ハルト〜願い屋〜(2/2)縦書き表示RDF


ハルト〜願い屋〜
作:鎌学 文芸部



第二章 不思議な駅



 「ここは第四の駅です。あ、と言ってもそう呼んでるだけですけどね」
 第四の駅と呼ばれる駅に降りたボクは違和感がした。
 ここまで変な世界なんだ。なにがあってもおかしくない。
 そう思って覚悟して降りた駅はどこにでもあるような田舎の駅だった。自動販売機は見当たらないし、改札も当然一つしかない。旅人がよる駅をまんまに描いたような駅だ。
 「改札は普通に通り抜けてくださいね」
 ホームにはボクらしかいない。あんなに列車に乗っていた人はたくさんいたのに、降りてみると同じドアから出たトモリとボクの二人だけだ。
 「あの、トモリ」
 質問したいことはたくさんあった。
 「はい、なんでしょう?」
 トモリは笑顔で振り返った。
 「なんでボクらしかいないの?」
 「あ、それは、出たらわかりますよ」
 うれしそうに改札に向かってトモリは歩き出した。
 「通るだけでいいですよ」
 ーガコン!ー
 親切になのか一回言ったのを忘れていたのかどっちでもよかったけど、改札はなぜかボクをはばんだ。
 「あれ? おかしいですね、故障かな?」
 トモリの後について行ったボクは改札がしまったことで、質問の答えを見つけることができなかった。
 「どうしてでしょう?」
 駅員もいないこの駅でボクらは問題をおこした。どうしようもない。でも、トモリは意外と落ち着いていた。
 「ちょっと待っててくださいね」
 トモリはポケットからケータイよりも小さいなにかを取り出して、耳もとに当てた。
 「あ、トモリです。今回、教育役になったのですが、あ、はい、はい、そうです」
 相手にはわからないのにトモリはお辞儀をしたり、首を振っていた。
 とても優しい人なんだろう、動作がそれを表していた。
 「はい、それでハルト君ので・・・えぇ、あ、ツナイさんを」
 ケータイらしきものを口から少し遠ざけて「大丈夫です」とトモリは言った。
 そして、またそれを口元に持っていって話し始めた。
 ボクは改めて駅を見渡した。見渡すと言っても小さな駅だからそんなに見るものはない。
 青々とした木々がホームに沿って立っている。木陰はとても涼しい風が流れている。
 秋のはずなのにセミが鳴いていて、ボクの顔からは汗が流れていた。
 もしかしたら、ここは南の街なのかもしれない。だから、季節がまだ変わっていないんだ。
 周りの風景は秋という感じは一切なく、まだまだ夏真っ最中といった感じだ。
 片側しかないホームを端から端まで歩いても木しか見えない。
 やっぱり田舎なんだと思った。
 ボクが観察を終えて戻るとトモリはくったくのない笑顔でボクを迎えてくれた。
 「どうでしたか?」
 ボクは待たせたことに謝っておくべきだと思った。
 「あ、ごめん」
 「いえいえ、いいですよ、不思議ですもんね」
 改札の向こう側にいるトモリはまた笑った。
 「あ、もう通れますから」
 そう言われてボクはゆっくり歩きながら、改札を通り抜けた。
 今度改札はすんなりボクを通した。
 「ようこそ! 第四の街に」
 改札を出た途端、ボクは目を疑った。
 今まで木で覆われていた改札の向こうの風景が急に光って変わった。
 「うわ」
 「おっとごめんよ」
 改札を出たところにボクは止まっていたから、、出てきた人とぶつかってしまった。
 ホームには誰もいなかったのに、たくさんの人々がボクの出た改札から出てきている。
 駅のエントランスには何人かの人がグループとなり集まっている。
 待ち合わせをしているのかと思える人も何人かいる。
 ホームはがらがらだったのにエントランスにはこんなにたくさんの人がいる。
 いったいどうなってるんだ?
 「ここが第四の駅、願い屋用エントランスです」
 「願い屋?」
 トモリは少しの間、固まった。
 「ごめんなさい、ホント私教育役失格ですね」
 トモリはまた茶封筒を取り出して、前と同じプリントを何ページかめくりボクに渡した。
 「これが願い屋の要項です」
 たくさんの文字があったから、ボクは重要そうなところだけ拾って頭に入れた。

   願い屋要項
 ここでは願い屋の仕事について話す。
 願い屋は人の願いを叶えるのが仕事だ。
 街(今のところ26個)に出て人の願いを叶える。
 街の人間には俺たちはわからない。だが、物については例外だ。
 願いをなんらかの条件で叶えることでランクが上がるようだ。
 ・・・・・・

 「これもフタさんからいただきました」
 フタからもらったというそのプリントは六枚でホチキスされている。
 どのページを開いてもきれいに同じ字体が並んでいる。
 「もしかして、俺は願い屋なの?」
 こぼれんばかりの笑顔でトモリは答える。
 「はい、ハルト君は願い屋ですよ」
 そう言うとトモリは腕時計を見てから、人の集まりに向かってだろうか歩き出した。
 ボクもそれについて行った。
 トモリが行った先にはスウラがいた。
 「お、遅くなりました、すみません」
 トモリが深々と頭を下げる。
 「いやいや、改札を出られなかったんだろ? よくあるから」
 トモリは何度も頭を下げて、謝った。そして、ボクを手招きした。
 「ハルト君、こちらが首長のタガルさんです」
 ボクはとりあえず頭を下げた。
 「よろしくハルト君、君はサガイなんだよね、楽しみだ」
 大きな手が差し出されて、ボクは握手をした。
 「こちらが副長のマールさんと同じくソウオウさんです」
 紹介されるのと同時にボクはお辞儀をした。
 「よろしくね」
 二人とも同時に言った。
 「マールさんとソウオウさんは双子なんですよ」
 よくよく見てみると瓜二つの顔つきだった。
 どうやら新人は役員の人と挨拶をする必要があるようだ。
 「それと、もう知ってますよね」
 「お、トモリ省く気か?」
 からかうようにスウラは笑って言った。
 「あ、いえ、違います、違います」
 「ボクはスウラね」
 「あ、はい」
 スウラとは少しだけど話しても大丈夫だと思った。
 役員の人たちと挨拶を含めた会話をして、ボクはそのグループからお辞儀をして離れた。
 「ハルト君、話題性高いんですよ」
 どうも飛び級していることが話題になるようだ。
 自分が話題になることは笑われること以外、なかったからなんだかうれしかった。
 「あの、ハルト君?」
 「あ、ごめん」
 考えることが多くて、ぼーっとしていたみたいだ。
 トモリが歩き離れていることにさえ気づかなかった。
 「じゃあ、ちょっと座りましょうか」
 トモリは駅を出てすぐの公園のベンチを指差した。
 トモリはいつもボクよりも前を歩く。ボクが遅いってのもあるけど、それにしても早い。
 いつもの歩いているスピードが早歩きのスピードだ。
 普通の人が話しながら歩くスピードよりも遅いボクだと離れて行く一方だ。
 今回もボクが遅れていて、トモリがベンチに座ってこっちを見て笑っていた。
 「ハルト君はこっちの世界が不思議ですか?」
 「不思議って言うか・・・」
 トモリは水筒から紅茶を出して、紙コップに注いだ。
 「はい、どうぞ」
 コップを手渡すと、トモリはすぐに砂糖とミルクを取り出した。
 「いりますか?」
 ボクは紅茶を飲んだことがなかった。だから、少し固まってしまった。
 「嫌いですか?」
 ボクは首を横に振った。
 「初めて飲むから」
 「あ、そうですか、じゃあ、お砂糖もミルクも全部入れてみた方がいいですよ」
 トモリはボクにスティックタイプの砂糖とカップに入ったミルクを渡してくれた。
 ボクは渡された砂糖を先に入れて、次にミルクを入れた。
 「おいしいですよー」
 せかされてボクはカップに口をつけた。
 「あ、ほんとだ」
 その言葉になのかトモリはふふふと笑った。
 「ハルト君、かきまぜないと」
 砂糖と一緒に渡されていたマドラーを使っていなかったから、まだ混ざっていなかった。
 ボクはシルバーのマドラーでカップの中をかき混ぜた。
 白い渦ができて、全体が俗に言うミルクティー色になった。
 「さぁ、どうぞ」
 すすめられて再度ボクはカップに口をつけた。
 さっきよりも甘くて、とてもおいしかった。好きだ。
 「どうですか?」
 「おいしいよ」
 「よかったー」
 トモリはニコッと笑って手を胸に当てた。
 「もし、嫌いだったらどうしようかと思いました」
 紅茶を飲みながら、トモリは一方的だったけどボクにいろいろ話をしてくれた。 
 話によるとトモリはこっちに来るまでの間。世界中の紅茶を集め、紅茶の農園を外国に持っていたらしい。
 どおりで素人でもすごくうまいとわかる紅茶を持っているわけだ。
 この紅茶はトモリが集めた中でも1、2を争うらしい。
 でも、紅茶のおいしさは自分で決めたからハルト君には合わないかもと冗談をつけくわえていた。
 「ごめんなさい、話すぎちゃて、それで本題に入りますね」
 もう見慣れたプリントがボクに手渡された。
 「コピーとりましたから、ハルト君にあげますね」
 さっきまで見ていたのとは違い、フタの字は手書きではなく印刷されていた。
 「ありがとう」
 ボクはそれを後で読むことにしてポケットにたたんでしまった。
 「あのさ、それより質問なんだけど」
 「はい、わかりました」
 そうしてトモリはおもむろにメモを取り出した。
 「はい、どうぞ」
 「あの、トモリ」
 「はい、なんでしょう?」
 いつも純粋な顔で聞いてくるから、やっぱり天然なんだろう。
 「なんでメモ?」
 「それはですねー」
 トモリがメモにむかって何かを書き始めた。 そして、書き終ったのかそれをボクに見せた。
 『わからないことがたくさんあるんです』
 なんでこの人は口で言わないんだろう・・・
 「あの、なんで言わないの?」
 「いや、なんとなくですよ」
 ・・・トモリはかなりの天然だ。今はっきりした。
 「そうだね、じゃあ質問するね」
 「はい、どうぞ」
 トモリは片手にペン、片手にメモを持った。
  
 
 
 
 



読んでいただきありがとうございます。
何話になるかわかりませんが頑張っていきたいです。
感想をいただけたら幸いです。
本当にありがとうございました。













ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP


小説家になろう