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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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264 本体が就職しました

 一晩寝て起きたらスッキリ。
 これで今日もまだ体調悪かったらどうしようかと思ってたけど、杞憂に終わってよかったわ。

 とりあえず、神言教との会談の時に思いついた役職を、魔王におねだりして貰いに行こう。
 まあ、名前だけの役職もらって実務は何もしなくていいよね。

「白ちゃん就職したいん? じゃあ、第十軍あげるから管理よろ」

 ホア!?
 軽い調子で「なんか適当な役職くれ」って言ったら軍を押し付けられた。
 どうしてこうなった?
 イヤ、マジでどうしてだよ?

「なんで?」
「今、バルトが中心になって軍の再編してんだけど、兵はいてもそれを率いる将がいないんよー。第十軍はまだ編成の真っ最中で兵すら集まってないけど。そんなわけで、使える人材を遊ばせておく余裕はうちの魔王軍にはない!」

 机の上に寝転がってお菓子食ってる奴が何か言ってる。
 そんなこと言う魔王軍のトップが一番遊んでいる件について。

「ちなみに、第九軍は黒ちゃんが引き受けてくれたよー」

 管理者が一軍の長とか。
 それ絶対軍必要ないよね?
 戦力的には軍団長だけで事足りるよね?
 まあ、それ言ったら私もそうなっちゃうのか。

「イヤー、ホント使える人材が少ない。一応自領に引きこもってる連中も引っ張り出して見てみたんだけど、戦えるのほとんどいないでやんの。役人としては優秀なんだけどねー」

 魔族は実力主義っていう設定どこいった。
 イヤ、まあ、そらそうよな。
 そんな腕力に物言わせた政治なんかしてて、人族と同じ水準の生活が成り立つわけないもんな。
 現実は実力主義()なのね。

「というわけで、あとでバルトにまだ所属の決まってない兵のリストとか持って行かせるから、適当に軍団編成しちゃって」
「私、そういうの経験ないんだけど?」
「大丈夫大丈夫。なせばなる」

 成り行きで軍団長になってしまった。
 しかも、魔王は私のこと扱き使う気まんまんだ。
 実態の伴わない名前だけの役職を貰うつもりだったのに、どうしてこうなった?

 しかし、引き受けた、というか強引に引き受けさせられたからには、やらないわけにもいかない。
 魔王城の中に一室私専用の執務室を作るということなので、魔王は結構本気なんだろう。

 こんな簡単に意図せず就職してしまった。
 一応私はDの眷属候補という肩書きがあるから、今までも研修社員的な感じではあったけど。
 研修してる現場で課長になったみたいなもんかな?
 ちょっと違う?
 流石に社会人になった記憶はないから会社のことなんかわからん。

 日本で就職難で喘いでいる諸君。
 魔王軍は優秀な人材を求めております。
 給料バッチリ、勤務時間もそれなり、ただし命の保証なし。
 是非面接にいらしてください。
 待ってます。

 あー。
 なんか一応やっとくかーみたいな感じで魔王に話したのがいけなかったのか。
 しかし、よくよく考えると、自分で好き勝手に動かせる軍団っていうのは持っててもいいかもしれない。
 大抵のことは分体でどうとでもなるから気にしてなかったけど。
 分体を動かす場合、裏で秘密裏にって感じだったからなー。
 軍団を持てば、堂々と表に出て仕事できるわけだ。
 そこにメリットがあるかどうかは今のところわからんけど。

 どうせ軍団作るなら、それなりに見知った顔を入れておきたい。
 というわけで、吸血っ子と鬼くんに入隊しない? って聞いてみた。

「学業があるから」
「しばらく考えさせてください」

 断られた。
 なんということでしょう。
 どっちかは入ってくれんじゃないかなーとか思ってたけど、私の片思いだったっぽい。
 ちくせう。

 とりあえず、フェルミナちゃんは私のあずかりなんで、強制参加させといた。
 元は英才教育受けてたお嬢様だし、軍の運営管理とかもできるでしょ。
 というわけで、副軍団長に就任。
 決めてからあとで本人にそうなったからって伝えたら、曖昧な笑みを浮かべながら了承してくれた。
 あれ、内心めっちゃ混乱してただろうけど、それを表情に出さない貴族スキルがスゴイわ。
 どこぞの吸血鬼はすぐ顔に出るから、少しは見習わせたい。

 あと、その日の夜に兵のリストやらその他の書類やらを大量に持ってきたバルトに、君んとこにいるメラを引き抜きたいって言った。
 そしたら勘弁してくれと却下された。
 なんでも、メラは既に一軍を任せられる状態になっているので、近いうちにバルトの代わりに第四軍の軍団長に任命するとのこと。
 フリーになったバルトは魔王直轄軍をまとめるそうなので、忙しさは変わらなさそう。
 マジでバルトが過労でマッハなんだが、死なないよね?
 メラと同じかそれ以上に死人の顔してんだけど。
 なんか哀れになってきたので元気の出る魔術をかけてあげた。
 頑張れバルト。
 生きろバルト。

 翌日には魔王城に私専用の執務室が完成してたので、そこでバルトに渡された書類をかたす作業に没頭することになった。
 半日で新規軍団の立ち上げに関する書類をまとめたり、一日で執務室作ったり、バルトの事務能力がカンストしてる件。
 もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな?
 あ、それだとバルト過労死してしまう。
 けど、私の処理が追いつかない速度で追加の書類を持ってこないでくれませんかねえ?
 どんだけだよ、バルトさん。

 そんな感じでなんか書類と睨めっこしてるだけで瞬く間に数日過ぎてしまった。
 ずっと椅子に座りっぱなしだからお尻と背中が痛い。
 あと、目閉じて透視で書類読んでたから変な感じで目が疲れた。
 普通の眼精疲労じゃなくて、なんかこう、魔力性眼精疲労とでも言えばいいのか。
 あと文字書きすぎて手が痛い。
 神の体をここまで傷ものにするとは、恐るべしデスクワーク。
 バルトの苦労の一端を垣間見た。
 フェルミナを副軍団長に任命してて良かった。
 私一人ではこの戦闘に勝利できなかったに違いない。
 有能な秘書フェルミナちゃんがいてくれてホントに助かった。

 さて、書類はまだ全部片付いてないけど、私は別の戦場に行かなければならない。
 神言教との第二回会談という戦場へ。
D「書類仕事辛いです」
冥土「キリキリ働け」
+注意+
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