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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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36 絶体絶命

 上空ではまだブンブンと蜂の大群が飛び交ってる。
 とにかくこの場を早く離れないとまずい。

 そう思ったけど、その判断は一歩遅かった。

 私の背中に蜂がのしかかる。
 そして、背中に激痛が走った。

 !!!!????

 痛い!
 刺された!
 しかも、刺されたところから、体の中に何かを流し込まれてる!
 毒だ!

 背中に取り付かれたら、私に為す術はない。
 いや、一つだけ手はある。
 MPがまだ残り少ないだとかこの際気にしてる場合じゃない!

 糸を操糸で操り、背中にいる蜂に取り付ける。
 そのまま拘束して、縛り付ける。

 どっせい!

 糸を掴んで背負投げの要領で蜂を背中から突き落とす!

 止めを刺したいけど、それよりも今は逃げることが優先だ!
 私は壁面のすぐ近くにある岩場の影に身を隠す。
 ここなら壁と岩が邪魔になって、蜂の巨体じゃ侵入できないはずだ。

 案の定、私のことを追いかけてきていた数匹の蜂は、しばらく周りをブンブン飛びながら様子を見たあと、諦めて飛び去っていった。

 なんとか助かった。
 けど、無傷とはいかなかった。
 自分の目じゃ見えないけど、私の背中には今、大穴が空いている。
 HPも残り6しかない。
 一撃で30ものHPが持って行かれた。

 驚きはしない。
 私の防御力がだいぶ低いだろうことはわかってた。
 むしろ、これだけの大怪我を負っても生きていられる蜘蛛の生命力に感謝だ。

 毒耐性が高かったのも良かった。
 刺された場所に注入された何かは、きっと毒だったに違いない。
 無効化できたのかどうか、流石にあの状況じゃ、毒のダメージなのか針のダメージなのかわからないけど、毒耐性がなかったら今頃死んでた。

 この怪我じゃ、しばらく動けそうもない。
 自然治療してくれるかどうかもわからない。
 そうなると、前の時みたいに、レベルアップによる全回復を目指したいところ。
 であれば、経験値稼ぎ兼、食糧確保の意味も込めて、さっき拘束して放り投げた蜂を回収したいところ。

 とはいえここから出るのは得策じゃない。
 操糸で糸を引っ付けて、ちょっとずつ引っ張るのがいいかな。


 不意に、嫌な予感がした。

 岩陰からそっと外を覗く。
 そこには拘束されたままもがく蜂の姿が。
 そして、そこにゆっくりと近づく別の魔物の姿。

『エルローバラドラード LV5 ステータスの鑑定に失敗しました』

 蛇だ。
 あいつ、私のことを追ってきたのか!?
 いや、違う。
 同じレベルだけど、多分別の個体だ。
 やばい。
 私から見ればボスクラスの強さの蛇が、この近辺では結構いっぱいいるのかもしれない。
 こんな傷付いた状態で見つかれば、命はない。

 蛇はゆっくりと蜂に近づいていく。
 頼むから、そのまま蜂を持っていっていいから、私に気づくなよ。
 けれど、蛇が蜂に何かすることはなかった。
 正確にはできなかった。

 凄まじい速度で何かが蛇の体を引き裂いた。

 は?
 私の目が狂ったのか?
 あの蛇が、まるで紙切れのように、簡単に細切れにされた。
 頑健な鱗に守られた、あの蛇が。
 私と同等の素早さを持つ蛇が、反応さえ許されずに。

『地龍アラバ LV31 ステータスの鑑定に失敗しました』

 それは、悠然とそこにいた。
 龍という名前とは裏腹に、そのフォルムは狼なんかに近い。
 大地を踏みしめる四肢。
 長く伸びた尾。
 翼はない。
 そこには、威風堂々たる龍の姿があった。

 やばい。
 蜘蛛としての本能、人としての理性、魂からの叫び、そのどれもが声を揃える。
 あれはダメだ。
 絶対に勝ち目がない。
 そもそも、勝敗とかそんな次元で相手ができない。
 あれから見たら私は、ただの餌にしか見えない。
 獲物ですらない。
 視界に入った時点で喰われるのが確定する。
 それだけの隔絶した存在だ。

 レベルが高いだとか、そんなことは些細な問題でしかない。
 どうあってもあれはダメだ。

 地龍アラバは、バラバラになった蛇を一つずつ咀嚼していく。
 私は必死で息を潜める。

《熟練度が一定に達しました。スキル『隠密LV1』が『隠密LV2』になりました》

 うるさい!
 お願いだから黙ってて!
 あれに気づかれたらどうするんだ!

 地龍アラバは、蛇を咀嚼し終えると、蜂には目もくれずに立ち去っていった。

 た、助かった。
 最後までこっちに気付かなかったのか、それとも気づいてて見逃されたのか、どっちかわからないけど、とにかく助かった。

 死にそうな目には何度もあってきたし、現に今死にかけてるけど、あれほどまでにやばいと思ったのは初めてかも知れない。
 思い出すだけでも怖い。

 ダメだ。
 あんなのが徘徊してるこのエリアは、何としてでも早急に脱出しないといけない。

 周りを見渡す。
 ここは私が落ちてきた縦穴の下だ。
 穴の直径は100メートルくらいはありそうだ。
 深さは、それ以上かな。
 なんせ高さがよくわからない。
 蜂の大群が壁のように上空を覆い尽くしていて。

 距離があって鑑定が働かなくてよかった。
 でなきゃ、あんな数鑑定しちゃったら頭痛で気を失ってたかもしれない。
 元のエリアに戻るには、あの大群に向かっていかなきゃならない。
 しかも、崖登りをしながら。

 ムリだ。
 崖に横になって張り付いた状態じゃ、戦いようがない。
 その状態だと、素早くも動けないし、糸を出すにも狙いが定まらない。
 私の長所が、完全に封じられるフィールドだ。
 対して蜂どもは空中を縦横無尽に駆け回れる。
 勝ち目がない。

 だからといって、あんな化物がいる地上を探索するのも自殺行為だ。
 縦穴の底にはいくつかの通路がつながっている。
 イチかバチか、あれが去っていったのとは別の通路に進んでみる?
 できない。
 こんな重傷じゃ、あんな化物じゃなくても、魔物に遭遇したらその時点で終わる。

 やばい。
 これは、詰んだかもしれない。
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