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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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254 鬼、蜘蛛

 鬼くんのいる異空間に転移。
 鬼くんはまだ気を失っていた。
 まあ、あれだけボコボコにされれば、すぐには目を覚まさないわな。

 仕方がないので、少しだけ回復を施す。
 あんまり回復しすぎちゃうと憤怒が再発するかもしれないので、ほどほどに。
 回復してから様子を見ていると、しばらくして鬼くんが呻きながら目を覚ました。

「う、若葉さん?」

 鬼くんが小さな声で呟く。
 はいはーい。
 みんなのアイドル、若葉姫色ですよー。
 あー、メンドイ。
 なんで私がDの代わりをせにゃならんのかと。

「こっちでは白と呼ばれている」
「そう。僕はラース。呼ぶのならそうしてくれないかな?」

 ラース、憤怒、ね。
 どういう経緯でそうなったのかは知らないけど、鬼くんも元の名前を呼ばれるのが嫌な様子。
 ならこっちも好都合。
 お互い詮索はなしで、名前に関してはこれ以上触れない方向で。

「それで、白さん。ここはどこ?」

 まあ、気になるよね。
 私たちが今いる異空間は、ほぼデフォルト設定のもの。
 つまり、何もないだだっ広い空間。
 何もないので光もない。
 真っ黒空間。
 ただし、空気だとかの生命に必要なものだけは取り込んでる。
 それもないと、窒息死するどころか、真空状態の異状圧力で死ぬし。
 それ以外だと、暗くてもものは見えるように設定を変更してる。
 今の鬼くんの視界には、何もない真っ黒な空間に、ポツンと私の姿だけが見えてる状態。
 そりゃ、ここはどこってなるわな。

「私が作った異空間」
「異空間。やっぱりか」

 意外にも、鬼くんはやっぱりか、なんて呟いた。
 ここが普通の空間じゃないってわかってたのかな?

「僕も空間魔法を持ってるから。ここが普通の空間じゃないってことはわかったよ」

 顔には出てなかっただろうけど、私の疑問を読み取った鬼くんが説明を付け足す。
 ああ、そういえばGOBもどきな事してたもんね。
 空間魔法持ってるわな。
 一回干渉して中のもの覗き込んだのに忘れてたわ。
 まあ、正直私の脅威になりそうなレベルじゃなかったから、あんま重要視してなかった。

 空間魔法はレベルが上がれば、私にもダメージを通しかねなくなる。
 私が空間魔術に特化してるのもあるけど、空間魔法の進化先である次元魔法は、あのDに攻撃を加えたという実績がある。
 それはかなりの裏技なんだろうけど、過去に実例があるってことは、再現できないってわけじゃない。
 だから空間魔法持ちは警戒に値するわけだけど、今のところ鬼くんのレベルでは私には届かないと判断した。

「いろいろ聞きたいんだけど、もしかして、この世界には僕ら以外にもクラスのみんなが生まれ変わってたりする?」

 ん?
 そこ聞く?
 あー、まあ、そりゃそうか。
 前世の知り合いが目の前にいたら、そういうことも考えるよね。
 ましてや鬼くんは憤怒で暴走してて人とコミュニケーションを取れる状態じゃなかったし。
 転生者の事情なんて知るすべはないわな。

「全員いる」
「全員。それは流石に予想してなかったなー」

 予想してなかったという割にはあんまり驚いた風じゃない鬼くん。
 私が目の前にいる時点で何パターンか想定してたに違いない。

 鬼くんの前世、笹島くんは結構頭の回転速いイメージだったな。
 なんていうか、その場の空気を読んで言葉を選んでる感じ。
 世渡りがうまいっていうよりかは、必死で和を乱さないようにしてるって感じだったけど。
 まあ、空気を読んで発言できるってことは、それなりに頭の回転が速いっていうことでもある。
 ここでいう頭の回転っていうのは、必ずしも勉強が出来る出来ないっていう意味じゃない。
 勉強ができてもこいつバカだなってやつは結構いるし、その逆に勉強できなくてもこいつ出来るなってやつもいる。
 笹島くんの場合、勉強はそこそこだったけど、そういう意味での頭の良さっていうのは結構あった。

「それじゃあ、山田俊輔と大島叶多の二人は、元気にしてるか知ってる?」

 知ってる? という疑問系に対して、鬼くんは答えが返ってくると確信している様子。
 まあ、私がクラス全員いるってサラっと言った時点で、転生者の情報を掴んでいるっていうのは予想されたかな。
 別に隠してるわけでもないし、そのくらいなら教えてやってもいい。
 どうせ、私が情報を掴んでいるってところまでしか鬼くんには分かりようがないし。

「両方元気」

 片方性転換してるけどな!
 元気は元気だし、嘘はついてない。

「そっか。それは良かった」

 そこだけは本心のように表情を緩ませる鬼くん。
 うむ。
 ここまでで分かったこと。
 鬼くん私のことめっちゃ警戒してます。
 まあ、そりゃそうだよねー。
 いきなり見ず知らずの黒い男にボコボコにされて、目が覚めたら前世の知り合いがそこにいた。
 しかも異空間で。
 これで警戒するなっていう方がムリってもんでしょ。
 あー、あるいは鬼くんがもう少し単純だったら、頭真っ白状態で私に疑問をぶつけまくればよかったんだろうけどねー。
 変に頭が回る分、いろいろ考えちゃってどツボにはまってる感じかな。

 まあ、私としちゃ、そっちのほうが好都合か。
 言葉数が少ないほうが私もありがたい。
 なんていったって、私そんないっぺんに喋れないし!
 さっき魔王と黒相手にそこそこ喋れたのは、半分が魔王相手だったからっていうのと、もう半分はあらかじめ言うことを決めてセリフ練習しといたからだもんよ!
 こういう、言うこともなにも決まってない質疑応答に私がスラスラ答えられると思ったら大間違いだ!
 そんなわけで鬼くん。
 悪いがかなーり時間がかかることを覚悟してくれたまえ。
 なーに、この空間にいる限り、外ではそこまで時間が経たない。
 思う存分時間をかけてくれたまえ。
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