挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
79/499

68 下層の終わり

 探知を使いこなすのを諦めてから、お待ちかねの蜘蛛糸と毒攻撃のコンボを試してみた。
 結果は、グフフフフ。
 あー、実戦で試すのが楽しみだわ。
 うへへ。

 そのあとはずっと歩き続けた。
 その間魔物に出会うこともなく、至って平和だった。
 過食しまくったおかげでスタミナも減らないし、しばらくは魔物を狩らなくても問題ない。
 そういうわけで、魔物が出ない今こそ先に進むチャンスだった。

 ただ歩いてるだけなのも暇なので、移動しながらでも上げられそうなスキルを上げた。
 結果、五感系の視覚強化、聴覚強化、嗅覚強化、触覚強化がレベル5まで上がった。
 その際副次的に集中も上がって、今ではレベル8になった。
 集中のスキルは前から結構上がるの早かったけど、傲慢の効果で更にレベルアップが早くなった。
 このスキル、効果が効果だけにあんま実感はないけど、かなり有効なスキルだよね。
 猿戦ではこれのおかげであんな極限状態でも戦うことに集中できたんだろうし。
 地味だけどかなり貢献度の高いスキルだよね。

 で、五感系なんだけど、流石に5レベルにもなると違いがはっきりしてくる。
 元々かなり見えてた視界が、よりクリアになった。
 見ようと思えば、ずっと先の岩の表面すら見える。
 聴覚と嗅覚も同じ。
 迷宮内のあらゆる音と匂いがわかった。

 ただ、触覚強化はこれ、プラスともマイナスとも言えるかもしれない。
 ちょっと敏感になりすぎる。
 あ、エロい意味じゃないからね?
 期待すんなよ?
 期待しちゃうようなおバカさんには糸でグルグル巻きの刑のあと、毒牙で文字通り昇天させてあげるよ?
 それでも「我々の業界ではご褒美です」っていう猛者には流石の私も逃げ出すけどね。

 ああ、触覚強化の話ね。
 具体的に言うと、空気の流れだとかまでかなり敏感に察知しちゃって、ものすごく落ち着かなかった。
 時間が経って少しは慣れたけど、これ、本来だったらゆっくり時間をかけてレベルを上げて、徐々に慣らしていくものなんだと思う。
 これだけ急激にレベルを上げちゃったから、違和感が半端ないんだと思う。
 完全に慣れるまではちょっと時間がかかりそう。

 まあ、どうしても耐えられなくなったらスキルの発動をオフにもできるっぽいから、そうしようと思う。
 どっちかって言うと、嗅覚とかの方がオフにする機会は多そうだけどね。
 好き好んで臭いものの匂いを強化された嗅覚で嗅ごうとは思わんよ。

 そう考えると、味覚強化を取る意味はあんまない気がしてくる。
 だってこの迷宮の魔物不味いし。
 うまい魔物に出会ったことがないし。
 中にはタニシ虫みたいなこれ食うのはアウト、っていうのもいるし。

 そういえば、さっきからタニシ虫を見ないな。
 猿の襲撃を受ける前はそこらじゅうにいたのに。
 今は見回してもどこにもいない。
 どこに行ったんだろう?

 あー、それにしても暑い。
 エアコンが欲しいわ。
 夏場はエアコンの効いた部屋に半ヒッキー状態となるような私に、こんな暑い中歩けとかどんな仕打ちよ。
 もやしっ子の私は暑いのも寒いのも苦手なのよ。

 …暑い?
 ちょっと待って、暑い?
 上層も下層も常に快適な温度で、暑くも寒くもなかったこの迷宮で、暑い?

 ゆっくりと周りを見渡す。
 付近に魔物の姿はない。
 私も特段危険を感じない。
 それなのに、体は環境の変化を感じてる。

 壁沿いの空間の先を見る。
 気づきにくいけど、徐々に、本当にちょっとずつ、上に昇る傾斜になっている。

 上。
 上!
 上ですよ上!
 うわ、やったよ!
 ついに、ついに来た!
 上に昇るってことは、そういうことだよね?
 そういうことでしょう!

 下層から中層へと昇っていってるんだよこれ!

 ひゃっほい!
 やった!
 この道は正解だったんだ!
 これで、これで悪夢のような下層から脱出できる!
 もう地龍に怯えなくても済む!
 もう猿の大群に襲われることもない!
 化け物みたいな魔物がウヨウヨする中を、ビクビクしながらひたすら隠れてコソコソ逃げ回る必要もない!

 思わず駆け出した。
 さすが速度特化。
 我ながらビックリするぐらいのスピードで坂を駆け上がっていく。
 けど、黄のスタミナゲージがもたない。

 ぜー、ぜー。

 ああ。
 スピードあっても瞬発力がないと持続できないのか。
 これは盲点だった。
 いざとなれば、赤のスタミナゲージ減らして走り続けることも、ゲジの時にやったしできなくないけど、これは弱点の一つとして頭の中に入れておこう。

 それよりも、もうすぐ坂を登り切る。
 この坂を登りきれば、夢にまで見た中層だ。

 ここまで長い道のりだった。
 蛇に追いかけられて、ミスって下層に落っこちたのが始まりだった。
 そこからは危機の連発だった。
 蜂に殺されかけ、地龍に殺されかけ、強力な魔物の巣窟を抜け、タニシ虫の不味さに殺されかけ、猿にも殺されかけ。
 殺されかけてばっかじゃん。
 よく生きてんな私。
 波乱万丈すぎじゃね?
 もうちょっといいことあってもバチは当たらないと思うんだ。

 けど、そんな死と隣り合わせの生活ともこれでおさらばだ!

 さようなら下層!
 こんにちは中層!

 坂を登りきった先には、マグマが一面に広がる灼熱の大地が広がっていた。
活動報告に独り言を追加しました
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ