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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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261 酒は百薬の長

 目が覚めたら屋敷のベッドだった。
 おかしいな。
 昨日は確か異空間に引きこもって酒とつまみをちょびちょびしてたはずなんだけど。
 酔っていつの間にか戻ってきて寝ちゃったのかな?

 酔うと記憶が飛ぶのは問題だけど、仕方がない。
 アルコールを急速分解とかしようと思えばできるけど、それやると酒を飲む意味がなくなるし。
 アルコールのない酒とか酒とは言えんのだよ!
 まあ、いざとなればそこらじゅうにいる分体から記憶をフィードバックすることもできるし、無問題。
 今のところ記憶のフィードバックはしてないけど。
 イヤ、だって、自分が酒飲んだ時にどういう状態になってるのかとか、見るのちょっと怖いじゃん?

 頭を振って、体調に問題がないかを確認。
 酒を飲んでも二日酔いにはならないけど、万が一ってこともあるしね。
 うむ、本日も絶好調なり。
 そこはかとなく肌つやが良くなったようにも感じる。
 やっぱ酒は健康にいいのだよ。

 部屋を出て朝食を貰うべく、食堂に行く。
 私より先に吸血っ子と鬼くんが席に座っていた。

「おはようございます」
「お、おはよう」

 丁寧に挨拶してくる鬼くんと、若干顔を引きつらせながらも挨拶してくる吸血っ子。
 旅をしてる時にもたまーにこういう態度の時があったけど、やっぱ吸血鬼って朝に弱いのかね?

「ん」

 何も言わないよりかはマシと短く答える。
 吸血っ子の隣の席に座る。
 やたら吸血っ子の背筋が伸びてるのはなんなんだか。

「あの」

 ん?

「昨日みたいなことはやめるべきだと思います」

 鬼くんが責めるような口調でそんなことを言った。
 んん?
 昨日?
 昨日なんかした?

 チラッと吸血っ子に視線を向ける。
 って言っても目を閉じたまんまだからアイコンタクトとか取れないけど。
 吸血っ子は鬼くんを信じられないものでも見る感じで凝視している。
 え?
 なにこれ?
 昨日何があったの?

「ソフィアさんも嫌がっていたし、人が嫌がることを強要するのはいけないことだと思う。たとえお酒に酔っていたからといっても、やっていいことと悪いことがあると僕は思うんだ」

 酒。
 酔う。

 屋敷内の分体に緊急要請!
 昨日本体が酔っ払っていた間の記憶をフィードバックせよ!
 屋敷にこっそりと潜んでいる分体たちの記憶を本体に送信する。
 受け取った記憶を順に見ていき、該当すると思われる箇所を発見。

 ブフォッ!?
 なんじゃこりゃ!?

 オイ! オイ昨日の私!
 何をしてるんじゃ!?
 絡み酒とかそんなチャチなもんじゃねえ!
 もっと恐ろしいものの片鱗を見たぜ!

 イヤー。
 ないわー。
 これないわー。
 酔ってる私を客観的に見ると、ないわー。

 吸血っ子に襲い掛かり、止めようとした鬼くんに静止の邪眼ぶっぱなし。
 やりたい放題やがな。
 ていうか、私頑張ればあんなに流暢に喋れるんだな!
 あ、はい。
 現実逃避してる場合じゃないね。
 どうすっかこれ。

 顔を吸血っ子の方に向ける。
 椅子に座ったまま避けるという器用なことをする吸血っ子。
 あー、うん。

「ごめんなさい」

 はい。

 イヤ、吸血っ子よ。
 どうしてそこで信じられないって顔で慄いてんのさ?
 私だって悪いことしたら謝るくらいするのよ?
 酒はちょっとの間封印しよう。
 飲むのは、Dのいるところで。
 あ、イヤ、それもなんか怖いな。
 とりあえずしばらく禁酒で。
 く、辛いがそれも致し方なし。

 鬼くんに視線を戻すと、こっちはこっちでホッとした表情をしていた。
 鬼くんも決死の思いで私に忠告したのかも。
 まあ、昨日のアレを見たら話が通じないかもとか思われても仕方がない。
 酒にまさかこんな落とし穴があったとは。
 恐るべし。

「ご主人様。本当に本物のご主人様?」

 なんか吸血っ子が変なことを言い始めた。
 本物じゃなかったらなんやねんと突っ込みたい。

「熱でもある? 変なものでも食べた? 頭がおかしくなった?」

 おい、こら。
 お前の中で私は一体どういうキャラなんだ?
 鬱陶しいのでチョップ一発で黙らせる。

「いったー!? ちょっと酷くない!? 心配してあげてんのに酷くない!?」
「いや、今のは、酷いのはソフィアさんの方だと思うな」

 吸血っ子の抗議を、冷静に鬼くんが突っ込む。
 うむうむ。
 謝っただけでこんなに騒がれるいわれはない。
 どこぞの邪神と違って、私はちゃんと話が通用するのだよ。
 Dとは違うのだよ! Dとは!

「だってご主人様よ? 悪逆非道の権化のようなご主人様よ? 虐殺大好き人肉大好きどこの地獄の出身ですかって言いたくなるようなあのご主人様よ?」

 吸血っ子の中での私のイメージが大魔王な件について。
 え?
 そんなにか?
 そんなに私ってばやばいイメージだったの?

 あー、うー。
 思い返してみれば、吸血っ子の故郷が滅びた引き金の戦争で大暴れもしたし、そういえばその後目の前でエルフ炒めとかやったっけ。
 イヤ、それ以前になんか吸血っ子の口調的に私ってば昨日が初犯じゃない?
 そう考えると辻褄が合う。
 合ってしまう。
 なんてこった!
 吸血っ子の中では私は夜な夜な人肉を貪る妖怪認定されてたってことか!?
 あながち間違ってないからなんも言えねえ!

「いや、言い過ぎじゃないかい?」
「全部事実なんだもん」
「え?」

 鬼くんが驚愕したようにこっちを見てくる。
 やめて!
 そんな目で見ないで!
 ツイッと視線から逃れるように顔を背けた。
D「どっかの蜘蛛が私をディスってる電波を受信したのでシメてきます」
冥土「行かせると思いますか? ちゃっちゃと働いてください」
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