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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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257 文字って素晴らしい

 喋れないなら文にして渡せばいいじゃない。
 私って天才。
 あらかじめ言いたいことを書いた本を渡せば、余計なコミュニケーションを取らなくても済む。
 あとは向こうが勝手に本を読んでくれればいいだけなんだから。
 しかも、私は本を読んでる間、別に近くにいなくてもいいし。

 早速本を書きまくった。
 これで今まで接触を渋ってた連中にもアタックできるぜ!
 ヒャホイ!

 まずは妹ちゃん。
 妹ちゃんには今後、密かに夏目くんの動きを支援してもらうことになる。
 まあ、それもそこまで関わらせるつもりはないけど。
 あくまで妹ちゃんは支配者スキル取れたらラッキーくらいの気持ちで。
 駒として見るのはやめておく。
 兄様ラブが暴走していつ裏切るかもわかったもんじゃないし。

 というわけで、簡単な指示だけ書いたメモ書きみたいなものを渡しておく。

「なんですか、これ?」
「読む」

 それだけ言ってさっさと退散。
 下手に会話を続けると兄様話が始まってしまう。
 そうなったら解放されるまでに少なくとも一時間くらいはかかってしまうわ。
 最低で、一時間。
 そんなん付き合ってられん。

 ついでに夏目くんの様子もちょっと覗いてみる。
 ……見なかったことにしとこう。
 薬中でもあそこまで酷くないんじゃないか?
 大丈夫か、これ?
 うーん。
 まあ、支配者スキル取らせたら、適当なところで処分するからいいか。
 夏目くんの次回の活躍にご期待下さい。

 さーて、次はアーグナーのとこ。
 エルフはもうほとんど魔族領から締め出すことに成功してる。
 魔族の危険分子も軒並み排除済み。
 正直アーグナーに頼むことも少なくなってきてる。
 アーグナーには戦争の準備を進めてもらえばいいかな。
 このままのペースで行けば、あと数年で大規模な戦争を人族に仕掛けられそうだし。

 戦争が済んだら、エルフのところを滅ぼしに行く。
 これは決定事項。
 ただ、ポティマスがそう簡単にくたばってくれるわけがない。
 結界内に入り込んだ分体からの情報で、それなりにエルフの里の内情はわかってきたけど、肝心のところには侵入できてない。
 すなわち、ポティマスの本体がいる場所。
 侵入どころか、どこにあるのかもまだ発見できてない。
 念入りに隠してるっぽいね。
 流石に長い間、黒と魔王の二人から逃げ切って生きてるだけはある。
 まあ、黒に関してはポティマスを倒すのを躊躇してるだけだろうけど。

 ポティマスの本体を見つけて、始末する。
 その準備が出来るのは多分戦争が終わってから。
 ま、焦る必要はない。
 じっくりと包囲網を築いていけばいい。

 その包囲網に参加してくれそうなところに、声をかけないとね。
 今まで後回しにしてきたけど、そろそろ接触しとかないといけない。
 おそらくポティマスの次に難義しそうな相手だけに、慎重にやらなきゃ。

 これから接触するのは神言教の教皇。
 そして、節制の支配者。
 私がシステムを崩壊させるのに必要な支配者権限、その一つを持っている人物。

 分体による情報収集で、教皇が何を目的に動いているのか、それはだいぶわかった。
 おそらく、アーグナーと似ている。
 アーグナーが魔族を生かすことに手段を選ばないように、教皇は人族を生かすために手段を選ばない。
 ただ、アーグナーと違って、教皇は支配者。
 それも、魔王の話が本当ならば、禁忌をカンストさせた。
 禁忌をカンストさせて、なお人族を生かす道を選んだ。
 並の覚悟ではできない。
 場合によっては、ポティマスなんかよりずっと厄介な敵になりかねない。

 本を書く。
 かなりの分量になってしまった。
 書いた内容は、世界の現状と、転生者について、今後の魔族の動き、エルフを滅ぼすための算段とその協力依頼。

 世界の現状は教皇もきっと理解しているだろう。
 でなければ、女神教に戦争を仕掛けた理由が見当たらない。
 いつの時代も、どこの世界でも、宗教戦争というのは泥沼化するに決まっている。
 改宗なんかそうそうできるものではないし、どうあがいてもしこりが残る。
 さらに言えば、神言教と女神教は教義は違っても、崇めている神は一緒。
 それを教皇が知らないわけがない。
 いろいろなリスクを背負った上で、なおこの時期に女神教の力を削ぐ方針を打ち出したのには、世界の現状をきちんと理解したからこその決断が伺える。

 転生者についても、ある程度は把握してると思う。
 なんせ、教皇は転生者を徴用しているのだから。
 本人の口から聞いているはず。
 私が補足で少し付け足した内容は、なぜ転生者が転生する羽目になったのかという、先代勇者と魔王の逸話くらいかな。
 Dについては触れないでおいた。
 そのほうがいい。
 あれは知るだけで不幸になりかねない。
 だって、ガチの邪神だし。
 そんな邪神にこの世界の命綱を握られてるとか、ねえ?
 教皇の人、ストレスで胃に穴が開くんじゃないか?

 今後の魔族の動きを書いたのは、半分賭けみたいなもんだ。
 教皇がそれを受け取って、どう動くのかは見極めたい。
 もし、その情報を悪用して立ちふさがるようなことがあれば、残念ながら容赦はしない。
 はっきり言って、教皇がどう動こうが、戦争がどうにかなるものじゃない。
 魔王の強さはこの世界でも飛び抜けている。
 チート転生者ですら、魔王には敵わない。
 魔王一人だけでも世界の半分は滅ぼすことができる。
 私と黒が介入しなければの話だけど。
 その魔王を相手に、教皇が取れる手段なんてたかがしれている。
 どっちに転んでも、結果は変わらない。

 そう、結果は変わらない。
 戦争回避のために楯突こうが、エルフの殲滅に協力しようが、教皇の行き着く先に変化はない。
 私の最終的な目的のためには、支配者権限が必要。
 そして、教皇はそれを認めるはずがない。
 であるならば、殺して奪い取るしかない。

 転移で教皇の目の前に現れる。
 ちょうど転生者である草間くんと話をしていたようだ。

「何者かね?」
「若葉さん!?」

 動揺を見せず、さりとて警戒した様子で問いかけてくる教皇。
 あからさまに動揺して声が裏返っている草間くん。
 貫禄が違うわー。

「これを」

 書いた本をその場に置く。
 そんでもって転移。
 後どうするかは教皇しだい。
 さて、どうなるかな?
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