけたのが功をそうした様子。
ただ、もう一つ。
面倒な情報も一緒に入ってきたのだがな。







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