挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

492/529

過去編⑤

 ポティマスはモニターの前に陣取り、そこに映されているものを注視していた。
 巨大な画面にはいくつかのウィンドウが開いており、それぞれ別のものが映し出されている。
 あるウィンドウには動画が、あるウィンドウには図形が、またあるウィンドウには文章が。
 それら別々の情報を、ポティマスは並行して読み進めている。

 それらはすべて、とある国にて起きた龍の子供誘拐事件、その際に犯行グループが作成したデータだ。
 龍の子供を誘拐する時に撮影された映像。
 誘拐してからの龍の子供の観察記録。
 そして、採取された龍の子供の体組織のデータ。
 龍の子供を誘拐した犯行グループが所持していた全てのデータがポティマスの手元にはあった。

 ポティマスは犯行グループとは関わりがない。
 より正確に言えば、直接の、という言葉がつくが。
 ポティマスは間にいくつもの人や組織を挟み、犯行グループと細い繋がりを持っていた。
 しかし、それを犯行グループは知らない。
 ポティマスのやっていることは犯行グループのあずかり知らぬところで、彼らの成果を横取りするというものだ。
 しかも、自身は一切手を汚すことなく、データを盗む作業さえ他人を使って行っている。
 何重にも警戒を重ねてやり取りされているため、いくら有能な捜査官でもポティマスの元にまでたどり着くことはできない。
 仮にたどり着いたとしても、ポティマスが罪に問われることはないように工作してある。

 研究が行き詰っているのは事実だが、ポティマスは自身が危険な犯罪に手を染める気などさらさらなかった。
 ましてやそれが龍という危険生物を相手にするのであればなおさらだ。
 ポティマスは死にたくないのだから、少しでも自身の身に危険が降りかかるようなことはしない。
 もしそういった行動に出るのであれば、それはポティマスの身の安全が保障されている時だけ。
 そして、綿密に計画し、自身の身の安全が確保できたからこそ、ポティマスは今回の事件を起こしたのだ。

 犯行グループはポティマスの研究データをえるための捨て駒。
 その捨て駒を裏から操る組織、という捨て駒すら用意し、その組織ですらポティマスが関与している事実は出てこない。
 今回の事件では多くの人間が逮捕されることになる。
 しかし、そのどれもがポティマスには届かない。
 そうなるように仕向けたのだから当然だ。

 仮にポティマスの軌跡を全て網羅することができたとすれば、その途方もない周到さに呆れかえることとなるだろう。
 それらの労力は全て、不老不死へと至るため。
 ポティマスの悲願を達成するための努力。
 狂気じみた執念が引き起こした、多くの人間を巻き込んだ事件。

 その結果ポティマスの手元に送られてきたデータの量は、しかしあまりにも少ない。
 龍という超常の生物を敵に回し、多くの人間を巻き込んでおきながら、ポティマスが手に入れたものはレポート用紙十枚未満の文章量と、再生時間一時間未満の動画。
 払った労力に対して、得たものはあまりにも少ない。

 しかし、それに不貞腐れることなく、ポティマスは動画を食い入るように見つめ、得られたデータを何度も読み直している。
 同時に頭の中で様々な思考を巡らせる。
 動画の再生回数が百回を超えようかというところまで、寝食を忘れてモニターの前に陣取っていた。

 そして結論を出す。
 龍は科学とは違う、魔術というロジックで動いていると。
 龍の鱗の組成データ、そこにはありきたりな物質の名前しかなかった。
 生物の一部というよりかは鉱物に近いが、それでも未知の物質というわけではない。
 しかし、強度実験ではその組成から考えられる理論値を大きく上回る強度が数値として表れている。
 科学的な常識では考えられない現象。
 それは龍の子供が捕獲される際の映像に映っていた、炎を口から吐き出すブレスや、重力を無視するかのように飛翔する姿、何もない空間に弾かれる銃弾などなどから、誰がどう見てもわかることだった。
 映像が加工されたものやトリックなどではないことはよくわかっている。
 超常の現象が現実で起こりうるのだということを、映像は証明していた。
 しかしながら、ポティマスの見立てではその超常現象にも法則がある。
 でなければ龍の子供が息切れを起こして捕まったりはしなかった。
 科学では考えられない超常現象だが、それにもルールや法則があり、何でもかんでもできるというわけではない。

 そこまでわかれば後は簡単なことだ。
 要は科学とは違う、しかししっかりとしたルールに基づいている現象。
 それであれば、ルールを知らないだけで、人間にも再現は可能なはずだった。
 これで何のルールも法則も何もない、本当に神の所業のように昏倒無形な力であったならばポティマスにもどうしようもなかった。
 しかし、ルールや法則があるのであれば、それは人間が知らないだけで世界の自然な現象のうち。
 知らないからこそ超常と感じるだけ。
 知ってしまえばそれは超常でも何でもなく、ただの法則にしか過ぎない。

 ポティマスはそのルールを解き明かすため、その後魔術の研究にのめりこんでいく。
 科学では限界を感じていた、不老不死の実現に向けて。
 そして彼は発見することになる。
 科学では説明のできない未知のエネルギー、MAエネルギーを。
 この発見と、そこからさらにポティマスが研究を進め、発表したある研究結果が、世界を震撼させ大いなる混乱を呼び寄せることになる。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ