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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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5 なんということでしょう新居編

 このダンジョンからの脱出は諦めた。
 適当に歩き回ってたら、不意のエンカウントでデッドエンドの未来しか見えない。
 魔物にしろ、人間にしろ、今の私には等しく強敵だ。
 強敵と書いて、ライバル、とか、とも、とか読まない。
 正真正銘命の危険が危ないってやつだ。

 幸い、というのかなんなのか、この狭い通路に出現する魔物は、そんなに素早いやつはいないっぽい。
 でなきゃ、私が逃げ切れるわけないし。

 私のこの蜘蛛の体は割と素早い。
 素早さだけなら多分生前よりも優れてるんじゃないだろうか?
 …ごめんなさい。
 見栄はりました。
 本当は素早さだけじゃなくて、その他の運動能力も軒並み前世より高いです、はい。

 そもそもさー、私生まれ変わる前は「運動?何それ?」ってタイプのインドア派よ?
 そりゃ、野生の蜘蛛の方が運動能力高いに決まってるじゃん。
 私が人に誇れる運動能力なんて、ゲームで鍛えた親指の動きくらいだって。

 まあ、前世の私の運動音痴っぷりは置いといてと。
 つまりは逃げるだけなら出来るわけだ。
 けど、いつまでも逃げてばっかいられない。
 挟み撃ちになったらアウトだし、私が遭遇してないだけで、私より素早く動けるやつがいても不思議じゃない。

 それに、そろそろ真面目にお腹が空いてまずい。
 腹が減っては戦はできぬ。
 戦ができなくてもいいけど、このままじゃマジで餓死しかねない。

 で、だ。
 考えてみよう。
 Q、蜘蛛の主食ってなーんだ?
 A、他の昆虫です。

 おうふ…。
 そうなんだよねー。
 腹を満たすってそういうことだよねー。
 しかもさ、私のこの地球じゃありえないサイズからして、捕食対象って昆虫に限らないと思うんだよねー。
 具体的には、他の魔物とか、あんま考えたくないけど、人間とか…。

 大体からして、私の兄弟たちは、生まれてすぐ共食いし始めてたしねー。
 親っぽい巨大蜘蛛が子供を平然と食べてたし、私の種族って、自分以外の生物全般が獲物って線もありえなくはなさそう。
 というか、こんな洞窟だと、それ以外の選択肢がない。

 巨大通路の方にいた鹿もどきの魔物とかは何食べてるんだろう?
 あれって、草食に見せかけて肉食なのかな?
 まあ、考えても仕方ない。
 今は私の食事の心配だ。

 とはいえ背に腹は代えられない。
 このままだと餓死するのは確定。
 それが嫌なら、どんなゲテモノでも食べなきゃならない。
 覚悟を決めよう。



 さて、覚悟を決めたのはいいけど、じゃあ何を食べるんだという話だ。
 もちろん手元に食べ物なんてない。
 ないからには調達しないとならない。
 どうやって?

 ぶっちゃけ言うと、私が魔物と戦って勝てる確率は限りなく0%に近い。
 今いる迷路みたいな通路は、最初にいた巨大通路より断然狭い。
 なので、巨大通路にいたみたいな、巨大蜘蛛だとか、竜っぽい何かみたいな、あからさまにムリって感じの魔物はいない。
 せいぜい人間大くらいのサイズのモンスターしかいない。

 それでも、私が戦って勝てるかというと、多分ムリ。
 なぜって、そりゃ、私戦ったことなんかないもん!

 ゲームだったら得意なんだけどね。
 ゲームと実際に体を動かすのは別物だし。
 二次元と三次元は別なのだよ。

 そりゃ、本当に戦わなきゃダメ、って場面になったら形振り構ってられないけどね。
 今は、お腹は減ってるけど、極限にヤバイってほどでもない。
 だったら、ここは蜘蛛らしく、蜘蛛なりのやり方で食料を確保すべきでしょう。

 蜘蛛といえば、そう糸です!
 蜘蛛はその特殊な粘性のある糸で巣を作り、獲物を捕らえるのです。
 洞窟っていう地形もナイスだと思うんですよ。
 なんせ糸をそこらじゅうに張ることができるしね。

 そうと決まれば我が新居を作成しようではありませんか!

 まずは糸を出す。
 お尻?っていうのかな、の部分から糸が出るはずだから試してみよう。
 と思ったらもうすでになんか糸が出てた。
 あんれー?
 私こんなもの出した覚えないんだけど?
 しかもこれ、ずーっと先まで伸びてる。
 もしかしなくてもこれ、私ずっと出しっぱにして歩き回ってた?
 うわー、なんか恥ずかしいな!
 あれだ、(自主規制中)に気づかなくて、(自主規制中)してたみたいな。

 うーん。
 この糸どうしよう?
 まあ、なんかの役に立つかもしれないし、とりあえず根元だけ切ってそのままにしとこう。

 改めて、巣作り開始!

 糸が出せるのはわかった。
 あとはその糸を上手い具合に洞窟の面に合わせて張るだけ。
 自分では器用な方だと思ってるけど、上手く張れるかな?

 と、思っていた時期が私にもありました。
 私は完成した網を見て満足する。
 洞窟の通路を塞ぐように、見事な蜘蛛の巣が張られていた。
 いやー、これが本能ってやつなのかね?
 作り始めたら体が勝手に動いて、あれよあれよという間に網が完成しちゃいました。

 ただし、作ったのは網の下半分だけ。
 上半分は、下半分の網から1メートルくらい離れた場所に作ってある。

 なんでこんなことしたかって?
 逃走路を確保するために決まってるじゃん。

 私がいるのはT字路の交差点だ。
 そこを塞ぐようにそれぞれの通路に網を張った。
 けど、完全に塞いじゃうと、今度は私の逃げ道が無くなっちゃう。
 ないとは思うけど、私の張った網を突破してくる猛者がいるかもしれない。
 だから、いざという時逃げ出すことができるように、わざと穴を残しておいたのだ。

 知恵のない魔物なら下に張った網に引っかかってくれる。
 空を飛んでいれば上の網に引っかかる。
 私は三方向を網で囲まれているから安全が確保できたし、万が一の逃げ場も用意できた。
 理想的な引きこもり空間の出来上がり!
 素晴らしきかなマイホーム。
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