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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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血10 変な女とやばい女

「アリエル、か?」
「そうだって言ってるじゃん。なんで語尾が疑問系なの?」

 フードの女と変な女が対峙する。
 男たちは急に現れた闖入者にどうすべきか判断ができないらしく、フードの女にチラチラと視線を送っている。
 それを、フードの女は意に介さず沈黙する。

 フワッと、私の体が浮いた。
 正確には、誰かに背後から持ち上げられた。
 クルッと反転させられ、私を持ち上げた人物と目が、合わなかった。

 なんで、なんで若葉姫色がここにいるの!?
 というか、どうして白いの?
 なんで目を閉じてるの?
 死んでなかったの?
 それとも、私と同じで転生してるの?
 だとしたら、どうして以前と同じような姿なの?

 溢れ出す疑問をよそに、若葉姫色は目を閉じたままの状態で私のことを持ち上げている。
 目を閉じているのに、まるで私のことをジーッと見つめてきているかのようだ。
 しかも、得体の知れない危機感が私を襲う。
 こいつ、何がどうとかはわからないけど、やばい。

《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV2』が『恐怖耐性LV3』になりました》

 スキルのレベルが上がったけど、ちょっと遅かった。
 若葉姫色の視線が、目を閉じてるけど、私の股間部分に行く。
 顔色は変わらなかったけど、何かを察したらしい。
 そっと私を地面に下ろした。

 メラゾフィスが若葉姫色と私の間に足を引きずりながら割って入る。
 警戒感も顕に、若葉姫色を睨みつける。
 そんなメラゾフィスに若葉姫色は無造作に近付き、回復魔法を施した。

「何?」

 驚くメラゾフィス。
 私も驚いた。
 メラゾフィスは気力と根性だけで立っている状態で、その傷は酷いものだった。
 それが、一瞬で完治していた。

「敵ではないのか?」

 メラゾフィスの問に、若葉姫色は無言で頷く。
 それでも、メラゾフィスの警戒が解かれることはなかった。

「ふむ。この体では鑑定が使えないのが痛いな。本物なのか、偽物なのか。その判断がつけられんな」
「本物ですー。むしろ他人の体使ってる偽物に言われたくないですー」
「これは耳が痛いな」

 フードの女と変な女の間で動きがあった。

「でさあ、ポティマス君、いや、今はちゃんか。どうして君ここにいるの?」
「さて。なぜだろうな?」

 フードの女が惚ける。
 その瞬間、空気が変わった。

「さっさと吐け」

 何が起こったのか、理解できなかった。
 突如轟音と衝撃が吹き荒れ、咄嗟に目をつぶった。
 次に目を開けた時には、男たちがいなくなっていた。
 あるのは、男たちだったと思われる、血の染みだけ。

「本物か」
「最初からわかってるでしょ?さあ、吐け」

 さっきまでのヘラヘラした空気が嘘のように、女の身から強烈な気配が放たれる。
 見ているだけで吐き気さえこみ上げてくる、醜悪で凶悪な気配を。

「どうやら、根幹は変わっていないらしい。どういう風の吹き回しであのような阿呆を演じているのか知らんが。これはいささか分が悪いな」
「分かったなら無駄な抵抗なく目的を吐いてもらおうか?それとも強制的に吐かされたい?」
「どちらも断る」

 次に起こった出来事は私の想像を超えていた。
 フードの女が自らの頭を魔法で吹き飛ばした。
 頭部を失い、ごとりと路地に倒れる女の死体。

「チッ!人の体だからって好き勝手やりやがって」

 変な女が吐き捨てる。
 けど、くるりとこちらを振り向いた時には、圧倒的な存在感は霧散していた。

「さて、無事かい?」

 気軽に話しかけてくる変な女。
 だけど、メラゾフィスは警戒を解かない。

「ああ。別に警戒しなくていいよ。そもそも警戒するだけ無駄だし」

 フワッと、鼻腔をくすぐる甘い香りがした。
 同時に、眠気が襲って来る。
 慌てて息を止める。
 この香り、眠りを誘発する魔法のものだ!

 私は状態異常耐性があるから一瞬耐えられたけど、メラゾフィスは耐えられずに路面に倒れる。
 息を止めても断続的に襲いかかってくる眠気。
 それに必死に抵抗するけど、体からどんどん力が抜けていく。

《熟練度が一定に達しました。スキル『状態異常耐性LV3』が『状態異常耐性LV4』になりました》

 スキルのレベルが上がり、少しだけ持ち直す。
 けど、それも僅かに抵抗できる時間を延ばしただけで、私の意識は徐々に暗くなっていった。




 次に目を覚ますと、私は森の中にいた。
 テントがあり、焚き火がしてある。

「お、起きたねー」

 目に飛び込んできたのはあの変な女だ。
 その横には若葉姫色が座っている。
 メラゾフィスの姿を探すと、私のすぐ隣に腰掛けていた。

「改めて自己紹介しておくよ。私は現魔王アリエル。以後よろしく」

 変な女が変なことを言い始めた。
 ああ、変だから変な女なのか。
 変な女だから変なのか、変だから変な女なのか。

「あはははは!白ちゃん見て見て。すんごい目回してる」

 いや、そいつ目つぶってるし。
 頷いてるけど、見えてるの?

「どうかな、メラゾフィス君。私の話、少しは信用する気になった?」
「にわかには信じられません」
「じゃあ、手っ取り早く本人に聞いてみようじゃん」

 変な女がこっちを見つめる。

『ハロー?』

 突如、頭の中で声がした。
 神の声と似たような感じだけど、微妙に違う。

『これね、念話ってスキルなの。今私とこの場にいる全員を念話で繋げてるから、思ったことが相手に伝わるよ』

 電話の脳内バージョンみたいなもんかしら?

『では、お嬢ちゃんに質問。あなたは転生者ですか?マルかバツで答えなさい』

 そして、私にされた質問は予想していないものだった。
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