パート4 歩き始める
山口さんの過去を徹底的に調べれば、おそらく、動機は推察できるだろう。
でも、私はそれをしなかった。
本人から聞く以外の方法で知ってはいけないような気がするから。職務怠慢と言われても仕方が無いのだけれど、土足で踏み込んではいけないと、私は思ってしまった。
*
「以上が、調査の結果です」
私は山口秀樹が犯人であった事と彼の語った言葉を、そして彼が自首した事を依頼人の二人に聞かせた。
「どうも、ありがとう」
「……ありがとうございました」
複雑な表情の二人は、それでも、前を向いて、事務所を後にした。
……これで、本当によかったのだろうか?
私が今回したことといえば、ただの推測で、一人の人の人生を奈落の底に叩き落したことだけ。
報告結果だって、二人の知りたかった事にまでは言及していない。
結局、私は……
*
『っぷはぁ〜!』
私とゲンさんは空になった缶を机に叩きつける。
「まだ飲むか?」
「お願いします〜」
私は事務所備え付けの台所へ向かうゲンさんの背中を見ながら、心の中でそっと感謝の言葉を呟く。
――いつも、ありがとう。
ゲンさんの気遣いが、いつもながらに心に染み入るようで。
「あ、おつまみも食べたいです〜」
「おう、任せとけ!」
その日、私はのしかかるやりきれない気持ちを吹き飛ばすかのように、浴びるようにビールを飲みまくり……
めでたく、次の日に二日酔いで倒れました。
とある私立探偵の事件簿・ファイル1 〜百円ショップ殺人事件〜 ――完―― |