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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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248 吸血鬼の性質

 吸血っ子の急激な変化に戸惑いを隠せない私です。
 えー、マジでなんなん?
 確かに旅してる最中から多少反抗的なとこもあったけど、今ほどじゃないし。
 何より逆ハー形成するような性格じゃなかったっしょ。

 吸血鬼としての側面が徐々に出てきたっていうのならわかるけど、ここまで急だとなー。
 それに、吸血っ子自身が自分の変化に気づいてないフシがあるのが怖い。
 知らぬ間に何らかのスキルの影響を受けてるとか。
 心当たりがあるだけに、違うと言えない。
 あいつ嫉妬のスキル持ってるし。

 けど、嫉妬の影響だけじゃ、吸血っ子の行動全部を説明できない。
 怒りっぽいのと反抗的なのはそれっぽいけど。

 というわけで、吸血鬼のことは同じ吸血鬼に聞くのが一番。
 第四軍に突撃してメラを確保。

「あの、いきなり来られると困るのですが」

 いいからいいから。
 どうせ今やってたのは書類仕事。
 そんなもん後でもできる。
 愛しのお嬢様の大問題なんだからそっちを優先すべきだって。

 渋るメラを拉致。
 とりあえず吸血っ子の一日の様子を見せてみる。

「どう思う?」
「そうですね。これは確かに、仕事を投げ出して見てよかったと思います」

 私の問いに、メラが神妙な顔で答える。
 無言で先を促す。

「まず、お嬢様の行動は吸血鬼としては間違っていません。現に私も同じような衝動はあります」

 ほほう。

「異性を術を使って誘惑する。これは食料の確保と、新たな眷属候補の選定、この二つの意味を持ちます。異性であるのは、やはり好みの問題でしょうが」

 メラ、お前もか。

「何やら蔑まれたような気がしますが、吸血鬼としては正しい姿ですから。それに、私はお嬢様のように実行には移していません。あくまで、そうしたいという欲求があるというだけです」

 開き直り、そんでもって性癖暴露。
 なんて奴だ。

「あの、お願いですからそのゴミを見るかのような表情をやめてください」
「冗談だよ」

 そう、冗談冗談。
 決してメラのことを女の敵とか、男の中のクズとか思ってないってば。

「それで、話を戻しますが、お嬢様は自分の欲求をそのまま行動に移しているように見受けられます。それも、一切の躊躇いや罪悪感もなく」

 うん。
 そこが問題なんだよね。

「私の意見でよろしければ、お聞かせしますが?」

 頼んます。

「恐らくですが、お嬢様は成長の過程で人としての常識が、そのまま吸血鬼としての常識に上書きされてしまったのではないかと思われます。でなければ、以前の吸血鬼になりたてだった頃の私のように、人としての意識が邪魔をして、わずかでも懊悩とするはずです。それがお嬢様には一切見られない。人としての常識が、すっぽりと抜け落ちてしまっている、もしくは、吸血鬼としての思考に人のそれが追いやられている。そのような状態でしょう」

 なるほどねー。
 一応私と同じような意見か。

「原因は?」
「わかりません。私の場合、今でも人としての思考は残っています。ここまで綺麗さっぱり吸血鬼としての本能に飲まれているというのは、経験したことがありませんので」

 うーん。
 原因が分かれば対策のしようもあるんだけど。
 それがわからないとなると、こっちも対処のしようがない。

「いくつか考えられそうな要因はありますが、どれがそうなのか、もしくは、それらが複合した結果が今のお嬢様の状態なのか。私にもわかりません」

 ふむ。
 一応聞いておこうか。

「まず、お話に聞いた嫉妬というスキルの影響が第一に考えられます。これは、私よりもむしろ白織様の方が詳しいでしょう」

 そうね。
 吸血っ子の行動の端々には、嫉妬の影響と思われるものがいくつかある。

「次に、お嬢様が生まれながらの吸血鬼であるといことです。お嬢様は私と違い、生まれながらの真の吸血鬼です。いくら人の手によって育てられても、その性質は完全に吸血鬼のそれ。今まで人としての行動を取っていたことの方が逆に間違いだったのではないかということです。何の影響でそれが表面に出てきたのかはわかりませんが」

 ああ。
 そういえばそうだったわ。
 吸血っ子はDからもらった転生特典のスキルで、生まれながらに吸血鬼。
 人としての期間は今世では存在せず、前世のみ。
 そう考えると、辻褄は合うか?
 今まで人としての意識があったのは、前世の記憶に引っ張られていたからで、成長するに従って吸血鬼としての意識が強くなったとか。
 ありうるな。

「それと、お嬢様はかなり欲求不満の様子。それを溜め込んでいるからああなっているのかもしれません」

 ん?
 欲求不満?
 なんで?

「ああ、失礼。言葉が足りませんでした。欲求不満とは、戦闘に対するものです。吸血鬼は戦うことに快楽を覚える、戦闘種族なんです」

 え、そうなの?
 吸血鬼って、脳筋だったの?
 うーむ。
 どうも私の吸血鬼のイメージと合わないなー。
 と、思ってたけど、某旦那とかを思い出すと納得しちゃった。

 そっかー。
 吸血鬼って戦闘狂だったのかー。
 それは、知らなかった。
 確かに、吸血っ子にはこの頃戦闘をさせていない。
 下手に魔物を倒しちゃうと、レベルが上がっちゃうからね。
 ステアップのスキルが揃うまではレベルを上げさせないようにしてきた。
 そのツケが、吸血っ子の欲求不満に繋がっていたと。
 んでもって、溜め込んだストレスが吸血鬼としての覚醒を早めた。

 筋は通ってるな。
 前世の記憶があるから、心の奥底から吸血鬼として染まりきってはいないと思うけど、ストレスを忘れるために本能に忠実な行動をしているとしたら、理性なんか歯止めにはならんわな。

 正直すまんかった。
 吸血っ子がこうなったのは半分私の責任か。
 よし、では、存分に暴れてもらおう。
 ちょうど良く、相手はすぐ近くまで来てるし。

 相手も同じ支配者スキル持ち。
 しかも、レベルは向こうの方が上。
 実戦と殺戮を繰り返した、鬼。

 対する吸血っ子は、レベルは1だけど、英才教育でステータスは高くなってるはず。
 鍛えるだけ鍛えたスキル。
 ただし、実戦経験は無し。

 うん。
 なかなかいい勝負ができそう。
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