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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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48 分かれ、道?

 下層の危険な一本道を進み続けて、ようやく、ようやくたどり着きました!
 分かれ道!
 道?

 うん。
 私の目の前にはだだっ広い空間が広がってる。
 あれだ、これは道が分かれてるっていうか、道が広がってるっていうか、道がなくなったっていうか。
 どのくらい広いかというと、暗視で暗闇なんてものともしないはずの私の目が、先を見通せないくらい、かな。

 えー。
 これどこに進めばいいわけ?
 今までの一本道なら迷いようがないけど、こんな何もない広い空間、困る。
 例えて言うなら道のない砂漠に突っ込んでいくような感じ?
 どこに向かえばいいかもわかんないっていうのが、なかなかに恐ろしいよね。

 こう、確か風景がかわりばえしないところをずっと歩き続けてると、無意識のうちに大きく弧を描いて進んじゃって、最終的に元の場所に戻ってきちゃうって言うよね。
 流石に蜘蛛の身でそれはないと思うけど、本当にどっちに進むべきかも全くわからん。
 目印になりそうなものといえば、ところどころにたってる岩の柱くらい。
 それも見た目はあんま変わらないから、目印にするにはちょっと特徴が足りない。
 タニシ虫はそこらじゅうにいるから、最悪の場合でも飢えることはなさそうだけど、迷っても迷ったことに気づけなさそう。

 まあ、ここは迷宮攻略の基本に立ち返って、壁伝いに進んでいきましょう。
 今までどおり、右の壁伝いに進む。

 しかし、広いね。
 横の広がりがすごい。
 それに、縦にも広い。
 岩の柱に支えられた天井は、高さ100メートルくらいありそうだ。
 見上げるような高さ。
 おかげでダンジョン内だというのに、閉塞感というものがない。
 なんというか、岩だらけだっていうのに、大自然の雄大さがある。
 この中にいると、自分がいかにちっぽけな存在かっていうのがよくわかる。

 前世で、世界の秘境なんかを取り扱ったテレビ番組があった。
 正直その時はそんなものに感動を覚えるようなことはなかった。
 画面越しの美しい景観も、私にとっては結局のところ遠い世界の全く関係のない話だった。
 感動なんて感情はなく、そこには無関心だけがあった。
 どうしてその番組を見ていたのかさえ不思議だ。

 けど、私は今ここにいる。
 こここそが私の住む世界。
 無関係なんかじゃない。
 無関心でもいられない。
 自分のいる場所に感動するなんて、人間だった頃じゃ考えられなかったな。
 それに、マイホームという名の巣に引きこもっていてもできなかったと思う。
 そういう意味では、私を外の世界に引きずり出してくれた、あの放火魔の人間に感謝しないといけないかもね。

 あ、思い出したらムカついてきた。
 やっぱなし。
 あんな奴に感謝なんかしてられるか。
 今度会ったら糸でグルグル巻きにした挙句、ダンジョンの中引きずり回して、最後は毒牙でポックリイカせてやる。

 ふう。
 嫌なことを思い出した。
 ここは改めてダンジョンの雄大さを眺めて、癒されるとしよう。

『バグラグラッチ LV14 ステータスの鑑定に失敗しました』

 のっそり現れる巨大な魔物。
 なんだろう、全体的な雰囲気はナマケモノっぽい感じの、ちょっと鈍そうな感じなのに、その口がその雰囲気をぶち壊してる。
 ギザギザの牙が無数に飛び出した、鰐みたいな巨大な口だ。
 猿っぽい胴体にそんな凶悪な口が付いてると、非常にアンバランスかつ、凶悪に見える。

 癒されねー。

 そうね。
 ここダンジョン。
 大自然違う。
 ここ危険。
 オーケー?
 イエス把握。

 というわけで、見つからないように気配を殺しつつ逃走開始。



 なんとか見つからずに済んだ。
 でさあ、ちょっとあんましたくない想像をしてしまったんだけどさあ。
 このだだっ広いエリア、まさか最下層じゃないよね?

 どういう基準で層が変わるのかわかんないけど、一本道をずっと進んだ先にこんなだだっ広いエリアがあるって、層が変わったって言ってっもおかしくはない気がするんだよね。
 一本道は真っ直ぐで、あんまり下ってるって感覚はなかったんだけど、もしかしたら気がつかないくらいの緩やかな傾斜だったのかもしれない。
 そう考えると、ねえ?

 イヤイヤ。
 きっと違うよね?
 単に広いところに出ただけだよ。
 うん。
 もしくは逆に中層に昇ってきたとか。
 あ、それ採用で。
 そう、ここはきっと中層なんだよ。
 なーんだ、やっと下層って危険領域から脱出できたんだー。

『バグラグラッチ LV8 ステータスの鑑定に失敗しました』
『バグラグラッチ LV4 ステータスの鑑定に失敗しました』
『バグラグラッチ LV11 ステータスの鑑定に失敗しました』

 こんなのがいるのが中層なわけなくね?
 私は透明人間。
 あ、蜘蛛だった。
 とりあえず、気配を消すのだ。
 そのままコソっと抜けるのだー。

 十分距離を取ってから、そういえば魔物の鑑定してなかったと思い出す。

『バグラグラッチ:巨大な顎を持つ奇形の魔物。群れで行動し、集団で獲物に襲いかかる』

 あーはー。
 あんな強そうなのにさらに群れるんかー。
 勝ち目ねー。

 うん。
 ここが中層説はなかったことにしよう。
 こんなん中層っていう難易度じゃねーよ!
 はあ、本当に最下層じゃないことを祈るばっかりだわ。
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