宇宙郵便
小さな女の子からの手紙には、手作りのビーズのネックレスと折り紙の鶴が入っていた。可愛らしい便箋にはたどたどしい字で「びょうきがなおる おほしさまひとつくださいな」と書いてある。
僕は頭を抱えた。星が足りない。
第一、毎年夏場は大忙しなんだ。
やれ自由研究だ、天体観測だ、七夕の天の川だ。
そうかと思えば、花火大会の邪魔だから取っ払ってくれなんて言われる。
やってられないよ、サンタクロースじゃないんだぞ。
サンタクロース?
そうだ、クリスマスツリーのてっぺんのやつで誤魔化しちゃおうか。
いやいや、駄目だ駄目だ。
女の子は病気を治して浴衣を着て夏祭りにでも行くんだろう。
喜ぶだろうなあ。
りんごあめなんか舐めながら、お面でも買ってもらうんだろうなあ。
僕は本物のお星さまを一掴み、女の子の封筒に入れてやった。
すると、女の子のくれた折り鶴が、封筒をくわえて飛び立っていく。
よく折れてる、力強い飛び方だ。明日には届くだろう。
折り鶴を見送ると、さあ、今日の分の星はどうしようかと考える。
僕は冷蔵庫からオクラを取り出して、まあ一日くらいならバレないだろうと、細かく刻む。
適当に散らしたら、星空の完成だ。
どうせ素人の天体観測の注文なんだ、分かるわけがない。
気がついたら大したもんだよ。
さてと、一息ついたところで、のんびり月を見ながらココアを飲もう。
また明日も忙しくなるぞ。
それにしても、なんだか今日の月はパンケーキみたいだな……。