挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
67/479

58 地上100メートルの防衛戦④

 レベルアップの脱皮のおかげで、掴まれていた胴体と足が猿の手から離れた。
 猿の手には古い皮が2枚重ねで握られている。
 糸の大崩落で大半の猿は地上に叩き落とすことができたけど、簡易ホームに取り付いた猿は未だに健在だ。
 とはいえ、その体は既に簡易ホームの糸に捕まっている。
 身動きができないように、さらに糸を追加し、毒牙で確実に止めを刺していく。

 最後の1匹に止めを刺したところで、ホッと一息する。
 まだ終わったわけじゃないけど、一つの波は乗り越えた。

 緩みそうになる心に鞭を打つ。
 まだ終わったわけじゃない。
 まだ猿は全滅してない。
 全滅するまでは気を緩めちゃいけない。

 すぐさま簡易ホームから出て下の様子を見る。
 そこには、凄まじい光景が広がっていた。

 糸に捕われ、身動きもできずに地面に叩きつけられた猿の成れの果てと、それに押しつぶされた猿たちの姿。
 そして、その凄惨な光景の中でも、戦意を失っていない生き残った猿たち。

 私はすぐさま新しい糸を壁に設置していく。
 猿たちはまだ諦めていない。
 態勢が整い次第、また侵攻してくる。
 その前に、こっちも準備をしておかなきゃならない。

 猿たちの増援はまだ来ている。
 ホント、どんだけ来んのよ…。
 勘弁してよ。

 そして、その増援の中に、いてはいけないものがいた。

『バグラグラッチ LV3 ステータスの鑑定に失敗しました』
『バグラグラッチ LV4 ステータスの鑑定に失敗しました』
『バグラグラッチ LV6 ステータスの鑑定に失敗しました』

 巨大な鰐のような口。
 その口から、鋸のような凶悪な牙が無数に見える。
 今までの猿の倍くらいはありそうな体長。
 横にも太い。
 奇形の巨猿がそこにいた。

 あれは、この広いエリアについて、初めて見た魔物だ。
 猿の種族名がアノグラッチ。
 似てる名前で気付くべきだった。
 あの巨猿は、猿の進化系だ。
 猿の増援として、やってきてはいけない魔物が、来てしまった。

 のっそりと現れたそいつらの数は3体。
 レベルは私が見た中じゃ低めだけど、上位の魔物である以上、レベルが低くてもあてにはできない。
 そもそも、猿でさえまともに戦えば強敵なんだから、その進化系が弱いわけがない。
 見た目からしてかなり凶悪な外見してるし、猿とは比べ物にならないほど強いと認識したほうがよさそう。
 流石に地龍クラスではないだろうけど、それでも猿以上の強敵が3体。
 また難易度が上がった。

 呆然と動きを止めたのは一瞬。
 生き残った猿たちが行動を開始したことによって、私の意識は強制的に現実に引き戻された。
 猿たちは倒れた糸の塊を避け、大きく迂回して左右からまた壁を登り始めた。
 その動きから、糸をかなり警戒しているのが分かる。
 本当にやりにくい相手だ。

 私は巨猿に注意を払いつつ、糸を追加していく。
 巨猿はまだ動かない。
 猿たちとの連携はあまり積極的じゃない?
 そうだといいけど、楽観はできない。
 常にその動きには注意しておかないと。

 猿たちは投石はもうやってこないようだ。
 効果はあんまりないし、倒れた糸塊が邪魔で、私のところまで届かなくなったのかもしれない。
 投石は捨てて、壁登りに専念するみたいだ。
 そっちのほうが私としてはありがたい。
 あれは地味に効いた。
 HPは削られるし、動きは邪魔されるし。
 ないならそれに越したことはない。

 と、巨猿に動きがあった。
 おもむろに岩を持ち上げる。
 って、岩!?
 今軽く持ち上げたけど、あの岩って、この簡易ホームに貼っつけてる岩の元のだよね!?
 地面にしっかりと埋まってたはずなんだけど、軽い感じで引っこ抜いたよね!?
 薄くスライスしたやつですらめっちゃ重かったあの岩だよね!?
 え、その岩どうすんの?
 ちょっと待って、何振りかぶってんの?
 まさか!?

 慌てて簡易ホームから退避する。
 直後、岩が砲弾となって簡易ホームに突き刺さる。
 巻き上がる粉煙が晴れたそこでは、簡易ホームが見事に岩に押しつぶされていた。

 嘘でしょ?
 なんつーパワーよ。
 あんなもん食らったら、一発でお陀仏確定じゃないか。
 幸い、巨猿の周りにはもう手頃な岩はない。
 あの馬鹿げた砲弾は飛んでこない。

 けど、最終防衛ラインたる簡易ホームがあっさり壊されてしまった。
 ここから先、私は簡易ホームなしで戦わなきゃならない。

 それはまずい。
 簡易ホームの防御に頼れないっていうのも問題だけど、足場がないっていうのが一番まずい。
 今まで猿を迎撃できていたのは、しっかりとした足場の上で、安心して攻撃に専念できてたからだ。
 足場のない今、私の体はふとした拍子に落下しかねない。
 糸で天井に繋がってはいるから、地上まで真っ逆さまということはないけど、無防備な状態になることに変わりはない。
 そんな隙を晒そうものなら、猿たちが黙っているはずがない。

 私は素早く決断する。
 急ごしらえでもいいから足場を作る。
 その間、他の場所に糸を設置する作業はできなくなるけど、猿たちが迫ってきたら足場を作るどころじゃなくなる。
 今のうちに作っておかないと、後々後悔することになる。

 よし!
 一応私が立って活動できるくらいのサイズの足場完成!
 ここで猿たちを迎え撃つ。
 防衛戦の2回戦、開幕だ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ