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第六章 困った人達(3)
妊娠7ヶ月に入るか入らないかの5月下旬。

全日本ロードレース第4戦が開催された。

今回は総一と一緒に行動して万が一のことがあれば大変、という事で彩子と一緒に行動する事になった真由。

多分これが妊娠中最後のレース観戦になるだろう。

万が一、何かあった場合。

彩子といる方がいいから。



真由は忙しいそうにバタバタしているみんなの横で呑気に座っている訳にもいかず、少しだけ離席した。

こんな場所でどうかと思うけど、サーキットは割と歩く事が多いのでいい運動になる。

やり過ぎると大変な事になるので適当に休憩しながら…

ちょっと探険に出掛けた。



「あれ?そーちゃんの奥さん?」

しばらく歩いていて声を掛けてきたのは隆道だった。

総一と色々な意味で張り合っている人。

「こんにちは」

真由は頭を下げる。

真由にとっては大人しい部類に入る総一と毎日一緒に過ごしているのでどちらかというと騒がしい隆道とは合わない。

けれど愛想笑いをする。

「またお腹が大きくなったよね」

目を細めた隆道がお腹を見つめた。

このお腹の子供が総一の子供だと信じてやまない…というか、それが当たり前の話。

「そーちゃんがパパになるって今だに信じられないけどね」

隆道は嬉しそうに真由を見つめる。

「クールな印象の強いそーちゃんが恋愛するなんて信じられない」

確かに一生結婚しないタイプにも思える。

真由との結婚は事故に近い。

−いや、恋愛せずにいきなり結婚だったのですが−

と言いかけて、止めた。

内心は突っ込みまくっていた。

「どこに行くの?」

一人でうろうろする真由に違和感を覚えた隆道は尋ねる。

「探検です。
サーキットってまだそんなに来たことがなくて、わからない事が多いから」

本当にわからない事が多くて、こういう時くらいしかじっくり見ることがない。

隆道は、なんだー、と言って

「少し時間があるから案内してあげるよ」

一緒に歩いているとファンらしき人が度々隆道に話掛けてきたり。

総一ではあまり見かけない光景に羨望の眼差しで見つめた。

有名ライダーとはこうも違うとは…



色々説明してもらって、ふと見つけた総一。

真由は喜んで行こうとしたら。

「真由ちゃん、ちょっと」

隆道が真由を止めた。

どうも様子がおかしい。

二人は物陰に隠れた。



総一と言い争う女性の声…

真由は俯いた。

その声は、今、真由の隣にいる人の大切な人。

−何をしているの?−

二人はまだ…


真由の心は揺らいだ。


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