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澪との絡みは薄い。ってか奈美の出番が……
生か死か
作:ラグ



第四巻・下巻「アニマルコンビ-そんなはずありませんわ!-」


「それでは今日のホームルームを終わる」

あの一騒動が終わった後は特に目立ったことはなく放課後になった

「きりーつ、きょうつけー、れい」

放課後の時間の生徒というものはそのまま家に帰り高校二年生という貴重な青春の時間を無碍むげに過ごすものや、部活という青春に注いでいるものと、実に多種多様だ

いつもの私なら速攻で教室から出て行き、校庭の北端にあるペット小屋にて動物たちとたわむれる手筈てはずなのだが

「あ〜う〜」

どうにも私こと如月澪は憂鬱ゆううつであった。そう、原因は私以外の生き物係があいつのため

1・確実といっていいほど生き物の世話ができなさそう
2・あいつがいたんじゃ思うように動物と戯れられない
3・見ているだけで嫌気が差してくる

以上、三つの理由から私の憂鬱はきている

「はぁ……、でも決まっちゃったものはいつまでもくよくよしててもしかたないわね」

なんで奈美はあいつの事なんか好きでいられるのだろうか。確かに私はあいつとあまり話したことはないからまだ幾許いくばくかの評価は上がるかもしれない。しかし、あの奈美はあいつの為に三年間も待っていたのだ。しかも無理益で

ありえない

高校一年生のとき、どんなカッコいい男でも面白い男でも優しい男でも告白された時には奈美はきっぱりと一言

「にはは〜、ほんとごめんごめんなんだけど、無理。一回自分の顔を鏡で見てみたらどうかな?」

と、いままでのほんわかした雰囲気とはま逆の反応をとった

そして、それが災いしたのかこの学校中の生徒が一時期皆奈美にはまっていた時期(俗に第一次奈美ちゃん世代といわれる)もあったのだ

そんな奈美が思い続ける男……

「お〜い、みおちゃ〜ん!」

どんな男かと思ったら

「どうしたのよ、そんな憂鬱そうな顔しちゃって」

こんな変態野郎だったなんて

「あんたとこれから仕事をこなしていかなきゃならないと思うと憂鬱なのよ」

正直にいう。別に嫌われてもかまわないからだ

「それは俺といるとあんなことやこんなことを想像して何も手がつかないということかな」

「んなわけないでしょ! このバカ!」

ズガガガガガガガガガガ

「ぉお! あれは幻のお嬢百列拳! アレを喰らった者は三日三晩恐怖により眠れなくなるという……」

外野の目を気にしない澪の一撃一撃は完全に精一に入る

「ぐぁ、はぁ、はぁ……あぁ!」

精一は頬が紅葉もみいじ色に染まり始め、パワーが中心部に集まってゆくのを感じた

「気色悪い声を出すなぁぁぁぁぁぁぁ!」

止めの一撃はカカト落とし。男子では到底不可能な高さからの一撃である

「あふぅ!」

さすがの精一もついに耐え切れなかったのか悲鳴(?)のような声をあげ崩れ去った

「はぁ、はぁ、はぁ……つ、疲れる」

なんていう耐久力、この丈夫さだけは賞賛に値するわ

「さて、そろそろ行かないと……」

こいつ(精一)は放っといて行ってしまおう。そう思った矢先

「俺をおいてどこに行くつもりですかな、お嬢さん?」

「!!! なんであんた無事なのよ!」

教室の扉の前にはあからさまにキザっぽく演出している精一の姿。確かにカカト落としは決めたはずなのに……

ふっ、とさっきまで精一が倒れていたところを見ると……

「あふぅ、あふぅ……、お嬢の一撃ってのも悪くはないかも……」

確か隣のクラスにいた田中が床の上に寝そべりながら悶えていた。……って、っうわ。見なきゃ良かった

「これぞ変わり身の術、数々の修羅場を潜り抜けてきた私には先ほどの攻撃は通じないのだよ」

髪を掻き分けながら得意げに話す精一。こういうタイプは今まで生きてきて見たことがなかった

「はぁ……、はいはい、降参降参、じゃあ飼育小屋に行きましょう」

もうこうなってしまってはしょうがない。できる限りこいつには仕事をやらせないようにしよう。そう覚悟を決めて、いざ、飼育小屋に

…………

「……おぉ〜! なんかすげぇな〜!」

「一応、ここが如月高校の飼育小屋よ」

大型(相当でかい)飼育小屋の中では犬、猫、鶏、ヤギ、牛など多種多様の生き物がのほほんと暮らしていた。どれも野生育ちではできない平和そうな顔だ

「とりあえす今日は各学年ごとに分かれてどのクラスが何曜日に飼育を担当するかの取り決めを行うのよ」

そう言いながら澪は他のクラスの飼育委員を探し始める

「あ、いたいた。お〜い! 夏美なつみ〜!」

夏美と呼ばれた少女はこちらを振り向き挨拶してきた

「あら、澪さんじゃないですか。やっぱり今学期も飼育委員なんですね」

にこっ

笑顔が似合うロング黒髪の少女。身長は155cmぐらいだろうか。顔が童顔のためか凄い優しそうな顔立ちである

「そうよ。やっぱりこの委員だけははずせないわ」

「ふふ、澪さんらしいわね。……あら? そちらの方は澪さんのクラスメイトですか?」

にこにこっ

どこまでもやわらかな笑顔。今まで黙っていた俺だがさすがに男だったらこの笑顔に答えねばなるまい

「どもども、いやぁ、奇遇ですねぇ。まさか夏美さんも飼育委員だったなんて」

にたぁ

やべ、ついついにやけ顔になってしまった。ここは冷静に切り落とさなくては……

「? あの……、失礼ですが私たちってどこかでお会いしましたっけ?」

当初の予想どうり夏美という人は困った顔をこちらに向けている。ここで一気にたたみ掛けるのだ

「まさか!? 夏美さんともあろうものがこの遠山精一の名前を忘れたとは言わないでしょう!? 俺はこんなに長い間返事を待っていたと言うのに!」

これぞ『知らない人だけどノリで一気に仲良くなってしまおう作戦』、この作戦にかからば皆俺のとりこになると言う……

ま、今初めて使ったんだけどね

「あんたはバカか!」

っと俺と夏美さんが楽しく会話しているところで邪魔者が入る

「夏美、この人は相当ヤバイ人だからあんま関わんない方がいいよ。ってか絶対関わらないで!!」

夏美さんを守るように詰め寄り、俺と夏美さんの距離を置こうとする澪

「何を言う! こんなユニークなコミニュケーションの仕方も知らないで、お前は人生で何を今まで学んできたんだ!」

まったく、これだからお嬢様育ちってのは……

「残念ながら私が暮らしてたアメリカでもこんなコミュニケーションはなかったわ!」

「とおやま……せいいち……」

俺と澪が見苦しい口げんかをしている間中、夏美さんはさっきから小さい声でぶつぶつとつぶやいていた。何か気を触れることでも言ってしまっただろうか

「……そういえば夏美、そういえば他の皆はどこ行ったの?」

澪が気を取り直して夏美さんに質問する。そういえば澪の言うとおり他の飼育委員の姿が見えない

「……っえ! あ、ああ、そうですわ。話し合いは急遽きゅうきょ教室でやることになりまして、私は連絡漏れでこちらに来た人にそのことを伝えにきたんですの」

急に話を夏美さんにむけたからだろうか、あたふたしながらの返答が帰ってきた

「そうだったんだ。ったくあの先生ったら何にも言ってなかったじゃないのよ」

腕組みをしてご立腹の様子のお嬢様。夏美さんはそれを予想していたのかほほえましい目で澪を見ている

「つまり俺たちは無駄足だったってわけだな」

「はぁ……そうみたいね。夏美、じゃあ私たち先に教室に行ってるわよ」

「はい、わかりました」

そうして今しがた来た道を折り返し始める精一と澪

「まったく、お嬢様のうっかりミスも大概にして欲しいものだな……」

やれやれのポーズ&ため息をつくという人を怒らせる常套手段じょうとうしゅだんを得意げに披露する精一

「なによ〜、今回は全然私のせいじゃないでしょ!」

それに澪はやはり突っかかってきた

「はっはっは、そんなにいちいち怒鳴っていては動物は寄り付かんぞ」

そんな二人の後姿を見て夏美は一人首を傾げながら

「澪さんにあんなに仲がいい男性っていたかしら……?」

と、一言だけつぶやいた


…………


一学期の時に飼育委員の委員長だったらしい夏美さんが教壇の上に上がり話し始める

「え〜、ではこれよりメンバーおよびシフトの調整をしたいと思いますわ。一学期はクラス別のメンバーにしシフトだけ決めていましたが、今回はこちらの都合上メンバーも公平に選びそれからシフトを決める方式でいきます」

思いもよらなかった展開に一同騒然とした。だって

「やったー! これでこいつ(精一)と一緒に飼育委員やらなくてすむ!!」

という人と

「もしかしたらあの憧れのお嬢(澪)と一緒にペットの世話が出来るかも!」

という人がいたからだ

「静粛にしてくださいな。……はい、では只今からクジを皆さんに引いてもらうので名前を呼ばれた方は前の方に出てきてください……」

どこから出したのかわからないが『くじばこ』と柔らかなタッチで書かれたメルヘンチックな箱を取り出した夏美さん

「なんとしてでもこいつと一緒だけは避けなきゃ!! どうか神様、お願い!」

俺の隣では神に拝む少女が一人。まったく、そんなに俺となるのが嫌かねぇ……

―――それから三十分後

「嫌だっていってんでしょ!! なんで私がこいつとなんて!!」

「そんなこと言われましても、なんせクジで決めたことですし……」

「そうだぞ澪、おとなしく一緒に……」

―――さらに三十分後

「だからなんでこいつなのよ!! 意味がわからないじゃない!」

「澪さんがどうしてもって言うからアミダにしたんですのよ?」

「そうそう、もう二回も引いて全部俺を引いてるんだから諦めて……」

―――さらに十五分後

「あーーー! もぉーーーー!! ウキーーーーーー!」

―――そして一時間後

「では、明日からこのメンバーとこのシフトでやっていきます。くれぐれも協力しあって動物を飼育すること、ちゃんと動物を飼うんだっていう責任の下飼育すること。では、解散!」

夏美委員長の掛け声と共に当初一時間で終わるはずの会議が二時間十五分もかかりようやく終わりを迎えた。原因は当然のごとく

「あ〜う〜」

この憂鬱そうなお嬢様、如月澪にあった

「大丈夫ですか澪さん? なんか生気が感じられませんが……」

心配して声を掛けてくれた夏美。が、すぐにあいつも声をかけてきた

「ノンノン夏美さん、今澪はこの後の俺との淫靡いんびな飼育を想像して舞い上がっているのですから話しかけるのは野暮ってものですよ」

「あら、そうでしたか……」

「ちっがぁーーーう!!」

机を壮大に叩きながらの抗議。夏美はあらあら、という顔で澪を見ている

「はぁ……、もう疲れたから私は帰るわ。夏美はどうすんの?」

「そうですわねぇ……私もこの書類を先生に届けてから帰りますわ」

少し考えてから委員会でまとまったことを出す書類をこちらに見せながら話す夏美さん

「そう? じゃあ一緒についていってあげるから一緒に帰りましょ。あ、ちなみにあんたは絶対ダメだかんね!」

そう言いながらこちらを恐ろしい形相でにらむ澪、常人ならその眼力だけで逝ってしまうだろう

「む、そんなこと言われるとついていきたくなっちゃうのが……」

「ぜっっっっっっっったいダメだかんね!!」

あぁ、少し逝ってしまったかもしれない

「くっ……、まぁいい。今度からはゆっくりじっくり二人の時間があると思うとこの下校というのも微々たるものに思えてくるからな」

「くそぉ〜、このド変態M野郎め!」

「では精一さん、またお会いしましょう」

このコントは終わらないと思ったのか夏美さんは笑顔を崩さず澪の手を引いてさっさと教室から出て行ってしまった

「……しゃあない、俺も帰りますか」

そういって昇降口に行くとある意外な人物がそこにはいた。帽子をかぶっているその人物はこちらに気がつくと手を振りながら

「せんぱ〜い!!」

と声をかけてきた

「あれ〜? ルリカじゃん! お前今までずっとまってたのか?」

夕日をバックに佇むルリカの姿は絵になっていたがいったい何時間待たせてしまったんだろうか。ルリカは少し頬を膨らませながら答える

「はい、合計ニ時間三十六分四十六秒です。この罪は私じゃなかったら家までおんぶで送るの刑でしたよ」

秒数まできちんと答える辺りがとてもルリカらしい。多分ずっと時計を眺めながら俺を待っていたんだろう

「お〜、それは良かった。じゃあお前だとどうなるんだ?」

だからしょうがなくのってやることにする。要望は大体想像がつくからだ

「なぁに、簡単なことですよ。それは私と毎朝一緒に登校すること!」

得意げに親指をビシッ! とたてながら話すルリカ

「それは今朝のヤンキーが怖くなったからか?」

「ギクッ!!」

すかさずの的確な突っ込みで思わず声をあげたルリカ

「い、いや、違いますよもぅ。ルリカはただ単に女に恵まれない先輩に少しでも女運を上げようとですね……」

夕日のおかげで表情があまり読み取れない(帽子をかぶってるせいもある)が、多分慌てふためいていることだろう

「? そういやなんで帽子なんかかぶってるんだ? お前は素顔の方が可愛いだろうに」

そういって帽子を取ろうとした瞬間

「い、いや! ダメダメです! 素顔は明日にしてください! 今日だけはご勘弁を!!」

と、突然テンパリ始めたルリカ。……これは何かあるな

「ん〜、なんか怪しいなぁ? どれ! 少し見せてみろ!!」

「あ〜れ〜!」

無理やりルリカの帽子をはいでしまう俺。淡赤色の綺麗な髪が流れ、刹那女の子独特の匂いが周囲に舞う

「…………」

もう世界が終わったというおもむきでうつむくルリカ。その表情は……

「お前、相当泣いたな?」

めっちゃ目が赤かった(そして腫れまくってた)

「………だって」

「まったく、しょうがない奴だなぁお前は」

「……だってだって」

「いつまでも泣き虫なんだから」

「だってだってだって!! 先輩と別れた後すっごい怖かったんですもん! すっごい寂しかったんですもん! 恋する乙女は相当敏感なんですよ! そんなことも察知できないでどうするんですか! 今だって本当に先輩は来るかどうかすっごい不安だったんですから! ほら! このパティのぼろぼろ加減見てみてくださいよ! 何度も何度も握り締めて待ってたんですから!」

どうやらルリカにスイッチが入ってしまったらしい。しかもだいぶ開き直ってるバージョンだ

「それを先輩は何も考えずにルリカの帽子取っちゃうし! もうこの繊細な乙女心はずたぼろですよ! 大体先輩は……」

う〜ん、確かにこの行為は軽率だったのかもしれないな、もう少し優しく帽子を取るべきだったか。だったら……

「じゃあ俺がお前をおんぶして家まで送り届けるって事で今回は見逃してくれ」

そういいながらルリカを無理やりおんぶする。こういう時は機会を逃さないためさっさとするのが一番だ

「しょうがないですね! じゃあもうそれで許してあげます! ……って、え? ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと先輩! 何してるんですか!」

「え? おんぶ」

「『え? おんぶ』じゃないですよ! ほら、皆見てるじゃないですか!」

ルリカの言うとおり遠巻きに見ている人はいるが気にしない。俺はやったことは最後までやり遂げる男だからだ。それに……

「っふ」

「そんな満足げな顔されても困ります〜!」

こいつもそれなりに楽しんでいるだろうから


…………


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

ここは私の家の前、あの後みんなの視線を背にここまでおんぶでやってきたのだ

「どうしたルリカ、俺がせっかくおんぶしてやったのにお前がそんなに疲れてたら意味ないだろ」

先輩は疲れの一つも見せず私に話しかける

「はぁ、はぁ、ルリカは、恥ずかしさで、死ぬかと思いましたよ。ってか先輩は何でそんなに平気そうなんですか?」

「う〜ん、一つはおんぶする相手がルリカだったって事と、お前が相当軽かったって事かな」

それはどういう理由なんだろう? 本当にこの先輩は考えていることがよくわからない

「よく公衆の面前であんなことが出来ますよね」

よくわからないけど

「惚れ直したか?」

「直すも何もルリカは最初からMAXに惚れてますよ……」

この先輩におんぶされて高ぶったこの気持ちはどうにもならない事柄だった

そして

「ん?」

もう日は落ちて暗くなっている中で、気付いたら私は先輩に抱きついていた

「先輩、今日は朝からいろいろとありがとうございました。今日はある意味ルリカにとって忘れない日になりそうです」

「ああ、俺も今日は楽しかったよ」

「…………」

そうして無言の時間が流れる。先輩は私が抱きついている間ずっと頭をなでてくれていて凄い嬉しかったけど、気付いたらさすがにもう帰らなくてはならない時間になっていた

「じゃあ先輩、明日会いましょう」

そういって私は先輩の腰に回してる腕を解く。凄く寂しい気分になったけれどしょうがない

「ああ、ルリカ、また明日」

そうして自分の家の方向に歩き出す先輩

「ふぅ……先輩に、おんぶ、か……」

今日は最高の一日だった

だが、しかし今日、私にとって最高に楽しい一日となった今日は、まもなく私にとって最低な悲しい一日になるのだった……


きらきらきらきら星が照り

ぎらぎらぎらぎら目が光る

この少年の未来は生か死か?

それは、誰にもわからない












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