第一巻「パンツDEスタート」
只今2007年の夏休み明け、ここはある私立高校の道すがら
緑桜茂るこの道を、生徒達が歩いてく。約一ヵ月半ぶりということもあり、久しぶりに会う生徒たちの雑音で道は溢れていた
そんな夏休み明け恒例の行事ともいえる最中、獲物を狙った飢えた狼のごとき男が一匹舞い降りる
ヒュ
「キャー!!」
青空の下、優雅に舞う女子高生のスカート。何事が起こったか理解できないあまりに悲鳴しか上げることを許されない女子と、その困り顔を見ながら一人興奮する俺
「おお! 桃色の淡い配色、夏休み明けで曇っていた俺の目には眩しすぎるぜ!」
バチーン!!
「やめてよ! この変態!!」
ようやくわれに返った女子高生はその手のひらで俺の顔に容赦ない一撃を加えた。が、
「……くっ、いい! 実にいい! そのスナップの利いた手! その憎悪の籠もった眼差し!
カ・イ・カ・ン」
その程度ではひるむことはなく、逆に手をとって頬ずりしてしまう。最近の女子高生はハンドクリームでも常備しているのか相当柔らかく、それでいてすべらかだった
「い、い、イヤー!!」
ダーー
やはりというべきか、獲物は逃げてしまった
「ふむ、中々今のは上玉だったな……、やっぱ苦労して私立に転校しただけあるぜ」
懐かしい雰囲気に顔を和ませる。そう、三年前まで俺はこの町に住んでいたのだ。だが、親父の仕事の都合で急遽アメリカに行くことになり、いつ戻ってこれるかもわからない状態が三年間も続いてしまった
しかし、運良く親父の仕事が終わったのでまた日本に戻ってきたってわけだ
「三年振りか……」
思わずほくそ笑み、昔のことを思い出してしまう
…………
俺にはこの町に親友と呼べる友人と、幼馴染だったが中学に入ってから付き合った恋人がいた。まぁ、いたっつっても中二の恋、手を繋いでランララーン程度だけどな
しかし、俺はその関係でも十分満足し、満ち足りた毎日を送っていたのだ。まぁ、正直言うと身も心も繋ぎたかったのは内緒である
そうこうしているうちに急遽俺が親父の会社の都合で引っ越してしまうことになった。いきなりのことだったから俺は一週間悩んだ挙げ句、俺と別れて別の男とあいつはつき合うべきと判断し、別れ話を持ち出したのだ……
「……っぐす、なんで? 奈美が可愛くないからいけないの? せっちゃん可愛い娘好きだもんね?」
ある程度予想していたとおり、奈美は俺が別れ話を持ちかけたとたんに泣きそうな顔で理由を求めてきた。俺がその時に思っていたことはただひとつ、
っくそ、何が嫌でこいつと別れなきゃいけないんだ……
ということだけである。だが、この引越しのこと自体を変えられる力は今の俺にはなく、なすすべもないまま奈美と別れるしかなかったのだ
「あぁ、そうだよ……」
理由は考えていなかったので、正直奈美が提示してきてくれたから助かった。しかし、俺の口から、その……
別れよう
なんて言葉はすんなり出てくるはずもなく、その後の言葉をつなげようにも中々声にはならなかった。しかし、言わなくてはならない、声として奈美に発信しなくてはならない
「お前、が、可愛くないから、別……」
その葛藤からだろう。決して本心ではないその言葉、できるなら言いたくもないその言葉を発する前に俺は既に泣きそうだった
が、俺が全てを喋る前に奈美が口を開いた
「わかったよせっちゃん」
この時俺の中で何かが終わったような予感がした。いや、もう数分後には実際終わっているのだろう
「そうだよね、奈美可愛くないし話も面白くないし、嫌だったよね?」
違う
ちがう
チガウ
頭の中では反論するも思うように声にならない。いや、都合上ここで反論してはだめなのだ
だって、奈美と別れるためにこの話し合いを設けたんだからここで反論してしまっては何がしたいんだかがわからない
「ごめんね、今までついてて、邪魔だったよね」
なのに
なのに俺は
「……っ違」
頭の中ではわかっていても、それとは反対の行動をしてしまうのが人間だと昔のお偉いさんが言っていたような気がするが、まさにそれである
奈美を泣かせたくない
奈美と別れたくないという思いが無意識のうちに俺の脳を操ったんだろう。だが、俺が必死の弁明をしようとすると奈美は
「でもね、せっちゃん。奈美は諦めないよ。絶対せっちゃんに認められる女になる。それまで、せめて、せめて心の片隅にでもいいから神崎 奈美という一人の女が遠山 精一という素晴らしい男性を愛し続けているということだけは覚えておいてほしいな」
と、こんな言葉をかけてきた。予想外のこの言葉に俺は口をぽかんと開けて奈美を見つめることしかできない
「ね、せっちゃん?」
奈美の表情はまるで付き合っていた頃と同じくらいの笑顔に変わり俺を見つめている。いや、それ以上かもしれない
奈美は今まで俺が見てきた中で一番優しく、一番温かく、一番綺麗な女性だ。今もそうであるに変わりはない。なのにそんな女性が今俺なんかを愛し続けると言った
なんで、なんで俺なんかをこんなに愛するのだろう?
「私は執念深いんだから。約束だよ、せっちゃん」
最後まで泣かずに走り去ってしまった奈美。あいつはさらに一番強い女であったのかもしれない
俺は、こんなにも弱いというのに……
「ごめん、ごめんよ……奈美」
大粒の涙の跡が地を埋めていく。そして、奈美と別れた俺は次の日にアメリカに発ってしまうのだった……
…………
ん〜、若かりし俺は純朴だったね、うん
「どうせあいつは俺のことなんか忘れて他の男といちゃいちゃしてんだろうしなぁ……」
そう考えるともったいない。実にもったいないことをしてしまったもんだ
ヒュ
「キャー!」
黄色の水玉模様が俺の目の前に映される。やはり目の保養とは偶然作り出されるものではなく、自分で作っていくものだな
「おお! 黄色とは! イッツサマーですな! そのムッチリしたふとももに僕は頬ずりしたいよぉ」
金髪を後ろにまとめ、いかにも気の強そうな女の子。う〜ん、こういうのもたまにはいいね
「気持ち悪! 無理無理無理無理む〜り!」
ダーー!
獲物は逃げ出した
「ふぅ、アメリカで鍛えた俺のスカストテクニックはまだまだ衰えてないなぁ」
この技術に関しては我ながら賞賛を送りたいものである
…………
精一はアメリカに引っ越し学校に通うようになってから変態と呼ばれるのにそう時間はかからなかった。スカストと呼ばれるスカートめくりの高等技術はさることながら、水を巧みに操り制服を透けさせる技術、女子のスリーサイズを当てる技術など、奈美に毎日のように行っていた多種多様のエロ魔神技に女子生徒達は非難の目を速攻で精一に向けるようになった
しかし、一時期、後輩で日本人とアメリカ人のハーフの娘と付き合い出したときに精一の暴挙は止まるようになったが
二週間ぐらいでその娘は日本に引っ越してしまいまた精一の暴挙は始まったのだった……
…………
いや〜、しかし俺が転校するときの奴らの顔ときたら
にっこ〜
だったしなぁ……
「くっそ、なんだったらもっと堪能しとくんだった」
後悔先に立たず、そんな考え事をしていたまさにその時
ふわっ
「お?」
今、丁度通りかかったあの女、いい匂いしやがるじゃねぇか
綺麗に整った茶色のロングヘアーが前を歩く。こんなに生徒が溢れかえっているというのにその少女は全く紛れることがない。ふわふわとした軽やかな足取りを崩さずに校門に向かっている
「やべぇ、いい女だ……」
気づけば思わず口に出してしまった、バレてないだろうか
「ん〜、ふっふふ〜ん」
鼻歌を歌ってるぐらいだ、大丈夫だろう。しかし、見れば見るほどいいスタイルだ……
しっかりとしていて、それでいてムッチリとしている太もも、今にでも舐めたくなる二の腕、後ろからでもばっちりわかるスタイルの良さ
こんなのを見ると
俺は
俺は
ヒュ
「キャ!」
「ぉぉ〜ん! やはり俺が予想していたとおりの純白の白!!」
「ふえ〜! 何するんですか〜、怒りますよ〜!」
のほほんとした声を出した少女が振り向いた。想像したとおりの懐かしい声が聞こえてくる
ん? 懐かしい声?
「いや〜、すみませんお嬢さん、この手があなたの美貌に惹かれてしまって……、ッテェ!!」
反射的にお膳立てを述べた俺だったが、そのクリッとした瞳にいじらしい程につつきたくなるほっぺを見た瞬間一気に脊髄から脳内へある人物の情報が送られていく
「何なんですか〜、人のスカートめくっといて……、て、え?!」
そう、美少女の姿を象ったそれは
「せっちゃん!! せっちゃんでしょう!!」
ギュッ
今抱きついて腕をまわしているそれは
「私だよ!! 中学の時の奈美だよ!! 私、今までこの時をずっと待ってた!」
泣き顔で笑顔なそれは
まさしく神崎奈美本人だった
『私、せっちゃんに認められる女になる』
そうか、まだあのことを……
「せっちゃん、本当に待ってたんだよ? 本当に……。うぇーん!」
泣いた。そして抱きついてきた
「ぉお! 久しいな奈美よ。でも嬉しいのはわかるがさすがにはずいのとお前の鼻水が俺の服に……」
そう、周囲は騒然としてこの二人を見つめている。泣きじゃくって精一の服に埋もれる奈美、被害者は精一の学制服
「やだもん、やだもん、嫌だもん! もうせっちゃんは離さないんだもん!!」
こいつって奴は……
「しょうがない、今日は出血大サービスだ」
学校に続く道路のど真ん中、二人の少年少女は抱き合った
三年の月日、長いようで短いよう
それはさておき始めよう
ドタバタ恋愛学園物語
この少年は生か死か?
それは、誰にもわからない |