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蜘蛛ですが、なにか? 作者:馬場翁
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血2 やり直し

 転生した。
 生まれ変わった。
 最初は混乱してその事実がわからなかったけれど、数日してその現実を受け止めた。

 最初は夢かと思った。
 すぐに眠くなるし、現実にしては意識がふわふわとしていて落ち着かない。
 だからこれは夢の中の出来事で、私は授業中に居眠りをしたままなのだと思った。
 けど、流石に数日感も続く夢があるわけがない。

 今の私は赤ん坊。
 寝て起きて食事をして、出して泣いてまた眠る。
 そんな生活。

 その合間に周りを観察して、私の今の状況を把握しようとした。
 まず、ここは日本じゃない。
 それは確実。
 しかも、地球ですらなさそう。
 周りに黒髪黒目がいないし、電化製品が全くない。
 中世ヨーロッパのような雰囲気だけど、今時アフリカなんかでも僻地でなければ電化製品があるような時代に、ヨーロッパの片田舎にしても文明の利器がないのはおかしい。

 異世界転生というやつかしら。
 死んだ人間が、前世の記憶をそのままに、異世界で生まれ変わる。
 まさか自分の身にそんな事が起こるなんて思ってもいなかったけど、現実として起こってしまったことを今更嘆いても仕方がない。
 起こった事を嘆くよりも、これからのことを考えたほうが建設的よね。

 それに、私は今の状況を歓迎していた。
 だって、生まれ変わったんだもの。
 前のあの姿から解放された、新しい人生。
 それが始まる。
 嬉しくて仕方がない。

 両親が美形なのもそれに拍車をかける。
 母親はポワポワした雰囲気のお嬢様っぽい感じ。
 父親はそんな母親とは正反対に、キリッとしていてできる男という雰囲気。
 どっちも個性的だけど、どっちも美形。
 そんな美形2人を両親に持っているのなら、私も美形に違いない。

 そして、どうやら両親はそれなりに地位の高い人物らしい。
 私のいる部屋はかなり広い。
 広さだけなら前世で住んでいた安アパートより断然広い。
 そして、従者が何人もいる。
 王様とかそこまでの人物ではないっぽいけど、貴族であることは間違いなさそう。

 前世で苦労した私に、神様がご褒美をくれたに違いない。
 これからの人生の事を考えると幸せで笑顔が自然と溢れる。
 それを見て世話役の侍女や母がつられて笑顔になる。
 私は幸せだった。

 赤ん坊の睡眠時間は長い。
 長いけど、起きてる時間ももちろんある。
 そして、赤ん坊だとすることがない。
 どういうわけか私は夜型らしく、起きている時間も夜の方が多かった。
 流石に前世高校生だった身で、夜泣きとかはあまりしたくない。
 生理的な欲求には素直にならざるを得ないけど、暇だからという理由だけで家族や従者をたたき起こすのは憚られた。

 私はそんな暇な時間を利用して、魔法の練習をした。
 この世界には魔法がある。
 従者に火の魔法を使える男がいて、その人がランプに火をつけているのを目撃していた。

 小学中学と、男子はマンガの真似事をしたりしていて、そのときはアホじゃないのかこいつらはって思ってたけど、あの時の男子たちの気持ちがちょっぴりわかった気がする。
 魔法があるのなら使ってみたい。
 私はその欲求を満たすべく、魔法の練習を始めた。

 と、言っても魔法の使い方なんかわからない。
 私は起きていられる短い時間の中で、うんうん唸りながら色々と試行錯誤してみた。
 その結果、魔力というものがなんとなくだけど分かるようになってきた。

《熟練度が一定に達しました。スキル『魔力感知LV1』を獲得しました》

 私が魔力の感触を掴んだのと、その声が聞こえてきたのはほぼ同時だった。
 懐かしい、というほどの時間は経ってないけど、この世界で初めて耳にする日本語。
 私はキョロキョロと周りを見回して、けど誰もいなくて。
 誰もいないのに聞こえてきた謎の声に薄気味悪いものを感じて、私はその日、なかなか寝付けなかった。

 その声の正体は、神様の声、らしい。
 この世界にはスキルなるものが存在し、それを獲得したりレベルがあがったりすると神の声が聞こえてくるそうだ。
 聞こえてくる会話を断片的につなげて、推理した結果、そのような情報を得られた。

 けど、神の声が日本語なのは違和感がある。
 聞こえてくるこの世界の会話は、日本語じゃない。
 英語でもない。
 この世界独自の言語なんでしょう。
 日本語は断片的にも全く聞こえてこないことから、神の声も私以外が聞く場合、普通にこちらの言語のはず。
 だとしたら、なぜ私だけ日本語で聞こえるのか。
 考えられるのは、この声の主が私をこちらの世界に転生させた神様だっていうこと。
 だったら日本語を話せても不思議じゃない。
 私は聞こえてくる神の声に、そっと心の中でありがとうとお礼を言った。

 そうして、私はゆっくりと成長していった。
 動けないのは不便だから、早めにハイハイの練習も始めた。
 割と直ぐにそれはできるようになったのだけど、あんまり早くに動き始めても不審がられるから、人前ではなるべく動かないようにした。

 言語も覚えた。
 まだまだ全部とは言い難いけど、ある程度の会話なら内容を理解できる。
 会話を盗み聞いて、この世界のことも少しずつ理解していく。
 女神教という宗教。
 文化や歴史。
 この家の立ち位置。
 それらを少しずつ学んでいく。
 日本とは考え方も常識も違う。
 その違いに戸惑いを覚えながらも、なんとか自分の中ですりあわせていく。

 そして、穏やかな時間の中、私は赤ん坊としての生を謳歌していた。
 そんな時、事件は起きた。
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