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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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鬼9 冷静に

 新しく錬成した雷の魔剣を振る。
 今度の魔剣は刀にしてみたので、魔刀と言ったほうが正確かもしれない。
 炎の方もそれに合わせて錬成し直しておいた。
 二刀流でいくなら左右同じ形状の方が安定すると考えたからだ。
 左右別別の剣を使うには、僕の技量では足りない気がした。
 僕の剣技は素人に毛が生えた程度。
 剣の才能というスキルはあるけど、純粋な剣の技量では今まで戦ってきた人間の方がみんな高かった。

 特に、この前戦った爺さんは凄かった。
 闘神法と魔闘法を同時に使って、それでほぼ互角。
 ステータスでは確実に僕のほうが上回っていると言えるのに、それでも勝つか負けるかわからないギリギリの勝負を強いられた。
 純粋な剣技の腕が、ステータスの差を覆していた。

 僕の今の種族はオーガシャーマン。
 魔剣の生成をより効率的に行うために、魔法寄りの進化を選択していた。
 それに間違いはなかったと思う。
 幻想武器錬成は僕の最大の能力で、それを伸ばしていくのはすなわち僕の戦力を上げていくことに直結する。

 実際、幻想武器錬成のスキルレベルが上がって、増えた特殊能力付加の内容は、人間と戦う上で大いに役立ってくれた。
 最初に森の中で人間の小さな集団に散発的に襲われた時は、まだ魔剣の力を使いこなしていなかったせいで少し危ない場面もあった。
 そこから反省して、迎撃のための準備を進めた。
 次に攻めてきた人間の大規模な集団は、自爆する魔剣を地雷替わりにすることによって、いとも容易く全滅させることができた。
 魔剣は使い方次第でいくらでも化ける。
 僕はこの世界の住人よりも、科学力が優れた地球の知識があり、それを生かすことができるのも大きな強みだ。

 けど、全部が全部うまくいくわけではない。
 即席の大砲は用意した筒の数が少ない上に1度使うだけで壊れてしまう不良品だった。
 その上命中率も低く、魔剣を2本必要とする割には威力も低い。
 投げたほうがよっぽどましだった。

 地雷も、最初こそうまくいったけど、仕組みがバレてからは役に立たなかった。
 地球だったら撤去にも手間がかかるえげつない対人兵器だけど、この世界には魔法なんて便利なものがある。
 まさか地雷原全域を魔法で攻撃して、一気に暴発させて対応するなんて思いつきもしなかった。
 次の策を用意しておいて本当に良かった。

 それも、瞬間移動なんてふざけた魔法で台無しにされたけど。
 あれは反則だろう。
 爺さんが何もない空間からいきなり現れるんだもの。

 空間魔法というやつらしい。
 使い手は、僕のことを狙撃した魔法使いの、これまた爺さん。
 この世界の爺さん恐ろしすぎるでしょ。
 あの時は死ぬかと思った。
 というか9割方死んでたよね。
 咄嗟に投げた剣が運良く騎士の1人に命中して、運良く1撃で殺すことができて、運良くレベルアップができた。
 幸運に幸運が重なった激運で、なんとか命を繋ぐことに成功したって感じだ。

 その後憤怒を発動して逃げるのは、ある種の賭けだった。
 憤怒は発動するとステータスが大幅に上昇する。
 闘神法と合わせれば、僕のステータスは元の20倍くらいになる。
 現在のステータスが大体1000前後。
 闘神法で物理系ステータスがプラス1000され、大体2000くらい。
 その10倍で20000。
 憤怒は全てのステータスを10倍にする効果があった。

 ただし、このとんでもない能力にはデメリットが存在する。
 それも、とてつもなく危険な。
 それは、理性の消失。
 憤怒を発動すると、僕の意識は吹っ飛び、ただ暴れ続けるだけのバーサーカーとなってしまう。
 しかも、その状態から戻って来れるかは運次第。
 ブイリムスを殺した時にはなんとか自我を取り戻すことができたけど、そのまま元に戻れなくなって、ただの獣に成り下がっていてもおかしくはなかった。

 なので、憤怒を使うのは本当に最後の手段。
 それも、なんとか自我を保てる短い時間だけ。
 それでも意識が怒りに塗り潰されて、制御が難しくなってしまうくらいだ。
 発動してからちゃんと逃げるという判断ができたのは、僥倖だった。

 もしかしたら憤怒を発動したままなら勝てたかもしれない。
 けど、おそらくその時にはもう戻れなくなっている。
 それは、僕という意識の消失にほかならない。
 そんな状態で勝っても、勝ったとは言えない。
 相討ちみたいなものだ。

 正直、その前の戦いであっさりと勝つことができたので、人間というものを舐めていた。
 まさか憤怒を使ってまで逃走する羽目になるとは思ってもみなかった。
 幻想武器錬成を磨いてきたことは間違いじゃない。
 けど、それだけじゃダメなんだね。

 刀を振るう。
 イメージは、この前戦った爺さん。
 爺さんの幻影を相手に、刀を振るい続ける。
 けど、勝てない。
 イメージの中の爺さんには、闘神法を発動させていない状態ではどうあっても勝ち筋が見えてこない。
 それでも刀を振るい続ける。
 冷静に、相手を殺す手段を考える。
 怒りに任せれば勝てる。
 けど、それだけじゃいつかは討伐されてしまう。
 冷静に、理性を働かせて、その上で殺戮の刃を研ぐ。

 空間魔法もスキルポイントを支払って獲得した。
 10000ポイントも要求されたけど、取っておいて損はない。
 相手の戦術を吸収するのも、手っ取り早く強くなる方法として間違ってない。
 自分がやられて厄介だと思ったことは、相手にとっても厄介なはずなのだから。
 尤も、空間魔法はレベルの低いうちは使い物にならないので、こちらも鍛錬が必要だけど。

 刀を振るう。
 次は確実に殺せるように。
 剣技の腕を磨く。

《熟練度が一定に達しました。スキル『剣の才能LV3』が『剣の才能LV4』になりました》

 冷静に、冷静に、この内から沸き起こる怒りを静めるように。
 ただその殺意を、刃に乗せる。
 鋭く、ただただ鋭く。
+注意+
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