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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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236 竜、落とし穴、それなんてモンハ……

 ちょっと想定外の事態が発生した。
 行方不明になったオーガくんを発見したんだけど、絶賛氷龍と死闘を繰り広げている最中だった。
 うわーお。
 見るからにバーサークしております。
 もう完全に荒ぶる鬼です。
 人の名残もありませんがな。
 ダメだこりゃ。

 魔の山脈の守護者である氷龍も、かなり強いはずなんだけど、オーガくんの方が圧倒している。
 見た感じスキルはさほど育っていないように見えるけど、ステータスが半端ないっぽい。
 魔剣の一撃で、氷龍の鱗があっさり切り裂かれている。
 それが二刀。
 まさに鬼神乱舞。

 相性が悪いっていうのもある。
 オーガくんが使う魔剣の片方は火属性。
 氷属性の氷龍には厳しい。
 それに、魔法を使わないっていうのも大きい。
 龍種特有の魔法阻害効果も、相手が魔法を使ってくれないのなら無意味になる。
 魔剣の属性攻撃は広義では同じ魔術だけど、魔法ではないのでシステム的に効果が阻害されない。
 なので、苦手属性の炎をバンバン受け、氷龍は追い詰められていっている。

 私が地龍にあんだけ苦労したっていうのに。
 相性の差って重要だわー。
 私なんだかんだ搦手プラス魔法っていう特殊な魔法職だったからなー。
 オーガくんはガッツリ物理職。
 私とは性質が違いすぎる。

 そうそう。
 龍で思い出したけど、吸血っ子に何やら変なスキルが生えたっぽい。
 発動させてるのは授業の模擬戦の時。
 吸血っ子の体に白い鱗が出現していた。
 相手を勤めていた教師の魔法が、吸血っ子の手前で掻き消えた。
 龍鱗系列のスキルにしか見えなかった。
 しかも、完全に魔法を消し去ってみせたことから、相当レベルの高い。
 龍種限定のはずのスキルをどうやって手に入れたのか?
 思い当たるのは嫉妬のスキル。
 嫉妬の支配者の称号に付随する特典スキルが、龍鱗系列のスキルだったんじゃないかと思ってる。
 何それ羨ましい、と、嫉妬のスキル持ちに嫉妬してしまったわ。
 だって、吸血鬼なんてレアスキル持ちで、しかも龍種限定なんて激レアスキルまで持ってるなんて。
 なんて贅沢な。

 不死体のスキルのおかげでもともと高かった防御力に、龍鱗の防御が加わった。
 見た目に反して吸血っ子堅すぎ。
 人のことは言えないけど、死ぬ気ないっしょ。

 おっと。
 話がそれた。
 そして、そんな間にオーガくんと氷龍の勝負は決着がついていた。
 オーガくんの勝ちだ。

 まあ、氷龍も頑張った。
 けど、相性が悪い上に、憤怒が発動した相手じゃ分が悪すぎた。
 それに、最後の最後、吹雪を目くらましにして逃走を図ったのはいい判断だと思う。
 地龍だったら死こそ誉れとか、そんな感じで最後まで戦い続けたかもしれないけど、敵に背を見せて逃げるのも時には必要。
 生きていればいいのよ。
 生きていればいずれリベンジの機会もあるかもしれないし、死んじゃったら元も子もない。
 氷龍は間一髪オーガくんから逃げおおせることに成功した。

 オーガくんは飛び去った氷龍から興味を失ったのか、別の方向に進み出す。
 その方向は、あかんなー。
 まあ、氷龍とバトルしてる時点でイヤな予感はヒシヒシとしてたけど。

 オーガくんの向かった先、魔の山脈を越えたそこには、穏やかな大地が広がっている。
 山脈と海に囲まれ、外界と隔離された奇妙な空間。
 そこには、魔物をおらず、争いもなく、差別もなく、人族も魔族も平等に暮らす地があった。

 この世界にあって、異質な大地。
 明らかに、何者かの手が加えられた、人工的な楽園。
 その何者かは、一人しかいない。
 黒、管理者ギュリエディストディエス。
 あの神にしか、こんな場所を作り出すことはできない。

 まあ、目的はわかる。
 ここは魂の静養地。
 システムに耐え切れなくなってきた魂を保護し、争いから遠ざけて寿命を延ばそうとしている。
 そうしなければ、いずれ魂が崩壊していますから。

 保護された人魔の数は、相当多い。
 それこそ国一つがそこにあるような感じだ。
 それが意味することは、それだけの数の人魔が既に限界間近だということでもある。
 いずれこの世界は崩壊する。
 それは目に見えている。
 だけど、もう少し余裕があると思ってた。
 それが、この保護地を発見してしまったことで見直さざるを得なくなった。

 ぶっちゃけ、詰んでる。
 魔王はそのことを多分知らない。
 人族と魔族の間に大きな戦争を起こさせれば、足りなくなったMAエネルギーを補充すれば、この世界は救われると思っている。
 けど、話はそう単純じゃない。
 もはや、MAエネルギーを補充しても間に合わない。
 エネルギーの供給源が減り始めようとしてるんだから。
 しかも、私の予想が正しければ、それは徐々に始まるのではなく、一気に来る。
 気づいた時には手遅れになるくらい、一気に。

 黒は、そうなることをある程度予想してるはず。
 それでも、有効な手段を取れないでいる。
 ここらへんが黒がダメな理由でもあるけど、板挟みになって身動きできない。
 まあ、黒にもいろいろと葛藤があるんだと思うけど、ウジウジ悩んでる間に世界滅亡の危機ですよ。
 もうちょっとこう、潔く選択してればここまで末期になってなかっただろうに。
 バカなやつ。

 そして、オーガくんが保護地に到達すれば、殺戮が始まるのは目に見えている。
 憤怒に理性を完全に溶かされちゃってるし。
 もはやあれは転生者でもなんでもない。
 ただの、憤怒の化身。
 一匹の魔物。
 それを黒が放置するとは思えない。

 どうすっかなー。
 イヤ、もうやることは決めてんだけどね。

 案の定、私が張った空間の歪に、黒が引っかかる。
 ふふふ。
 なんか蜘蛛の巣みたいな要領だし、こういう罠は私得意なのよねー。
 で、分体わんさかの蜘蛛地獄にボッシュート。
 ついでに、Dの家からかっぱらってきた時計を放り込む。

 てーてれれってれー!
 時空操作時計ー!
 D謹製の時間と空間を操る時計。
 一回使いきり。
 今回は黒を閉じ込めた異空間の時間の流れを、こっちよりもめちゃくちゃ遅くします。
 これで、数年くらい黒は出てこれない。
 Dの家から拝借した便利グッズは他にもいくつかあるけど、どれもこれも性能やばくて使いどころに困る。
 Dなりの、私への支援物資のつもりなんじゃないかなーと思ってるから、ありがたく使わせてもらうけどね。
 そういえば、呪いのトランプだけいつの間にかなくなってたな。
 あんなやばいもんなくすとか。
 どっかで悪用されてなきゃいいけど。

 黒を封印できたことだし、これでオーガくんを邪魔するやつはいなくなった。
 思う存分殺戮に興じるがいいさ。
 そのほうが、保護地にいる連中のためでもある。

 黒が出てきたときが怖いけど。
 まあ、その時はその時。
 オーガくんには生贄になってもらおう。
 どうせ、もう憤怒に飲まれて使い物にならないし。
発売されましたねー。
執筆放って一狩り行っていいですか?
ダメですか?
そうですか。
チクショウ。
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