とある私立探偵の事件簿・ファイル1 〜百円ショップ殺人事件〜(2/4)PDFで表示縦書き表示RDF


とある私立探偵の事件簿・ファイル1 〜百円ショップ殺人事件〜
作:リート



パート2 集める


 事務所内に、モーター音が響く。
「あー……効くわ〜……」
 あちこちで聞き込みをし、戻ってきたらもう夕方。
 私は一日の疲れを癒すべく、愛用の電動マッサージ機に素足を乗せていた。
「お疲れさん。お茶、飲むか?」
「ありがとー……」
 私はゲンさんからお茶を受け取り、一口すする。
 お茶の香りがすっと鼻を抜けていき、こんがらがりそうになる頭が少しほぐれた気がする。
「さて、やりますか」
 一息入れた私は、集めてきた資料の整理に取り掛かった。
 
   *
 
 資料その一 花子(仮名)さんと太郎(仮名)さんの証言
 
 その日、花子(仮名)さんと太郎(仮名)さんとその母親は、旅行から帰ってきた。
 父親は急に仕事が入ったので、一緒に旅行には行けなかったらしい。
 鍵で家に入ろうとしたら、玄関の鍵が開いていた。
 不審に思って中に入ると、家が荒らされていて、太郎(仮名)さんが、居間で血まみれになって倒れていた父親を発見した。
 母親が取り乱しながらも警察に電話。
 しばらくしてすぐに警察がやってきた。
 そして捜査が始まったが……結局、犯人は見つからずに、現在に至る。
 
 
 資料その二 母親の証言
 
 内容は資料その一と同じ。
 だが、彼女は二人の子ども達とは違い、もう諦めているようだった。
 
 
 資料その三 関係者リスト(ここに書くのは全て仮名)
 
 働いていた会社の上司、鈴木秀孝。
 現在、同じ会社のやり手の営業部長。人望はあるようだ。昔、大学でラグビーをやっていて、被害者の先輩でもあったらしい。
 被害者とのトラブルは抱えていなかったようだ。
 本人からもらえたコメント。
 『時効、か。あれからもう十五年なんだな……』
 
 働いていた会社の部下その一、山口秀樹。
 現在は転職し、輸入関係の会社の部長。最近、海外への長期出張から戻ってきた。法律に詳しく、司法書士の資格を持っている。
 同じく、被害者とのトラブルは無かったようだ。
 本人からもらえたコメント。
 『……時効で捜査は打ち切り、か……。結局、警察は役に立たないな』
 
 働いていた会社の部下その二……岩山和夫
 現在、同じ会社の営業課長。営業成績は良いようだ。高校時代に野球をやっていたらしく、甲子園まで行ったとか。
 被害者とはソリが合わずに、よく対立していたらしい。だが、よく一緒に酒を飲みに行く仲でもあったらしい。
 本人からもらえたコメント。
 『時効になってしまったんですね。……犯人、絶対に見つけてください』
 
 友人その一、春野敏行。
 現在はラーメン屋の店主。そこそこ繁盛していて、ラーメンもおいしかった。被害者とは、高校時代の友人だったらしい。
 被害者には店の開店資金を借りていたが、被害者の死亡後も遺族に残金を払い続け、二年前に完済したらしい。
 本人からもらえたコメント。
 『はっきり言って悔しい。……でも、奥さんや花子(仮名)ちゃん、太郎(仮名)君のほうがもっと悔しいだろうな』
 
 友人その二……東山栄一
 無職。と言うか、五十五歳にして職歴無し。被害者とは、小・中学校時代の友人だったらしい。高校へは進学しなかったが、交友関係はずっと続いていたようだ。
 俗に言うパチプロ。だが、それほど稼いでいるわけでもない。被害者にはよく金を借りていたらしく、未返済額は相当のものらしい。
 本人には会えなかったので。コメント無し。
 
 
 資料その四 当時の部屋の様子

 普通の一軒家。 
 家の中のほとんどが荒らされており、ありとあらゆる家具の引き出しが開けられ、中身が乱雑に放り出されていた。
 押入れの中も同様に荒らされていて、全てが床に放り出されていた。
 特に居間については足の踏み場も無かったようだ。
 
 
 資料その五 関係者のアリバイ
 
 母親と子ども二人は隣県の温泉街まで小旅行。
 鈴木孝雄、山口秀樹、および岩山和夫は自宅で就寝。
 春野敏行はまだ店でラーメンを作っていた。
 東山栄一は居酒屋で仲間と酒を飲んでいた。
 
   *
 
 ふと、目を開く。
 窓の外を見ると、ビルの間から太陽が顔をのぞかせている。どうやら、資料を整理している途中で寝てしまっていたらしい。
「あ……大変……!」
 あわてて立ち上がり、はらりと肩にかかっていた毛布が床に落ちる。
 ――毛布?
 覚えが無い、などと思っていると、不意に事務所のドアが開く。
「起きたか?」
 買い物袋を提げたゲンさんが、入ってきた。
「あ、うん。おはようございます」
「おう、おはようさん。……朝飯、買ってきたぞ。食うか?」
「はい」
 袋の中から出てきたのは、サンドイッチにコーヒー牛乳。
 私はそれを受け取り、まずはサンドイッチの包装紙を破る。
「仕事熱心はいいけどよ、夜更かしは美容の敵だぜ」
「つい、その」
 私はサンドイッチをかじりながらゲンさんを見て、ふと気付く。
「……ゲンさん、帰ってないんですか?」
 おしゃれには気を配るゲンさんが、昨日と同じ服を着ている。
「うら若き乙女を一人残して変えるのもアレだろ?」
「……ごめんなさい」
 私はサンドイッチをかじったまま、素直に頭を下げた。
 
   *
 
 資料その六 気になったこと
 
 プロの手口とは考え辛い程、部屋が荒らされていた事。
 そしてわざわざ百円均一ショップで包丁を購入した事。
 この二つから考えると、おそらく、犯人は最初から被害者を殺すつもりだった。
 
 そしてあの人のコメント。
 だとしたら、犯人は……


 物語の構成の基本は『起・承・転・結』だと言われています。
 筆者は、推理小説にこれを当てはめると、『事件発生・資料集め・事件解決・エピローグ』だと思っていまして。
 パート1は事件発生、そしてこのパート2はまさに資料集めでしたが、いかがでしたでしょうか?
 推理モノとしては致命的な事に、犯人を指し示す物証などは出てきませんでしたが、あれこれ考えて見てください〜。











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