生か死か(8/10)縦書き表示RDF


いやーテストも終わって一気に書いちゃいましたよ(笑衝撃の急展開だと思うんで、感想等あれば書いてくれると俺も嬉しいな。ではでは、お楽しみあれ
生か死か
作:ラグ



第七巻「天使の心、人の心」


――ああ、意識が遠のいていく

この感覚はそうだな、スカイダイビングで逆に空へ上がっていく感じだろうか。わかりにくいかもしれないが当時の俺はそう感じたんだ。しかし、俺はそのどこか別の場所に飛んで行く感覚に陥りながらもその流れに身を任せること以外どうすることもできなかったんだ……


…………


「……どんどこどんどこ」

ここは、どこだ

まだ頭が働かないためか、周りの状況がよくわからない

「……どんどこどこどこ……」

ここは

「……どこどこどこどこどっでっでん!」

雲(?)の上?

「うぇーるかーむ! ようこそ天国と地獄の狭間デッドおあアライブにいらっしゃいやした!」

「……え?」

さっきから太鼓のような声を出していた少女、その少女はいきなり何かをほざき始めた

視界に入れていなかったが身長はちっこく、白髪ロングで淡赤色のワンピになぜか羽が生えている少女。その少女はどこか現実離れしていて……

ってどっからどう見ても天使じゃん!!

ひとりでに驚いていると天使は俺に向かってマジカルステッキ(?)らしきものを突きつけてこう言った

「『え?』じゃねーよ田舎もーん! さっきから言ってんだろ、お前は死んだの、わかる? で、ここでお前がこれから天国に行くか地獄に行くか決めるのさ」

「ハァ! 死んだぁ?! まだ童貞も捨ててないのに?!」

童貞を捨てるどころかまだまだやりたいことがいっぱいあったのに……

「童貞捨てた捨てないは関係ありません」

なんてあの世は厳しいんだ……

ぴら

「うきゅー!!」

「おぉ! いちご柄とはなんとも可愛らしいプリントではないか!」

イチゴ柄パンツに生足はやはり人間界もあの世もいいものよ。そう物思いに(ふけ)っていると小女はスカートを抑えて顔を真っ赤にしながら

「アーウト!! お前死刑! 私のスカートの中を見た時点であんたに未来はないわ!」

なんてぬかしやがった。天使なのに

「そんな、たかだかパンツ見ただけでおおげさな」

「うるせぇこの人間が!! てめぇら低脳な種族に見せるパンツはねぇんだよ!」

結論、天使は結構短気なもんなんだな

そうやって雲の上で天使と討論していると遥か上空からもう一人の天使が舞い降りてきた。長めのツインテールに日に輝く銀色の髪、まだ幼さが残るあどけない表情はまさに天使そのものであることの証明であろう。そしてその天使はこちらに向かいながら

「モナちゃ〜ん!」

と、奈美とためを張るくらいのほんわかボイスで更にスピードを上げて下降してくる。ってかこいつの名前はモナっていうのか

「マリ!! あんたそのままだと死ぬぞ!! ……っもう!」

モナは先ほどの天使とは思えないほどの怖い形相ぎょうそうから一変してマリと呼んだ天使へと飛んでいった

「きいてきいて〜!! ようやく私も天使になれた……って、あ〜!! とまらないよう!」

マリは先ほどからものすごい速度でこちらに飛んできている。多分このまま突っ込んできたら人間は即死だろう(天使はわからないが)

「このスカポンタン! だからあれだけ飛ぶときにはスピードに注意しろって言ったのに!!」

モナはできるだけマリの衝撃を和らげようとマジカルステッキ(?)を一振りして巨大なベットをだし、更にマリを抱きかかえ一緒に落ちてゆくのだった……


…………


いろいろあって一段落した後、三人で輪になって話しをする。人間一人に天使二人という人間史上前代未聞のメンバーで

「……そう、バレンタインのチョコだと思って食べちゃったのが麻薬のほうのチョコであっけなく死んじゃったわけか。バカな奴」

とりあえず俺が死んだ理由を話すとモナという天使は以外にもうなづきながら話を聞いてくれた。とりあえず地獄にいくか天国にいくかはその人間がいかに善い行いをしたかによるらしいのだ

「悲しいです〜、っぐす。多分ルリカさんも報われない、っぐす、恋と知っていながらもうどうすることも、っぐす、できなかったんでしょうねぇ」

マリの方は後半からずっと泣きっぱなしである。そんな理由で殺されたくはなかったがもう殺されてしまったのでどうすることもできない

「……そうか、もう俺は本当にあの世界へは返れないのか」

二人の天使に事の顛末を話したためか、本当に自分が死んだんだっていう自覚が沸いてきた

もうどうすることもできない

この現実は深く精一の胸に突き刺さり、今までの記憶が走馬灯のように沸いてくる

「ま、しょうがないか。これも一つの運命だったんだ」

しょうがない、これはしょうがないことだったんだ

「――とりあえずデッドおあアライブの結果が出たぞ。……おめでとう、悔しいけどお前は天国行きだ」

「っぐす、精一さん、出会ってもうお別れなんて悲しいですぅ」

マジカルステッキから天の字が浮かび上がっている。なるほど、俺はとりあえず今まで悪い行いはしていなかったということになるのか

「いでよ天のアライブゲート!!」

モナがマジカルステッキを一振りすると『てんごく』と書かれた大きな門が雲の中から現れた

「とりあえずこの門をくぐればお前は天国に行けるぞ。……そうだ、マリ、門の開閉役はお前に任せる。天使になって初めての仕事だぞ」

どうやらこのマリという天使は天使になりたての新人さんということらしい。そのマリはというと

「っぐす、お別れなんて悲しいですぅ〜」

とかなんとかいってさっきから涙をぬぐうので精一杯のようだ

「しっかりしろよ! あんた初めからこんなんだったら天使の役目勤まらないじゃん!」

「だってぇ〜」

なんか天使同士で争い始めてしまった。モナはマリに仕事をしてもらって一人前の天使になりなさいというが大してマリの方はいやいやと頭を振るばかりだ

「っもう! マリなんか知らない!! わかった、じゃあ私が開けちゃうわよ!」

「いや〜!!」

そういって天のアライブゲートに近寄るモナにラグビー部さながらのタックルがモナへ直撃する

「ダメ! 人を殺すなんていくらモナちゃんでも許せない!」

「あー! こいつはもう死んでるんだって何回言わせればすむんじゃあ!」

どうやらラウンド2が始まってしまったらしい。しょうがない、ここは俺が行く番だろう

「ねぇ、ちょっといいかな」

「ふぇ?」

「なによ!」

両者対称な答えが返ってきた。俺は話を続ける

「俺はもう死んでしまったことに後悔はしていない。だから、もういいんだ。せめて天国にいけただけでも幸せ者さ」

本当のところはすっげー後悔しているけどしょうがない。もうどうにもくつがえらないこの状況としてはこの二人の美少女の争いなんかを見ているより、さっさと天国にでも行ってしまったほうがよりよいだろう

「精一さん……」

「ふん、初めからそういっていればいいのよ。これがだから人間は低脳なんだよな」

「おう、今まで悪かったな二人とも」

ついに観念したのかマリは涙を必死にぬぐって

「わかりました。じゃあ私が精一さんを責任もって天国に送ります」

と言ってきた。その後モナは呆れ顔でマリに鍵を手渡し、門を開ける説明をする

「やっと決心がついたのね。鍵穴に鍵を入れて回せば天国への道が開かれるから頑張って仕事をこなしなさい」

「うん、わかった」

今でははっきりと応対をするマリの顔は正真正銘『天使』の顔をしていた

「では精一さん、行きましょう」

「……ああ」


…………


もう少しで俺は天国に行くのか。天国というのは噂に聞いたとおり楽しいところなのだろうか

「……一さん」

もしかしたら空飛ぶペンギンなんかもいるかもわかんないし、絶世の美女なんかもいるかもわからないな。うん、そう考えると天国も悪いところではなさそうだ

「精一さん!」

「あ、ああ、何だ?」

「もう門の前です。相当悩んでいるように見えましたよ?」

すでに俺の目の前には大きな門がそびえ立っている。鍵を門の鍵穴に差し込みながらマリはこんな質問をしてきた

「精一さん、さっきの話の続きで悪いんですけど本当に死んでしまったことに後悔してないんですか?」

どうやら先ほどの説明では満足してくれなかったらしい。っていうか後悔しているから生き返るというわけでもないし、一体なんだというのだろうか

「実は、たった一つだけ生き返る方法があるのです」

「!!」

予想外のマリからの言葉に心底驚いた俺はマリに詰め寄る

「なんだ! あるんじゃないか生き返る方法が! ぜひぜひ教えてくれ!」

「ほら、そんなに詰め寄ってくるってことは後悔してるってことじゃないですか」

「っう……」

どうやら俺はマリの誘導尋問に引っかかってしまったらしい。そうか、生き返る方法なんてあるわけがないよな……

「でも、ちゃんと生き返る方法はあるんですよ?」

「どうせ嘘だろ? 俺をぬか喜びさせるぐらいならさっさと天国にでも送ってくれ」

もうマリのいたずらにはついていけない。そう思った俺はそんな言葉を口にしていた

「あうあう、先ほどのあれはすいませんです。未練もないのに生き返らしちゃうのはしょうがないと思って……でもちゃんとあることにはあるんですよ!」

「ほんとうに?」

「ほんとうですから信じてください〜!」

まだ疑わしい俺の動作を見てか、泣きそうになりながらも本当だと訴えるマリ。その表情は人間となんら変わりない威力があった

「じゃあなんでさっさと俺を生き返らせなかったんだ?」

とりあえずあたりまえの理由を聞いてみることにする。やっぱり天使がほいほい人間を生き返らせることができるようじゃそれはそれでこの世界は今頃大変なことになっているだろう

「理由は話せません。ですが精一さんが望むのなら生き返らしてあげますよ?」

泣き顔から急に笑顔になるマリ。そんな表情に嘘偽りを言っているようなものは微塵もなく、やはり嘘ではなく本当に生き返られるのだという風に思えた

「そうか……、じゃあお願いしようかな」

「はい!! 天使初めての仕事なんで精一杯頑張ります!!」

そういうとマリはマジカルステッキを空中から取り出すとなにやらよくわからない詠唱を唱え始めた

「@ぽいうjhbvfれs234r5fgひゅい90おpl;kjhgt5えdcfghjklkjhgtrf……」

マリの体から光の粒が飛び散り始めマリの体を覆っていく

「wsdfぎゅいおp;lkじゅ765rfgひおp;lhgfr44え……」

そんな神秘的ともいえる光景に圧倒されていると、俺たちが来た方角から何か白い物体がもの凄い勢いで飛んできた

「あーー!! マリったら遅いから何してんだよとか思ってたら大変なことを!!」

どうやらすっ飛んできたのはモナだったようだ。なにやら切羽詰った様子で光り輝くマリを見つめている

「どうしたんだ? マリは俺を生き返らすために呪文か何かを唱えているだけだぞ?」

「それが問題なんだっていう話なんだよこのボケナスがぁ! 天界の中ではやってはいけない掟が複数あって、その中に『死人をよみがえらさないこと』っていうのがあるの。その掟を破ったら天使の称号を剥奪はくだつされて更にその生き返らした種族になってそいつと生涯を共に生きなければならないなんていういうなれば天界の死刑みたいなものにあたるのよ!」

「fghjkmんbfr4wsdふゅいおlkgfrfvhjkl、mんbぢゅい……」

モナが一方的に説明してきたので何を言っているのか一瞬考えてしまったが、つまりは俺のせいで『マリが死刑になる』らしいことのようだ

「そ、そんな……。なんとかならないのか?」

さすがにそれはまずい。そうか、そういわれてみれば何で最初の方にさっさと俺を助けてくれなかったのか説明がつく。マリは助けなかったんじゃない、『助けたかったけど助けられなかった』んだ

「何とかするしかないでしょ!! こうなったら力尽くでも止めなきゃ!」

少女の力とは思えないほどもの凄い勢いでマジカルステッキをマリに叩きつける。が、それはマリの周りから放たれる光によって押し返されるばかりだ

「あー、もう! マリ、あんたなにやってんのかわかってやってるんでしょうね!! こんなバカな人間のために自分の生涯を捧げるなんてどうかしてるわよ!」

何度も何度も力任せにマジカルステッキをマリに叩きつけるがその全てをマリの光が押し返す

「gkvtrfdgjkmんvkmんvy……ALL COMPLETE。私の天使としての全ての力を神ゼウスに捧げることにより、マリの名の下に遠山 精一の御霊を現世に呼び戻したまへ……」

マリの体から先ほどにも増して光の粒が放出される。その絵は聖母マリアを思わせるほどだ

「やめてマリ! なんで……、なんでこんなやつのためなんかに……」

モナは泣きじゃくりながらマリをぶったたいているが、効果はいうまでもないようだ

「……マリ、お前なんで本当のことを言わなかったんだ?」

そう、俺を生き返らすことによって死刑になるのだと言っていれば俺は全力で反対しただろう。もしやそれを知ってのマリの行為だったのかも知れないが……

「ふふ、それは精一さんと現世で会った時にでもお話しましょう。……でも、しいて言うなら私には天使は向いてなかったのかも知れないからかな」

光の粒はマリの足元から徐々に、しかし確実に神に送られているようだ。この調子では体全部送られるまでそう時間はない、そうはいうが何もできない自分

「マリ!! だめ、いっちゃダメぇーーーーーー!!」

「マリ……」

光の粒を触ってみるが、手をすり抜け遥か上空に飛んでいってしまう

この天使は何の因果があって俺を助けようとしているのだろう?

何でそこまで?

何で……

精一が悩んでいる間に刻一刻とマリの体は光の粒となってふわり、ふわりと上空へ飛んでいく。もう頭の部分まで光り始め、あと数十秒後には消え去っていることだろう

「精一さん」

それなのにも関わらずマリは相変わらず笑顔だ。こんな笑顔ができるなんてあいつしかできないと思っていたのに……

「……なんだ?」

俺はマリの呼びかけに答えることしかできない。この罪滅ぼしのためなら俺はどんなことでもやっていただろう。だが、今のマリの顔を見ていると何をやってもはばかられそうだったんだ

「今度は現世でまた、会いましょうね。モナ、今までありがとう、さようなら」

そういうとマリの顔は一瞬にして光に包まれ粒となって上空に飛んでいってしまった。後に残ったのは泣きながらうなだれているモナと呆然と突っ立っていることしかできない俺しかいなかった……


…………


「先輩、返事はルリカが作ったこのチョコを一口だけでも食べてからにしてくれないですか?」

気がつくと俺は可愛いキャラクターがプリントされた紙箱を抱えながら夕焼けの色があたりを侵食している部室にいた。つまり

「時が、戻った?」

「何を言ってるんですか先輩? もしかしてルリカが作ったチョコ食べたくないんですか?」

なんていうことだ、どうやらマリの命がけの魔法で俺を生き返らせたらしい。いや、今までのことは全て夢だったのかもしれない

「あ、ああ、ごめんな」

そういってルリカの作ったチョコを取る俺。本当に丹精こめて作ったんだと思われる一口サイズのチョコ。本当にこんなチョコに麻薬なんか入っていたのだろうか?

「っぐす、そんな毒でも入っているかのように見つめるなんて本当に食べたくないんですね……」

「い、いや、食べる! 食べるから泣かないでくれ!」

まるでさっきまで起こっていたことが夢のように思えた俺は、泣き顔のルリカに耐え切れなくなって一口サイズのチョコを手に取り口に放り込んでしまった。味の方は、かみ締めるごとに口の中に甘さが広がり、それは俺への愛情がどれだけあるかを示しているようでもあるかのような味だ。そう、『俺が死ぬ前に食べたチョコ』のように

「ねぇ、先輩。知ってます?」

俺がチョコを食べるのを終始見届けていたルリカは、俺が食べ終わるのがわかるとにっこりと笑って突然意味のわからない質問をしてきた

「ん? 何がだ?」

いや、意味はわかる。だって、この展開は俺が死ぬ前となんら変わりがないからである

返事を返してからようやく気づいた。もしやとは思っていたが、先ほどのあれはどうやら夢ではなかったのだ。時すでに遅し、俺はもはやチョコを飲み込んでしまっている。多分この後の展開は……

しかし、次の瞬間信じられない言葉がルリカの口から告げられるのだった

「バレンタインのチョコは、愛があれば一級のパティシエにも勝るほど極上の味になるんですよ」

「……っう、ッグ!!」

チョコをのどに流し込んでから約十秒たった後、なんとも甘く切ない気持ちが精一の脳内を侵食する

「こ、これは……」

「どうですか先輩!! これが私が今までずっと開発していた『必殺恋愛チョコ』です!」

その感じはもはや言葉にも表せられないほどの感情で、俺の顔から一気に涙がでてくる

この味は、そんな味だった

「……うまい」

「へ?」

「うまいよルリカ、上出来だ」

耐え切れずルリカを抱きとめ泣きじゃくってしまう俺。なんでこんなに嬉しいのか、何でこんなに悲しいのかわからなかったがとにかく泣いた、泣きはらした。ルリカは終始不思議そうな顔をしていたが気持ちよさそうに俺の抱擁を受け止めていた

「好きだ。付き合おう」


…………


学校の屋上、そこには淡々と過去のことを語る少年と、静かにうなづきながら話を聴いている少女がいた

「……そうしてあの日からチョコという麻薬はなくなり、ルリカが日本へ帰るまでの二週間いろんなことをした。あいつは嫌がっていたが、一緒にパティを作ったりな。でも俺が言いたいのはそんなことじゃないんだ」

静かに自分の腕時計を見ながら少年は話す

「あいつといる時、つねに『何か』が足りなかった。そう、俺の中で決定的な『何か』だ。これは言葉で説明するのは難しいが、奈美、お前に会ったときも同様だ」

「やめて! そんな言葉で言い繕わないで! 天使に会ったなんて全部嘘なんでしょ! そんないい方じゃ私は良いとしてもルリカって子が可愛そすぎるよ!!」

まぁ奈美の言うことももっともだろう。いや、正直に俺が一方的に悪いのは確かだ。しかし俺には何かが足りないのもこれまた確かなのである

俺はもう一度腕時計の秒針を見つめると奈美に提案をする

「……わかった。しかし、後三十秒待ってくれ。それで天使が現れなかったら俺は全身全霊をもって謝罪をしよう。だが、もし現れたらその時は……」

うろ覚えの記憶だが、最後にモナからマリがこっちにくる時間を聞いておいたのだ(信憑性は疑われるが)

「いいよ! もうそんなせっちゃんなんか見たくない、がっかりしたよ!」

「おい! 俺のいうことを少しだけでも信じてくれ!」

俺は帰ろうとする奈美の手を強引に引っ張ってこちらに振り向かせる

「な、んで、わたし、より、そんなありも、しない、天使なんかを、優先するの?」

奈美はもうどん底まで落っこちてしまっているのか、もはや顔には生気は見られない

「いや、俺はただ本当に死んだのかを確かめたいのと、この足りない気持ちは何なのかを確かめたいだけなんだ」

本当のことを言っているはずなのになぜ信じてもらえないのか。理由は明白だが、奈美には、奈美だけには信じてもらいたかったのだ

「頼む、お前にだけはいつか話したかった、この話を信じて欲しかったんだ」

俺は泣きながら奈美に抱きつく。信じて欲しかったのと、今までの非礼をわびたかったからだ

「せっちゃん……。わかった、そこまでせっちゃんがいうなら奈美は信じるよ。うん、信じる。だってせっちゃんを信じる以外に奈美に生きる道はないんだもん。いくらせっちゃんの頭がおかしくなっていたって奈美はせっちゃんのことを一生信じて生きていくからね」

「っおま、俺の頭はとりあえず正常だ!」

でもとりあえずは信じてもらえたらしい、後は天使が来るのを待つだけだ。俺は奈美への抱擁を解き、カウントダウンを始めることにする

「10、9、8、7……」

来るとはいってもどのように来るのかは想像ができないのでとりあえずあたりを見回すが何もない

「せっちゃん、正常な人は屋上で天使のカウントダウンなんかしないよ……」

「うるしゃい! 黙って見てろよ! ……4、3、2、1」

瞬間、精一の頭上から光の粒子が集まり始め、少女の形を形成していく。その姿はマリの最後の時の光り方に似ていたが、唯一違うのは別れの光じゃなく今度は出会いの光であるということだろうか

「ゼロだ!」

形成し終えた光の粒子は一人の少女を残してはじき飛び、その少女は精一の胸元へ落ちてゆく

「精一さ〜ん! お久しぶりです〜!」

ミルクのような甘ったるい香りを漂わせながら抱きついてくる一人の少女は前に見た翼もマジカルステッキも持っていなかったが、そのあまりにもの登場シーンにさすがの奈美も天使がいると納得せざるおえなくなっただろう。ぽかーんとした目でその少女を見つめることしかできないでいる

「ほぅら、天使はいただろ?」

精一は得意げな顔で奈美を見た



――ねぇ、天使っているの?

さぁ、どうなのかな。僕は天使でも神様でもないからわからないな

――じゃあ天使か神様になってよ

はは、それは良いアイディアだ

――じゃあなってくれるの?

いいや、それはできない。なるんだったら君がなるといいさ

――なるほど、それは良いアイディアだ

ふふふ、だろう?












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