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クーデターの夜
作:並盛りライス


 辺りは夜なのに、中央広場はやけに白い月明かりに照らされている。
 夜になっても国営放送が国王の誕生日を繰り返し流し続けていた。
 昔、この国は隣の大国の支配下にあった。戦争で隣の国が負けた時に、今の国王が独立を宣言してこの国が生まれたのだ。
 そのため国民達は、国王を熱心に尊敬し、誇りに思っていた。
 若き王は、隣国やその他の大国にも屈せず、実際に有能な政治力を持っていた。
 国王が八十歳になるまで彼を超える指導者はついに現れなかった。
 今日、彼の誕生日を祝う盛大なセレモニーが行われ、国民達は口々に王の優秀さを褒め称え、誕生日を祝った。
 八十歳の国王は、今では椅子から立ち上がるのに杖を必要としていた。
 それでも、国王の声は、尊厳と明瞭さを兼ね備えた美声だった。
「我が国民達よ、今のこの国があるのは貴方たちの絶え間ない努力のおかげじゃ」
 群衆はそれを聞くとざわめき、割れんばかりの拍手が沸き起こった。
「そしてこれからこの国をより一層、素晴らしい国にしてくれるのは彼らじゃ」
 国王がそう言うと、壇上の幕が開いて10歳前後の、この国の子供たちが現れた。
 群衆達は、もう一度大きく拍手をした。
 そして、国王がゆっくりと立ち上がると、大人達は沈黙して国王の次の言葉を待った。
 だが、子供たちはふざけあって、王の椅子を取り合った。
「これは僕のだ」
「私の椅子よ」
とお互いが叫びあった。
 国王と大人達は苦笑して、その和やかなハプニングを見ていた。
 やがて国王が静かに言った。
「そうだ、この椅子もこの国もお前達、全ての子供のものなんだよ」
 すると、生意気そうな男の子が一人出てきて、国王の杖を蹴飛ばした。
「今日から僕が王様だい」
 国王は、杖を奪われてその場に倒れこんだ。
 今まで和やかだった大人達も、さすがに慌てふためいた。
 王を警備していた者も、相手が子供なのでどうすればいいか分からないでいた。
 大人達もどうすればいいのか分からなかった。
 誰一人、国王を助け起こそうとしなかったので、その十分程の間、国王は地面に這いつくばっていた。ただ沈黙が続き、大衆がその様子を見守っていた。
 子供達は、まだ椅子や杖を取り合って争っていた。
 結局、十分が過ぎた頃、医者たちが国王を医療室に運び出した。
 その夜も、国営放送では繰り返しそのセレモニーの様子が流された。
 国民の誇りの象徴であった国王が、惨めな姿で這いつくばり、子供達が好き勝手に暴れまわっている様子だ。
 次の日の朝、セレモニーの行われた同じ中央広場で国王が処刑された。国外に権威を示せなくなった王に対して危機感を抱いた軍部がクーデターを起こしたのだ。
 新しい国王は、セレモニーで騒ぎを起こした子供の父親で、軍の指揮官の一人だった。国外に権威を示すために相応しいと軍が判断したためだ。














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