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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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非公式会談⑥

本日ギリギリセーフで二話目
教皇視点
 厚意を無下にするのならば協力してやる義理はない。
 そう言わんばかりの言葉に、私は己の失敗を悟る。
 自ら言ったではないか。
 腹を割って話すと。
 その言葉をないがしろにし、白様の言葉を疑った結果がこの返答。
 であるならば、我々は彼女にこう判断されてしまったということだ。
 協力する価値なし。

 それはなんとしてでも避けねばならない。
 黒龍様の名前を出すということは、少なくとも白様がかのお方と通じているということ。
 白様自身が管理者であるか否かはまだ判断ができないが、正真正銘の管理者と繋がりがあるというだけで無下にはできない。

 それに、世界の危機は我らが予想しているよりもずっと深刻な模様。
 魂の摩耗というものがどういった現象なのか、詳しい説明がなされていないので想像するしかできないが、ある程度の予想はできる。
 それが黒龍様が関与しているとなれば、その重要性は高い。
 高すぎる。
 それをどうしてこの世界の住人である私たちが知らぬのだと、白様に言外に言われても仕方がないほどに。

 もはや腹を探る段階ではない。
 今回協力を依頼されているのはエルフへの対抗措置。
 世界の危機に関する協力依頼はされていない。
 つまりは白様にとって、神言教はその程度だということだろう。
 白様の口から語られた世界救済の活動には、神言教の協力など不要であると。
 最初からそう伝えられていたのだ。
 それを勘違いし、神言教の立ち位置を過大評価してしまったが故の失敗。
 これ以上、神言教の信用を落とすことはできぬ。
 僅かに残っている、世界救済の糸口を見失うことになってしまう。

「言わせておけば、勝手な口を」

 口を開いたのは、神言教の軍部を統括する将軍。
 その口が再び開く前に、私は言葉を発する。

「控えよ、将軍」

 控えよという言葉で将軍が得意そうな顔をし、続く将軍という言葉で一気にその表情が急転する。

「え?」
「控えよと言った。この方々との交渉が失敗したとあれば、将軍の首一つでは済まされないのだと理解したまえ」

 将軍以外にも、白様の発言に気を悪くしていた面々への牽制。
 そして、白様方に私がこの交渉をそれだけ重く見ていることをアピール。
 正直、将軍がしでかしたことを挽回できるほどの重みはない。
 将軍の言葉で、白様には見限られたかもしれぬのだ。
 もし本当にそうなってしまえば、私は将軍のみならず、その一族郎党の首を差し出して白様のご機嫌を窺わなければならないかもしれぬ。
 将軍は短気ではあるが、これまで共に戦い続けてきた同志。
 こんなところで失うわけにはいかない。

「身内が失礼いたしました。ご不快でしたら退室させましょう」

 私の下手の対応に、他のメンバーもようやく対峙している相手が自分たちよりも上位にいることを理解したようだ。
 そのようにあらかじめ言い含めていても、私以外に上の存在というものに相対したことがないので、実感がわかなかったのであろう。

「結構」

 短い言葉。
 いてもいなくても変わりはない。
 そんな言葉が後に続いてきそうだった。

 白様が席を立つ様子はない。
 まだ、ギリギリ言葉を交わすだけの価値はあると判断してもらえているということか。
 それならば、挽回の機会も残されている。
 ここからは失敗は許されない。
 発言には細心の注意を払わなければ。

「白様のお言葉で我が身の不甲斐なさを思い知りました。つきましては、そんな我らに白様のお力をお借りしたく思います。厚かましい願いであるとは重々承知しておりますが、何卒ご検討願えないでしょうか?」

 まずは協力関係を細くてもいいので築くことから。
 この場で交渉が決裂してしまえば、神言教は今後世界の情勢から一歩も二歩も出遅れかねない。
 協力関係を築くことができれば、信頼を勝ち得る機会もある。
 そうなれば、より深い案件を知ることもできよう。

 まずはエルフ打倒に向けて協力する。
 正直結界に守られ手出しできないエルフを打倒できるのであれば、願ってもない申し出。
 エルフを打倒することは神言教にとっても世界にとってもプラスにはなってもマイナスにはならない。
 であれば、その協力をするのは諸手を挙げて賛成なのだ。

 それより先は、白様の信頼を勝ち得てから探るしかあるまい。
 信頼を得られるかどうかは、今後の働きしだいであろう。

「今日はそれを聞けただけで満足です。とりあえず、足並みを揃える気はあると、そう受け取って構いませんね?」
「はい。必ずやあなた様のお役に立ちましょう」

 間髪入れずに返答する。
 白様の言葉から、今日はこれ以上語ることはないと、そう察せられる。
 もっと話し合いたいことは多くあるが、致し方あるまい。
 この会談が始まる前から、我々には「はい」という答えしか残されている道がなかったのだから。
 「はい」と答えたからには、白様に語るべき言葉はない。
 もしかすればもっと多くを語ってくれたのかもしれないが、それは言っても詮無いこと。
 交渉は決裂こそしなかったが、成功したとも言い難い。
 むしろ、失敗一歩手前と受け取るべきであろう。
 かろうじて見捨てられなかった。
 そんな印象が拭えない。

「では、近いうちに今後の予定をすり合わせる場を設けましょう。また来ます」

 白様がそう締めくくり、席を立とうとする。

「待って」

 それを、ソフィア嬢が止める。

「私の話はまだ終わってないんだけど?」

 どうやらまだこの席は続くようだ。
 それも、不利な方向に。
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