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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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吸血鬼と鬼と忍者

本日二話目
吸血っ子視点
 前世の頃、私はリホ子と影で呼ばれていたのを知っていた。
 リアルホラー子。
 略してリホ子。
 誰がそう呼び始めたのかは知らない。
 面白くもなんともない、ただただ私を蔑むだけの呼び名。

 それを、目の前のこの少年は口に出した。
 最初の会談の時に自己紹介で転生者だと言っていたし、私のことを知っていてもおかしくはない。
 けど、私は前世の名前を明かしていないのに、どうしてこいつがその名前を今出すのか。

「ねえ? 固まってたらわかんないんだけど? 誰のことを話してたのかしら?」

 威圧を込めながら詰問してみると、少年、確か草間くんだっけ、が面白いように顔を引き攣れせていく。
 こっちを振り向いた京也くんも、あちゃー、といった表情を浮かべる。

「黙ってちゃわからないでしょ? 早く言いなさいよ」

 さらに脅しをかけてみたら、草間くんは顔を青くして黙り込んでしまった。
 しまった。
 脅しが裏目に出たっぽいわ。
 草間くん、分が悪くなると黙り込むタイプだったのね。

 もう面倒だから魅了しちゃおうかしら?
 一時的に魅了して、知ってること洗いざらい吐かせたほうが手っ取り早い気がするわ。

 私の不穏な考えを察したのか、草間くんがひれ伏した。
 土下座。

「すんませんごめんなさい許してください!」

 ベッドの上で土下座してまくし立てるように謝り倒す草間くん。
 なんだかその情けない姿に詰問する気も失せてくる。
 とは言え、腹が立ったのも確かだし、このままお咎めなしというのも私の気がすまない。

 土下座する草間くんの前まで行き、頭を掴んで前を向かせる。
 目と目を合わせて、にっこり。

「えへ?」

 引きつった愛想笑いを返してきた、ダラダラと冷や汗を流す草間くんの首筋に一気に噛み付く。

「ほげっ!?」

 牙を突き立ててそこから流れてくる血を吸いあげる。
 けど、それも一瞬のことで、すぐに後ろから肩を掴まれて引き剥がされた。
 案の定だけど、振り向くとそこには険しい顔をした京也くん。

「お? おお? おお……」

 口をパクパクさせながら意味のないうめき声を上げる草間くん。
 私は口元に垂れた血を舐め取り、京也くんと視線を合わせる。

「少し血をもらっただけよ。これで悪口のことはチャラにしてあげようっていうの。文句ある?」

 京也くんは何かを言いたそうな顔をしたけれど、草間くんにも非があると思ったのか、無言で溜息を吐いて私の肩を掴んでいた手を離した。

「笹やん、俺、なんか新しい扉開きそう」
「ダメだ。それは開いちゃいけない」

 私に噛まれた首筋を手で押さえながら世迷い事を宣う変態。
 まあ、吸血鬼に噛まれると気持いらしいから変態は言いすぎかも。

「それで? 本当になんで私のこと知ってたのよ?」
「あ、はい。クラスの名簿作って転生者が今どうしてるのかとか記載してったから、大体の転生者の現在はわかってんの。それで、消去法で誰が誰って判明してます、はい」
「ということは、クラスのほとんどが見つかってるってことか?」

 草間くんの答えに、京也くんが反応した。
 私と違って京也くんは友達もいたし、誰か会いたい人でもいるのかもしれない。

「ああ。大半はエルフの里にいるんだけど、オギが潜入しててそこにいる連中は全員把握済み。その他にもここの隣の国の学園に何人か通ってて、そっちも把握済み。で、この前の会談でそっちに三人も転生者がいたわけじゃん? そこは流石に俺らも把握してなかったから、リスト埋まってなかったんだけど、笹、あー、ラースは顔見りゃ誰だかわかるし、若葉さんも同じく。で、女子で見つかってないのは根岸さんだけって感じで、消去法で根岸さんだろうってことになったわけ」
「オギが?」
「あ、これ言っちゃいけないことだった」

 大丈夫かしら、こいつ?
 結構重要な情報をポンと漏らした気がするんだけど。

「き、聞かなかったことにしといて。な? な?」
「あー。まあ、エルフに関しては協力することになってるし大丈夫なんじゃないかな?」
「おっし! セーフ!」

 セーフじゃないわよ。
 京也くんも大丈夫と言いつつ聞かなかったことにするとは言ってないし。
 ダメかもしれないわね、こいつ。

「ちなみに、そのリストを見せてもらうことってできるか?」
「ああ、いいぜ。写しがあるからちょっと待ってな」

 そう言って草間くんはゴミの山をかき分けだした。
 いいのかしら?
 一応それって機密文書の一種なんじゃないの?
 同じ転生者だからって言ってそんな簡単にホイホイ渡していいものなのかしら?

「あったあった。紙とペン貸すから写して持ってって」

 私はさほど興味ないけど、京也くんは渡された紙を見て真剣に写し取っている。
 前世に未練のない私とは大違いだわ。

「ありがとう。助かった」
「どういたしましてー」

 京也くんが草間くんに元のメモを返す。

「あとで、白さんにも見せておかなきゃな」

 何とはなしに言われたその名前に、ハッとする。
 そうだったわ。
 私はご主人様に帰るから京也くんを呼んでこいって言われたんだった。
 まずいわ。
 余計なことをしてるうちに時間が経っちゃってる。
 ご主人様がそろそろ待たされてイライラし始めてるかも。

「京也くん、終わったんならそろそろ帰るわよ。アリエルさんたちはもう待ってるから」
「ソフィアさん、僕の名前は呼んで欲しくないって何度言えばわかるのかな?」

 顔をしかめる京也くんの言葉は無視。
 嫌がらせでわざわざ京也くんって呼んでるんだから、言われてもやめるわけないじゃない。

「早く行くわよ。ついて来ないなら置いていくから」

 私はさっさと身を翻して元の会議室に向けて歩き出す。
 扉の外には私をここまで案内した教会の人間。
 それだけじゃなく、陰から暗部の人間らしき気配が私のことを監視しているけど、手を出してこないうちは無視。
 部外者、というよりかもほぼ敵と言っていいような人間を監視もつけずに自由に出歩かせるわけないわよね。
 きっと草間くんの部屋の中でも会話も聞かれてたでしょうね。
 草間くん、大丈夫かしら?
 殺されはしないだろうけど、きっと相当叱られることになるでしょうね。
 まあ、私には関係ないことよね。
 草間くんのことは頭から追い出して、さっさとご主人様のところに戻っていった。
教皇「うちの忍者がポンコツすぎてやばい」
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