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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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血34 戦争っていうか、テロ

 数日間に及ぶご主人様との虐殺ツアーがようやく終わった。
 疲れたわ。
 今はただとにかく寝たい。
 ツアー中は一度も寝てないんだもの。

 いきなりなんの説明もなしに連れ出され、言われるがままにどこぞの組織の拠点に襲撃をかける毎日。
 最初はその組織がなんなのかさえわからなかったんだから、相当よね。
 まあ、そういう説明なしに言われるがままホイホイ襲撃をする私も私なんだろうけど。
 途中からはその組織がエルフとその協力者だってわかったから、積極的に動いていたし。

 けど、そういう肝心な説明はないくせに、現場ではああしろこうしろっていう細かい指示をしてくるのよね。
 ここの拠点では一人も逃がさずに皆殺しにしろだとか。
 逆にこいつだけは見逃せだとか。
 無関係の人間の目撃者は出すなだとか。
 そのくせご主人様は私を現場に送り届けるだけで、それ以外は一切手伝ってくれないんだもの。
 ステータスが高かろうが疲れるものは疲れるわ。

 どうせ聞いても説明してはくれないんだろうけれど、その細かい指示にも何かしら理由があるんでしょうね。
 ご主人様のことだから、私には考えつかないような理由でしょうけど。
 もう少し説明が欲しいところだわ。
 切実に。

 いろんなところを回った気がするけど、どこものんびり観光なんかできなかったわ。
 転移でたどり着いて、料理屋によって、エルフの拠点に襲撃をかける。
 毎回それだけだもの。
 それが終わったら早々に次の場所へ転移。
 せっかく見知らぬ土地に来たっていうのに、食事しか観光らしいことをしてないってどういうことよ?
 毎回食事だけは外さないっていうのもどうかと思うけれど。

 おかげでお腹いっぱいなのに付き合う羽目になったりとかね。
 一日何食食べたのかしら?
 過食なんていうスキルが取れたし。
 気のせいかお腹周りがちょっと……。
 しばらく食事の量を減らしましょう。

 そんなことを考えながら、魔王城にある私室に向かう。
 学園を卒業したあと、私には魔王城に私室が用意された。
 なんだか逃げ場を奪われたみたいな気分になったわ。
 その私室に向かう廊下で、ばったりフェルミナに会った。

「あら?」

 会ったのはいいのだけれど、こいつ大丈夫かしら?
 なんだか目の下に大きな隈ができてるし、顔色が見るからに青いんだけど。
 それでも背筋がピンと伸びてるのは、元貴族としての矜持なのかしら。
 見るからに体調が悪そうだけれど、毅然としたその態度は敵ながら天晴れといったところかしら。

「あなた、大丈夫?」
「あなたに心配されるいわれはありません」

 こっちが珍しく心配してあげてるっていうのに、きっぱりと言ってくる。
 けれど、心なしか口調に覇気がないわね。

「強がってないで休めば?」
「休めるのであれば休みます。どこかの誰かみたいに、この忙しい時期に行方をくらませるような無責任なことはしませんので」

 そのどこかの誰かって、ご主人様のことを言ってるのかしら?
 それとも、もしかして私?

「それって、ご主人様のこと? それとも私のこと?」
「両方です」

 恨みがましい声で断言されちゃったわ。
 そりゃそうよね。
 戦後処理をしなければならないはずの大将がいなくなってるのだもの。
 その皺寄せは全部フェルミナのところに行ったのね。

「今までどこに行ってたんですか?」
「ご主人様に連れられて、いろいろなところ」

 別に誤魔化したわけじゃなくて、本当にいろいろなところに連れて行かれたから、私にもどこにいたのかわからないのよ。
 それをフェルミナも私の困惑した感じから察したのか、深くは追求してこなかった。

「あなたが帰ってきてるということは、ご主人様も帰ってきてるんですね?」
「ええ。そのはずよ」
「わかりました。もしご主人様を見かけたら、すぐ執務室まで来るように伝えてください」

 深い、とても深い溜息を吐いて、フェルミナは歩き去ろうとした。
 その背中に思わず声をかける。

「手伝いましょうか?」

 自分で言って、自分で驚いたわ。
 いくら今にもぶっ倒れそうだからといって、この女の手伝いを自ら買って出るなんて。
 私もそれなりに疲れてるっていうのに。
 きっと疲れで正常な判断ができなくなってるからね。
 そうよ、そうに決まってるわ。

「正気ですか?」

 ほら。
 フェルミナにも正気を疑われたじゃない。

「あら? せっかく私が善意で言ってあげてるのに。酷い人」
「あなたに善意なんてものがあることに驚きです」

 本当に酷い人。
 そこまで言う?

「どちらにしても結構です。戦うことと男を侍らすことしか能のない方に手伝ってもらうことなんてありませんので」

 本当に、本当に酷い人!
 やっぱこいつ嫌いだわ。

「ああ、そう。じゃあ、過労で死ぬまでがんばんなさい」

 これ以上問答していてもお互いに気分が悪くなるだけだし、さっさと退散する。
 なんだか余計疲れた気がするわ。


 次の日、フェルミナが本当に過労で倒れたって聞いたけれど、私のせいじゃないわよ。
 全部仕事を押し付けたご主人様が悪い。
 そのご主人様が、倒れたフェルミナの分までヒーヒー言いながら仕事してるらしいけれど、自業自得よね。
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