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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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271 魔境第十軍

本日二話目
「ねえ、ご主人様?」

 吸血っ子が唇をわなわなさせ、目の前で整列する第十軍メンバーを指差す。

「これ、何?」

 何と言われましても、第十軍ですが。

「私の見間違いかしら? 全員ステータスが千を超えてるように見えるんだけれど?」

 あ、そう。
 私もう鑑定使えないからステータスとか見れないのよねー。
 それにしても千か。
 弱いわー。
 結構ビシバシ鍛えたつもりだったんだけど、それじゃあ、一対一じゃ上位竜にも負けるなー。

「おかしいからね? ご主人様の基準はおかしいからね?」
「無駄よ。この人に常識とか言っても」

 吸血っ子の叫びに、フェルミナちゃんが死んだ魚のような目をしながら答える。

「あんた、なんでステータス2500前後になってんの?」
「ふ、ふふふ……」

 吸血っ子の驚愕を、フェルミナちゃんは乾いた笑いを漏らすだけでスルー。
 それに何かを察したのか、吸血っ子が哀れみの表情で見つめる。

 フェルミナちゃんは吸血っ子みたいに子供の頃から鍛えたわけじゃないから、この程度までしか伸びなかった。
 それでも一般兵よりかは育成期間も長いし、上位竜と互角程度には戦えるんじゃなかろうか。
 さすがに龍には及ばないだろうけど。
 そんなのがわらわらいるんだから、第九軍ホント卑怯。

「ワルド、あなた大丈夫?」
「大丈夫だよ。君のためならどんな特訓にも耐えてみせる」

 吸血っ子の逆ハーメンバーで、魅了を解いても唯一吸血っ子にそのままついて行ったワルドくん。
 吸血っ子を第十軍に強制連行してきたら、ワルドくんも一緒についてきた。
 その他、吸血っ子と同年代の卒業生を何人か加え、第十軍は定員。
 これ以上戦争するまでに増えることはない。
 新兵数人を第十軍の環境に慣らした頃には、戦争の準備が本格的に始まる。
 逆に言えば、それまでに新兵を鍛えろってことね。
 腕が鳴るぜ!



 で、第十軍をいじめ抜いてる間に、人族の学園で事件発生。
 事件というか、なんというかだけど。
 山田くんが支配者スキルを獲得した。
 期待してなかったといえば嘘になるけど、実際に獲得されるとビックリだわ。
 もちろん、利用させてもらいましたとも。
 システムのハッキングがこれでだいぶ進んだ。
 あとは、ポティマスと教皇をどうにかすれば、残りの支配者スキルもなんとかなる算段がついてきている。

 それ以外だと、エルフには今のところ動きなし。
 ポティマスの分体が山田くんのところの王国で何やらコソコソしてるけど、後で夏目くんを使って一掃する予定なので問題なし。
 その時には妹ちゃんにも存分に働いてもらおう。

 人族はいよいよ魔族が本格的に攻め込んで来るっていうんで、国境線に戦力を集結させてきている。
 その中に、神言教の部隊もちゃんといる。
 どうやら教皇は戦う道を選んだようだ。
 ただ、会談の時に見かけた将軍とかはいないので、本当に大事な戦力は後の戦いに温存しておく気でいるよう。

 そういえば、勇者この戦いには参加させてって言うの忘れてたと気づいたんだけど、そこらへんは魔王がうまく言ってくれたのか、ちゃんと参戦する模様。
 勇者ユリウスとその仲間たちは、砦に詰めている。
 私は勇者を確実に始末するために、第十軍の移動先を勇者のいる砦にするよう魔王と掛け合っておいた。
 もちろんこれはすんなりすんだ。
 もともと第十軍は他の軍団より人員が少ないので、遊軍扱いされてたし。




 他の軍団も侵攻準備が整う中、軍団長だけ魔王城に呼ばれる。
 最後の会議を開くらしい。
 まあ、会議って言っても最終確認するだけなので、ぶっちゃけ報告会みたいなもんやね。

 会議室に入ると、そこには既に他の軍団長が集まっていた。
 アーグナーは私が入ってきた時にチラッと視線を向けただけで、それ以外の反応を示さなかった。
 私と繋がりがあるってことは他の軍団長どころか、魔王ですら知らないことだし。
 メラもアーグナーと似た反応。
 鬼くんは軽く一礼。
 黒は一瞥すらくれない。

 その他の軍団長は、それぞれ黙って席についている。
 第二軍団長のおっぱい星人は他の軍団長に意味ありげな色目を振りまいてるし、第三軍のアホ巨漢はオドオドしてる。
 第五軍の武士もどきは魔王至上主義者だからか、魔王の不利になりかねない軍団長がいないか目を光らせてる模様。
 ぶっちゃけ君がなんかしてもしなくても魔王は揺るがないので無意味な行動なんだけど。
 第六軍のショタは泰然としてるように見えるけど、内心ビクついてるのがわかる。
 第七軍のチンピラは、目に見えて不機嫌。

 魔族軍、個性豊かすぎやろ。
 誰一人として何も喋ってないのに、空気がざわついてる。

 早くも帰りたい心境になりつつも、黒の隣の空いていた席に腰を落ち着ける。
 おっぱい星人とショタの視線が痛い。

 この場で私のことをよく知らないのは、おっぱい星人とアホ巨漢、武士もどき、ショタの四人。
 真の実力を知らないって意味ではチンピラもそうだけど。
 魔王軍の一部の中で、私が魔王の金魚のフンみたいな、縁故採用なんじゃないかと噂されてるのは知ってる。
 そんでもってその実力を疑う声があることも。
 そのせいで、おっぱい星人とかショタからは、魔王へはらせない恨みを私に向けてきてるんだよね。
 いい迷惑。
 第十軍への嫌がらせとかもあって、その回避のために第十軍の活動は隠さなきゃならなかった。

 そのおかげというか、副産物というか、なんというかで第十軍は魔王の極秘任務をこなしている隠密部隊なんて噂も出てしまったよ。
 実際怪しさ満点だからね、見た目的に。
 バルトにも活動を隠してたせいで、無駄に噂の信憑性が増しちゃった。
 あと、チンピラが私のことを情報収集のスペシャリストだと勘違いしてるのも手伝ったっぽい。
 ただ、特訓してただけなんだけどなぁ。

 ちょっと、第十軍にまつわる変な噂を思い返していたら、魔王入場。
 その瞬間、場の空気がさらにピリっとしたものになる。

「それでは、会議を始める。バルト」
「は」

 魔王とバルトのやりとりから、会議が始まった。
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