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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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非公式会談④

「では、自己紹介も終わりましたし、本題に入っていきましょう」

 一瞬の空白の後、教皇が話を進める。
 爺様、あんたスゲーよ。
 この空気の中でひるまずに話を進めますか。
 私にはムリだわー。
 頑張れ爺様、負けるな爺様、私は何も知らん。

「では、本日はこの本の内容について、お互い腹を割って話すということでよろしいかな?」

 教皇が取り出したのは、私がこの前渡した本。
 そこには世界の現状と、それを受けての今後の魔族の動き、プラスアルファで転生者についての情報が書かれている。
 そして、一番重要なのは対エルフの協力体制を築けないかという提案。
 そこにはまだ、私が計画している世界救済案は載せてない。
 この会談の結果次第では明かしてもいいけど、最終的に教皇はおそらく敵に回ることになる。
 それを考えれば、とりあえず目先の共通の敵として、打倒エルフの間だけでも協力し合えればいいかな。
 その返答がイエスの場合、今後動きやすくなるし、ノーの場合は逆に動きにくくなる。
 けど、あくまでにくいって程度で、全体の流れを変える事態にはならない。

 私は教皇の言葉に軽く頷く。
 腹を割る気はサラサラないけど、それは向こうも同じだろうし。

「まず、世界の現状認識の相違について、神言教の見解を述べます」

 ん?
 相違?

「ここに書かれている内容では、近い将来世界が崩壊するとそのように示唆されておりますが、神言教の見解では完全崩壊まで少なくとも百年、長ければその数倍の猶予があると計算されております。この相違について、ご説明願いたい」

 やべ。
 これはちょっとまずいかも。

「その認識は間違っています」
「いいえ。間違ってはいないはずです。現在のMAエネルギーの充填率は、確かに危機的状況と言えるでしょう。しかしながら、その補填は可能なはずです。我らが言うところの神言の神、女神サリエル様のその身を削れば」

 侮った。
 力の差は歴然としているし、この交渉がどうなろうとも結果は変わらない。
 そう思ってた。
 けど、私はこの爺様のことを過小評価しすぎていたらしい。
 まさか、そんな正確にシステムのことを理解してるとは思ってなかった。
 ここまで把握されているなら、私の計画を話さざるを得なくなりかねない。
 けど、それは危険だ。
 この爺様なら、魔王や管理者である黒すらたどり着いていない、私の計画の最大のデメリットに気づくかもしれない。
 すなわち、システム崩壊時におけるこの世界の生命の大量死に。

 それがあるからこそ、絶対に教皇は最終的に敵に回る。
 禁忌を知りながらも、人族の生存を最優先にするこの男ならば、必ず。
 だとすれば、この場で私の計画を打ち明けるわけにはいかない。
 教皇がその事実にたどり着いても、私の敵にはならない。
 所詮支配者止まり。
 けど、そこから黒に伝わるのはまずい。
 今その事実が黒に伝わって、計画を白紙にするように言われれば、私に逆らう力はまだない。
 全てがおじゃんになる。
 それは全力で回避しないといけない。

 どうする?
 ここである程度納得のいく答えを出せなければ、不信感を抱かせることになる。
 協力を拒否されるだけならいいけど、そこから真相にたどり着かれたら。
 ない、とは思うけど、断言できないところが怖い。
 ちょっと私の想定を超えて、いろいろ知りすぎてるんだもんよ、この爺様。

「失礼。発言してもいいですか?」

 鬼くんが挙手。
 それを教皇が許可する。

「さきほどあなたがおっしゃったのは、MAエネルギーだけに焦点を合わせたことです。この世界の住人の魂の摩耗に関しては述べられていません」

 しまった。
 ここで鬼くんに神言教よりも詳しく世界の現状と今後の予定を伝えていたのが裏目に出た。
 会話を丸投げしようなんて思ってたけど、今は余計なことを口走って欲しくない。
 けど、ここで慌てて止めるのもおかしい。
 そんなことをすれば、私がいかにもそれらの事実を喋りたくないと暴露するようなもん。
 教皇ならそれすら判断材料にして真相に一歩近づきかねない。
 でも、鬼くんが喋ってもそれは同じ。
 どうすればいいの!?

 というか、鬼くん、まさかそれをわかった上で、喋ってないかこれ!?
 鬼くんの探るような視線は、神言教側だけでなく、私にも向けられている。
 神言教との会話で真実をすりあわせつつ、私の真意を探るつもりか?
 あかん。
 心強い味方を連れてきたつもりが、これとんでもない敵を抱え込んでるのかもしれない。

 ヘルプ、吸血っ子!
 あ、ダメだこれ。
 すわった目つきで神言教側を睨んでる。
 別の意味でコイツも危険!

 っぺーすわ。
 考えなしできすぎたしっぺ返しがここに来て炸裂してますわ。
 どうすっぺこれ?
 前門の神言教教皇、後門の鬼くん。
 ついでに門外吸血っ子。
 私の処理能力超える危機だヒャッホイ!

 KOOLになれ!
 まだ私は大丈夫だ。
 ここで心象を多少悪くしてでも秘密は厳守すれば、まだ立て直せる、はず。

 本体から分体へ通達!
 これより私は生まれてから初とも言うべきガチ対談形態に移行する!
 分体各位は本体の思考をサポートせよ!
 繰り返す、分体は本体の思考をサポートし、口が滑らかに動くように尽力せよ!

 くくく。
 コミュニケーション能力百分の一人前の私でも、万を越える分体の力を合わせれば百人前!
 唸れ私の舌技!
 この場を丸く収めるためにも!
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