挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
472/503

289 TAS

 イヤー。
 山田くんパない。
 予想以上にアグレッシブなんだもん。
 ビックリだわー。

 何が起きたのかというと、山田くん一行は私ら魔王軍がエルフの里に到着する前に、先回りしてしまったのだ。
 イヤー、ちょっと訳がわからない。
 だって山田くんがいた王国はエルフの里とは別大陸にあるんだよ?
 移動だけでも相当時間かかるっていうのに、今や山田くんたちは王国で起きたクーデターの首謀者として国際指名手配中。
 そんな普通だったら身動きできない状況で即断即決して「エルフの里行こうぜ!」なノリになるのが信じられんっていうか。
 決断力ありすぎじゃね?

 ていうか黒、お前止めろし。
 何のために山田くんの動きを制限してると思っとんねん。
 万が一にも勇者である山田くんが魔王を倒すって事態が起きないようにでしょうが。
 何、「よし、俺も行くぞ!」ってノリノリで攻略手伝ってんのさ。
 あの野郎、絶対わかってて山田くん誘導しただろ。
 今度会ったらしばき倒しちゃる。

 それにしても、さすがというべきか。
 山田くんの天の加護はすごいわ。
 だって、普通に考えれば間に合うわけないもん。
 ただでさえ時間がないっていうのに、その上妨害いっぱいの状況で、山田くんたちがエルフの里にたどり着くことなんてできるはずがなかった。
 だっていうのに、山田くんたちは私たちよりも先にエルフの里に到着している。
 最短で最善のルートを通ってこなければなしえない。
 本人たちの能力に加え、幸運に幸運を重ねないとね。
 それができちゃうのが、山田くんの天の加護なんだろうなー。

 実際時間はなかった。
 転移でも使えなければ、山田くんたちがエルフの里にたどり着くまでに最短でも十数日かかる。
 私ら魔王軍と、夏目くんが率いる帝国軍がエルフの里に到着するのも同じ十数日くらいか、それよりちょい遅いくらい。
 最短で移動すれば間に合わなくもないって感じ。
 ただし、それはあくまでも最短で移動すればの話。
 移動を開始するのが一日でも遅れればダメだし、移動中に予定よりも時間がかかってもダメ。
 詰将棋みたいなミスの許されない状況。
 山田くんにそんな切羽詰まった状況が理解できてたかどうかはわかんないけど。

 しかもだ。
 大陸から大陸に渡らなきゃならないとなれば、必ず通らなければならない場所がある。
 ご存知私の生まれ育ったこの世界最大の迷宮、エルロー大迷宮。
 大陸と大陸を繋ぐだけあって、その規模はそんじょそこらの迷宮とは比較にならない。
 その大迷宮を最短で攻略しなきゃならないんだから、その難易度は推して知るべし。

 ここでエルロー大迷宮を通らないって選択をしてれば話は早かった。
 すでに教皇経由で各国の転移陣は封鎖済み。
 山田くんの異母姉が嫁いでいったって国には特に厳重な警戒網を張ってある。
 山田くん一行がそこに行こうものなら飛んで火にいる夏の虫のごとく御用となったはず。
 そこでエルロー大迷宮に突入っていう選択肢を真っ先に採用するあたり、こやつわかっておるわって感じだわー。

 しかも、選んだ案内人もいい。
 なーんかどっかで見たことあるような気もするナイスガイなおじ様を案内人に引き込んだわけだけど、この人すごい。
 何がすごいって、ルート選びがやばい。
 最短かつ最善かつ安全なルートをナチュラルに選んでそこを突き進んでいく。
 山田くんの天の加護補正があるにしても、おじ様自身が優れた案内人でなければなしえないルート選び。
 あの広大なエルロー大迷宮の複雑な道を、正確に覚えていなきゃできない芸当だわ。

 おじ様の的確な案内のおかげで、山田くんたちは苦戦らしい苦戦もしないままエルロー大迷宮を突破しちゃったんだもんなー。
 私がエルロー大迷宮を出るのにどれだけ苦戦しまくったか考えると、うん、これ以上考えるのはよくない。
 やめておこう。
 深く考えると殺意の波動に目覚めてしまいます。

 一回だけ地龍が出てガッツリ戦闘になったけど、あれどうせ黒の差し金だろうし。
 程よく山田くんたちが勝てるレベルの地龍をポッと出すとか、どう考えても奴がなんかしたとしか思えん。
 山田くんたちをちょっとでもレベルアップさせようとでもしたのか何なのか。

 まあ、私としちゃ、それよりもその後にベイビーズが登場したのがビックリしたけどな。
 なんか超意味深なこと言って山田くんたちをビビらせていたけど、何がしたかったんやあいつら?
 我が子供らながら、その考えてることが理解できん。
 山田くんたちに接触した直後に真意を問い質しに行ったら、なんかメッチャ「褒めて褒めて」オーラだしながらすり寄ってきたし。
 ああ、うん。
 そんな態度取られたら頭ごなしに何しとんねん我とか言えんやん。

 ベイビーズとの邂逅以外は万事順調に攻略しくさった山田くん一行。
 山田くんたちの能力でなら考えうる限り最短で攻略。
 そしてエルフの里に問題なく到着。

 おかしいやろ。
 夏目くん経由で帝国が、教皇経由で神言教が、それぞれ山田くん一行を足止めするために網張ってたっていうのに、それらをことごとくスルーしてくんだもん。
 あそこまで徹底してスルーされると、こっちとしてはもはや笑うしかないわ。
 ダーハッハッハ!
 あー、うん。
 監視してる私がそいつらに指示出せば一番いいのはわかってるけどさ、なんて言ったって私だもんよ!
 そりゃ、見ず知らずの人たちにいきなり指示とかできるわけないっしょ?
 そもそもそいつらの指揮系統は私じゃなくて夏目くんだったり教皇にあるわけで。
 そこに私がノコノコ出て行って指示しても「誰やあんた」ってなるに決まってんじゃん。

 言い訳はよそう。
 要は知らない人に声をかけちゃいけませんってやつだよ。
 ちょっと違う気がするけど間違っちゃいない。

 しかし、あれだ。
 私があれだけ苦労して抜け出したエルロー大迷宮を、こんな簡単に攻略されちゃうと何とも言えない気持ちになる。
 ふん!
 攻略したって言っても山田くんたちが通ったのは上層だけだし!
 私なんか中層も下層も攻略したったし!
 上層がやられたようだな。
 しかし奴はエルロー大迷宮階層の中でも最弱。
 簡単に攻略されてしまうとは、エルロー大迷宮の恥さらしめが。
 てなやつですよ!
 威張るのならば最低でも中層は攻略してくれないとね!
 ……虚しい。
 ないわー。
 うん、ないわー……。

 ハア。
 まあ、到着しちゃったもんはしょうがない。
 できるだけ魔王とは接触させないように立ち回るようにしよう。
 正直、山田くんたちは不測の事態を引き起こしかねないって意味では怖いところだけど、純粋な戦力として見たら大したことはない。
 夏目くんでもぶつけとけば囮になってくれるでしょ。

 私と魔王が相対するのは、あくまでもただ一人。
 ポティマス・ハァイフェナス。
 神になってから初めて、私も本気を出すことになるかな。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ